2018年10月9日火曜日

マーケットレビュー(2018年9月)

20188月にアップルの時価総額が、史上初めて1兆ドル(約110兆円)を超えましたが、先月はアップルに続き、アマゾンの時価総額も1兆ドルを超えてきました。

このように今年も米国株式市場の好調ぶりが伝わってきますが、実は米国の代表的な株価指数S&P500の年初来上昇率の寄与度を分析すると、このアップルとアマゾン、そしてアルファベット(グーグル)、マイクロソフト、ネットフリックス、エヌビディアの6社で、なんと約49%を占めるそうです(残りの494社で約51%)。

世界的に様々な不安心理が蔓延する中、「少数の安定成長が期待できる会社」にお金が集まってくる構図が垣間見えます。

ところで投資信託にはインデックスファンドとアクティブファンドという2種類のファンドがありますが、インデックス(指数連動)型を選択すると、必然的に時価総額上位銘柄を組み入れが多くなります。現在、米国で(世界でも)インデックス運用の比率が高まる中、株価水準に関係なく、時価総額上位銘柄の株式が買われる状況が続いており、それがアップルやアマゾン等の時価総額上位銘柄の株価を、業績とは関係のない需給面から押し上げているとも言えるでしょう。

このようにインデックス型の比率が高まると、本来の企業の実力と適正株価の間に乖離が生じやすくなりますので、そこにアクティブファンドの超過収益(α)の機会が生まれやすくなってくることを、長期投資家は十分に留意しておくべきでしょう。

今は、相場全体(森)を見るより、個別銘柄(木)を見ることが重要な局面であると、私は考えています。時価総額上位銘柄以外の優良企業が割安に放置されている可能性が大だと感じるからです。



【マーケットコメント】
さて今月も、先月の実体経済および金融市場で起きた出来事を振り返り、個人的な見解等を述べてみます。

まず実体経済面、米中貿易戦争の激化で騒がしい国際情勢とは裏腹に、世界の景気は思った以上の堅調ぶり。特に米国の経済指標の強さは際立っており、46月実質GDPは前年同期比+4.2%、企業の業績(S&P500)も46月期で約20%増益、直近8月のIMS製造業景況感指数は+61.3となり、これは2004年以来の高水準の数字です(絶好調と言ってもいいでしょう)。

一方で中国は米国よりも貿易戦争の影響は大きいわけですが、それでも内需の強さ、テクノロジー産業の発展、また政府の景気下支えの姿勢が功を奏し、46月期のGDPは前年同期比+6.7%と堅調です。日本や欧州も思ったより悪くありません。特に日本企業の業績は今期減益見通しでしたが、このままいくと10%に迫る増益の可能性があるくらいの堅調さです。

そんな予想以上の景気の強さ、企業業績の堅調さを背景に、2018年8月の金融市場は、先行き不安が和らぎ、全体的に堅調な展開となりました。通貨危機による経済不安が台頭していた新興国でも、トルコ中央銀行がエルドアン大統領の強権に屈することなくインフレに対応して大幅な利上げを断行したことが功を奏し、落ち着きを取り戻しました。

ただ一方で原油価格と米ドルの上昇によって、インド経済に苦境が伝わっており、インド株式市場は大きく下落。このように、まだまだ真の意味で、マーケットが落ち着きを取り戻したわけではありません。今後も11月6日の米国中間選挙等のイベント、また欧州で台頭するポピュリズムの動き、英国のEU離脱問題も予断を許さず、先行きの警戒感が、株式等のリスク資産の価格の上昇を抑制しそうです。

これらの不安材料は一見好ましくないように思えるのですが、長期投資の視点から言えば、これらの不安材料が市場のバブル化を防ぎ、証券価格をあるべき水準に落ち着かせるアンカーの役を果たしているとも言えます。

不安が全くない人生が素晴らしいかと言えば、実はそうではないのが真実かと思いますが、それは金融市場においても同様であると私は思います。


【金融市場の動き】
(9月末の長期金利) 
先月は世界経済の堅調な指標を受けて、世界の長期金利は上昇しました。
米国FRB925日~26日のFOMCで0.25%の利上げを実施(年2%~2.25%)。
年内は12月にあと一度利上げが予想されております。
来年以降のイメージとして2019年に3回、2020年に1回、そこで打ち止め?
というコンセンサスが形成されておりますが、実際どうなるかは予断を許しません。
米ドル相場との関連からも、米国の利上げの行方は金融市場で最も注目するポイントの一つとなっています。

世界の長期金利
9
前月比
年初来
日本10年国債
0.13%
0.02%
0.08%
米国10年国債
3.07%
0.21%
0.67%
ドイツ10年国債
0.48%
0.14%
0.05%
英国10年国債
1.57%
0.13%
0.39%



(9月末の日本株式)
二つの側面から大きく上昇しました。一つは新興国投資の減退によって、消去法的に、日本市場にグローバル投資マネーが流れた。二つめに、思った以上に日本企業の今期業績が堅調で予想PERも約14倍くらいと割安になっていること。

国内株式
9
前月比
年初来
日経平均株価
24120.04
5.5%
6.0%
TOPIX
1817.25
4.7%
0.0%
ジャスダック平均
3831.49
0.2%
-3.0%
東証REIT指数
1777.18
1.4%
6.9%



(9月末の先進国株式)
米国株式市場は堅調だが史上最高値圏でもみ合い。欧州株式は前月に続き冴えない展開。英国のEU離脱、イタリアの政治(将来EU離脱も?)、トルコ経済の混乱等が
不安材料となっている。

海外先進国株式
9
前月比
年初来
NYダウ工業30種
26458.31
1.9%
7.0%
S&P500
2913.98
0.4%
9.0%
ナスダック
8046.35
-0.8%
16.6%
FTSE100
7510.2
1.0%
-2.3%
DAX
12246.73
-0.9%
-5.2%
香港ハンセン
27788.52
-0.4%
-7.1%



(9月末の新興国株式) 
トルコの利上げで、新興国市場は落ち着きを取り戻すが、
原油高、ドル高(ルピー安)でインド株式市場も久しぶりに大きな下落となった。

海外新興国株式
9
前月比
年初来
上海総合
2821.35
3.5%
-14.7%
インドSENSEX
36227.14
-6.3%
6.4%
ブラジルボベスパ
79342.42
3.5%
3.8%
ロシアRTS
1192.04
9.1%
3.3%



(9月末の商品市況) 
米国とイランの対立による、イラン産原油の全面禁輸等の可能性が意識され、
た一方で、シェールオイル等の増産ペースが鈍いことで原油価格が大幅上昇。
ドル高と原油高が同時に進行していることが、世界経済に及ぼす影響が懸念される。

商品
9
前月比
年初来
原油WTI先物(ドル)
73.25
4.9%
21.2%
NY金先物(ドル)
1191.5
-0.7%
-8.8%
CRB指数(ドル)
195.16
1.1%
0.7%


9月末の為替市場)  黒字は円安、-赤字は円高
世界的な金融市場の緊張緩和で先月までのリスクオフの円高状態から、
全通貨に対して円安が進行。

為替
9
前月比
年初来
米ドル/
113.61
2.3%
0.8%
ユーロ/
131.90
2.3%
-2.5%
英ポンド/
148.07
2.8%
-2.7%
豪ドル/
82.13
2.8%
-6.6%
NZドル/
75.32
2.5%
-5.7%
カナダドル/
87.96
3.3%
-1.9%
スイスフラン/
115.77
1.0%
0.1%
南アランド/
8.04
6.4%
-12.1%


以上


2018年9月30日日曜日

経営者という面白い存在

私はファイナンシャルアドバイザーの仕事を通じ、色々な職種のお客様の資産運用管理のサポートをしておりますが、中でも個性的な面々が揃っているのが、自分で会社を起業し、成功している企業経営者の皆さんです。

勿論、会社に勤務するビジネスパーソンの中にも、すごく魅力的な方が沢山いらっしゃいますが、事業を成功させている創業者の個性は、やはりダントツの面白さがある気がします。

世の中的にも、様々な個性を持った企業経営者の動向は、多くの人に注目されていますが、特に米国の企業経営者は映画スターのようにさえ見えます。

最近ではテスラのイーロン・マスク氏が、米証券取引委員会(SEC)に提訴され苦境に陥っています。今後どうなるのか?この苦境を乗り切り、ハッピーエンドの映画のような結末を迎えるのか?それにしてもこの状況で、ゾゾタウンの社長はテスラ(スペースX)のロケットで本当に月に行けるのか?(笑)。

それは誰にもわかりませんが、以前からイーロン・マスクの言動、行動を見ていると一種の危うさを感じつつ、しかしその性格ゆえに、誰もやらない新しい事業に思いきって飛び込んでいけるのであろうと思ったりもします。

※このブログを書いている途中にイーロン・マスクがテスラの会長を退任し(CEOにはとどまる)、マスク氏個人とテスラがそれぞれ2000万ドル(約23億円)の制裁金を支払うことでSECと合意した。

彼は強烈なドリーマーで、タイトロープの上を歩むように生きている感じがします、個人的にはアップルの故スティーブ・ジョブスと似ているところがあるように思います。

一方でアマゾンのジェフ・ベゾス氏。彼も強烈な経営者ですが、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブスとは異なるタイプのように感じます。

私は、彼の自伝や関連の本を読んだこともなく、特に詳しいわけではないのですが、直感的に彼は地に足がついたタイプで、決してタイトロープの上でスリルを楽しんだりすることはない人だと思います。

最近、ジェフ・ベゾスのインタビューを見て、大変共感したことがあります。

彼は18時間の睡眠をとり、朝のコーヒーや新聞、家族との朝食を大切にし、朝の会議を10時に始め、ランチタイム前に重要な決定を行うとのこと(夕方は頭が疲れて駄目だと…)。1日に3つの質の高い意思決定ができれば、それで満足。アマゾン社長の自分より、父としての自分の方が大切だとも言っていました。

経営者の端くれの私ではありますが、個人としては、イーロン・マスクよりジェフ・ベゾスのような生き方(考え方)に共感を覚えます。

勿論、どちらがいいというわけでありませんが、経営者にも色々なタイプがいて、彼らの生き様自体が(特に創業者の場合)会社のコーポレート・アイデンティティーになっているのは間違いありません。

兎にも角にも、世界で、日本で、これから多くの会社が生まれ育ち、面白い経営者が誕生していくでしょう。そして誰もがいつかは引退(それは死かもしれませんが…)の時期を迎えます。

中国アリババの創業者ジャック・マー氏が先日、引退すると発表しました。御年55歳。彼はIT業界ではもう若くないと言いながらも、ライフワークと考えている教育事業を行うこと、そしておそらく人生を愉しむという点において、まだまだ若いと感じているようです。個人として「人生をより豊かに創造する」という挑戦は、まだまだ続いているのでしょう。

アリババのことを考えていると、アリババ創業時に投資(出資)をして、大きな財産をつくったソフトバンクの孫正義氏のことが頭に浮かんできます。彼は当初60歳で引退する準備をし、周囲に発表までしていましたが、その後、前言を撤回して、今まさに以前よりもスケールアップして事業を展開しています。今、世界で最も有名な日本の経営者が孫正義であることを否定する人はいないでしょう。

成功すればするほど引き際も難しくなると思いますが、企業経営者の人生は、本当に面白いです。ちょっと言い方は悪いですが、予測できない飽きることのないドラマのようです(笑)。

前述した世界的な大企業ではなくとも、世界には、そして日本にも、多くの個性的な企業経営者の皆さんが活躍しています。

そんな企業経営者の皆さんが波乱に満ちた人生を乗り切るため、私もファイナンシャルアドバイザーとして「資産運用管理を通じた長期的な財務基盤の強化」という点で、しっかり貢献してまいりたいと思っております。

今後ともよろしくお願いいたします!!

2018年9月27日木曜日

金融教育の重要性

201895日~7日、日本経済新聞で「イデコ100万人時代」という特集記事が掲載されており、興味深く読ませて頂きました。

【記事の内容について、要点を列挙すると下記のような感じです。】
個人型確定拠出年金(以下イデコ)の加入者が、近々100万人の大台に乗る見通し。

イデコの制度は18年前からあるが、2017年の制度改正で、公務員も含め全国民が加入できるようになり加入者が飛躍的に増大してきた。

国の制度を熟知する官僚(公務員)は、税優遇に敏感でイデコのけん引役となっている。

イデコは原則60歳まで引き出せないが、掛け金は全額所得控除となる。

公務員の場合イデコの年間拠出上限は14.4万円だが、税率30%と仮定すると年43200円の節税効果がある。

日本の公的年金の現役時代の所得代替率は2014年時点で実質63%だが、20年後には50%まで低下すると予測されている。

細る公的年金を補う老後の備えとして私的年金の重みが増している。

厚労省の調査では、日本の65歳以上の高齢者世帯の収入の66%を公的年金が占めている。

米国の高齢者の収入内訳では公的年金が40%弱で、その他労働所得が30%、職域・個人年金が20%等と収入源が分散されている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、現状のままでは2050年時点で85歳の世帯の1/2で金融資産が枯渇すると予測する。

米コンサルのマーサー社の国別年金制度(公的年金や私的年金)の総合評価において、世界の主要30カ国中、日本は29位(ちなみに30位はアルゼンチン)。

オーストラリアでは強制加入の私的年金(スーパーアニュエーション)制度がある。

日本のイデコの資産内訳を見ると、20173月時点で元本確保型の預貯金と保険が約65%を占め、投信などの投資商品は約35%にとどまる。

イデコの定期預金の金利は高くて0.05%。20万円の残高に対して利息は100円。一方でイデコでは国民年金基金連合会や信託銀行への手数料が最低でも年2004円かかる。

このままでは長期的な物価上昇に勝てず、イデコ全体の運用利回りが実質マイナスになる可能性が大。 

以上)

「さて皆さんは、このような状況の背景にある原因について、どう思われますか?」

私は日本で「本当の金融教育」が為されていないことが、最大の原因だと思います。

本当の金融教育とは、体系的なパーソナルファイナンスの観点から「いかに生きるのか?いかに働くか?いかにお金を遣うか?」等、自分自身の人生のあり方を深く考察することの中で、経済や金融というものの基本的な仕組みを知り、人生において金融市場を活用することの意義について、本質的な理解を得ることだと私は考えます。

それができていないから、イデコという制度をつくっても、この有様。

投資を「金融商品の選択」という側面からだけ捉えていては、いつまでたってもこの状況は解消されません。

真の金融教育の普及について、微力ですが弊社も頑張っていかなくてはと、この記事を読んで心を新たにした次第です。