2017年12月29日金曜日

今年もありがとうございました!

今年も色々とありましたが、最後に2017年を振り返り、個人的な出来事や思うことを書き留めておきたいと思います。


①長寿化について

2016年の終わりごろに、ライフシフト~100年時代の人生戦略~(リンダ・グラットン)を読んで、今まで漠然と80歳くらいまでを想定していた自分の人生を、100年にシフトしてみたところ、色々と物事に対する考え方が変化した気がします。

本当のところ自分がいつ死ぬかなんてわかりませんが、100年生きることをベースに思考していくと、結構ワクワクします。きっと自分は根が楽観的なのかもしれませんね(笑)。

そして、その流れで自分の仕事を考えると、資産運用(投資)も短期志向の投機(ギャンブル)ではなく、より長期の人生設計の中に組み込まれていくのは必然だと思いますので、皆さんの人生の豊かさに貢献する資産運用サポートをコンセプトに、引き続き頑張っていく所存です。

ところで今年一番うれしかった出来事として、生まれたばかりの0歳のかわいいお客様ができたことを挙げたいと思います。これはお父様の長期投資に対する深い理解があってのことですが、証券口座を開設し、毎年積立投資をすることになったのです。これから私の最年少のお客様の積立資産がどのように成長していくのかすごく楽しみです。当然、私自身が最後まで見届けることはできませんが、未来への投資の仕組みを創れたことを本当にうれしく思います。



②人口減少について

12/22に厚生労働省は2017年の人口動態統計の年間推計を発表しました。2017年に生まれた赤ちゃんは94.1万人でした。前年の2016年に初めて出生数が100万人を割り込み、97.7万人となったわけですが、そこからさらに3.6万人の減少です。ちなみに2017年の死亡数は戦後最多の134.4万人となり、人口は40万人も減少しました。

今後もこのトレンドは止まるどころか加速しそうです。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口2017」によると、2040年(22年後)の日本の人口は1億1092万人になるそうです。これは2015年比で1618万人減ということになります。

1618万人と言えば、現在の九州の人口(約1300万人)+四国の人口(約380万人)に匹敵する数です。22年後に九州と四国がなくなるくらいのインパクトがあるという認識が必要かと思います。しかも同期間(2015年→2040年)に、65歳以上の人口は3387万人→3921万人となり、534万人も増加します。

これらの問題が、社会・経済にどのような影響を与え、それがまた金融市場にどのようなかたちで映し出されていくのか、長期の視点で観察することで、適切な資産運用を実現していきたいと思います。



③AI・ロボットについて

前回のブログでも、2017年は大きな変わり目だというお話しをするなかで、AI・ロボットについてもとりあげました。AI・ロボットの実用化は、先ほど挙げた①長寿化と②人口減少と深くリンクしています。テクノロジーの発展だけでなく、そこに大きな需要があるからこそ、これらのテクノロジーを背景とした製品やサービスが実現化していくステージに入ってきたのです。

ところで、このAI・ロボットは人間を幸せにするかどうかという議論がありますね。囲碁や将棋やチェスなど、一定の決まったルールの中で行われるゲームに関しては一流のプロもAIに勝てなくなってきました。様々な業界でAIやロボットが人間の仕事を代替することが想定されている中、人間の我々は何が強みで何を為していくのか?真剣に考えなくてはなりません。



④個人的なことですが…

個人的なことで恐縮ですが、私は間もなく50歳になります。そしてこれも個人的な感覚ですが、昔は人生50年だったと勝手に解釈をしています(笑)。

「人間50年、下天のうちにくらぶれば、夢幻のごとくなり」(織田信長が好んだ能「敦盛」より)

「旅に病んで 夢は枯れ野を かけめぐる」 (松尾芭蕉が50歳で詠んだ辞世の句)

織田信長も松尾芭蕉も50歳で人生を終えました。しかし現在を生きる私たちは、体の健康とお金の健康を維持していけば、豊かな100年人生を実現する可能性が広がってくるかと思います。これは個人的にもそうですが、まさしく人類の挑戦だと思います。私もお客様と共に頑張ってまいります。

そして最後にもうひとつ、

「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 」(松尾芭蕉)

奥の細道の旅の中で、山形県の立石寺で詠んだ有名な句です。ふつう蝉の声はうるさいのですが、その蝉の声が、その背景にある自然や宇宙の閑さ(しずかさ)を鮮明にしたのだと言われます。

この句を果たしてAIやロボットは詠めるでしょうか?松尾芭蕉が探求の旅路の中で、人間としての様々な経験と研ぎ澄まされた感覚をもって詠んだ句だからこそ、時代を超えて人々を感動させるのだと思います。

そんなことを考えつつ、本日で2017年の仕事を締めたいと存じます。

皆さん、本年は本当にお世話になりました。良いお年をお迎えください。そして2018年も引き続きよろしくお願いいたします!!

2017年12月14日木曜日

時代の変わり目 2017

今年のクリスマス商戦で一番気になるのが、電車の吊り広告等でよく見かけるグーグルホーム。いわゆる「AI(人工知能)スピーカー」とか「スマートスピーカー」と呼ばれる商品です。競合としては、アマゾンのエコーやラインのクローバ・ウェイブが挙げられますが、個人的にはグーグルホームが目立っている気がします。

「OKグーグル、●●して!」とお願いしたら、何をどこまでやってくれるのか詳しく知りませんが、何だか昭和の親父が「おーい、お茶」と奥さんにお願いするのに似ています(笑)。これらの商品、昨年のクリスマスの頃は全く目にしなかったのですが、今年から急に続々と出てきました。

今後、本格的な人口減少・少子高齢化社会が到来し、専業主婦の比率が減り共働きが主流になる中、職場だけでなく家庭の人手不足もAIやロボットが代替していく。そんな近未来の始まりを予感させる出来事です。

最近もう一つ気になっているのがブロックチェーン(分散型台帳)です。専門分野ではないので細かい技術的なことはわかりませんが、金融機関を介さず、ユーザー 同士でシステムを管理しあう分散的な構造が、未来の金融サービスを大きく変えていく技術であるということは理解しています。特に金融決済、契約・証明(特に不動産取得等)等で破壊的イノベーションが起きそうです。

ブロックチェーン(分散型台帳)を活用した最初のイノベーションがビットコイン(仮想通貨)ですが、ビットコインの価格は今年10倍以上の値上がりを見せ、市場は完全に博打の場と化しています。しかも日経新聞の報道によると、世界のビットコイン取引に占める日本人の割合は40%(日本人が博打好きな民族なのか、それとも金融リテラシーが低いのか、理由は定かではありませんが…)。

この状況を見ると、以前の為替先物市場(FX市場)を思い出します。金融知識もない素人の主婦が大量にFX取引を行い、世界で「ミセス・ワタナベ」と揶揄されていた頃の光景(最終的には大損した…)を見ているようです。同様に、未来のどこかのタイミングでビットコインバブルが弾けるのは必然だと思いますが、その背景にあるブロックチェーンの技術は世の中を大きく変えていくでしょう。

私としては2017年を、AIスピーカー、ブロックチェーン等の世の中を変えていく技術が、製品やサービスとして本格的に出てきた元年として記憶しておきたいと思います。

資産運用においても、「金融市場の短期変動」や「中期的な景気循環」を超える、これらの技術革新や世の中の構造変化を理解しておくことが大切です。

とは言っても、それに乗せられてAIファンドやロボットファンドといったテーマ型ファンドに投資をすることにはご注意を!ビットコインを買うのと本質的に変わらない投資マインドになっている可能性もありますので。

2017年12月5日火曜日

マーケットレビュー(2017年11月)

当ブログ「長期投資の視点」では、毎月初めに、先月の社会・経済・金融で起きたことのレビューを行うことにしております。実はこれ、私が証券業界で仕事を始めた頃から、かれこれ25年くらい続けて習慣化してきたことでして、このようなフレームワークで考え続けることで、自分なりに社会や経済や金融といったものを俯瞰してみる眼を養っています。それを皆さんと共有できればと思っております。是非お試しください!

■2017年11月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済・金融)

1日 日銀は31日の金融決定会合で、大規模緩和の維持を決定。
1日 ユーロ圏の7-9月期GDPは年率+2.4%、雇用・消費堅調。
1日 米FOMCは現状維持、来月利上げ、新FRB理事長にパウエル氏。
1日 第4次安倍内閣発足。12年ぶりに全ての閣僚再任。
2日 英中央銀行は政策金利を10年ぶりに引き上げ(0.25%→0.5%)。
3日 米国の10月雇用数は26万1000人増加。予想+32万人は下回る。
3日 米国の非製造業景況感指数が60.1と高水準(2005年8月以来)。
5日 トランプ大統領が初来日。
7日 日経平均が1992年以来、25年10ヵ月ぶりに高値(22,666円)更新。
9日 日本の経常黒字が10年ぶりの高水準へ、訪日客で旅行黒字最高。
13日 みずほFGが人員・店舗数の削減を柱とする構造改革を発表。
15日 日本の7-9月期GDPは年率1.4%増、外需が牽引で7期連続プラス。
15日 日経平均が6日連続下落。海外ファンド決算で利益確定売り拡大。
16日 日本企業の18年3月期の純利益は17%増(25.6兆円)で過去最高。
16日 米下院は連邦法人税率を35%→20%の下げる法案を可決する。
19日 ドイツ3党連立協議が決裂。メルケル首相窮地に。
20日 日本の10月貿易黒字は前年同月比で+14%。中国向け輸出好調。
22日 政府は中小企業の事業継続を後押しする相続税優遇する方針を公表。
22日 政府は天皇陛下の退位を19年4月30日、新元号を翌5月1日と公表。
24日 英国で個人消費の減速が鮮明に。EU離脱、通貨安が重荷に。
24日 日本株式市場で中国関連株が軒並み下落。中国の金融引き締め懸念。
25日 コンビニ試練、客数伸びず。既存店は20カ月連続で客数減少。
26日 7-9月の世界の貿易量が前年比+5.1%と6年半ぶりの高い伸びを示す。
27日 中国が「影の銀行」と呼ばれる理財商品販売の規制強化に踏み切る。
27日 日本経済の7-9月の需給ギャップは+0.5%。3四半期連続プラス。
29日 世界の半導体市場、IOTで急拡大。2018年は16年比で3割増予測。
29日 北朝鮮が新型ICBMを発射。米国の首都ワシントンを射程圏内に。
29日 米ダウ平均は4日続伸も、ハイテク・ITは利益確定売りで総崩れ。



■2017年11月の金融市場の動き

【11月末の長期金利】

日本10年国債  0.04% 前月比-0.03%  年初来 -0.01%
米国10年国債  2.41% 前月比+0.03%   年初来 -0.03%
ドイツ10年国債 0.37% 前月比-0.01%  年初来 +0.18%
英国10年国債  1.33% 前月比 変わらず 年初来 +0.09%

世界的な好景気がインフレ率の上昇につながっていない現状を反映し、11月も世界主要国の長期金利は低位横ばいの動きが続く。12月に米国FRBが利上げを行うのが確実な情勢だが、新FRB議長のジェローム・パウエル氏もイエレン議長の緩やかな利上げ路線を継承すると見られ、金利の動きにも大きな影響を与えていない。



【11月末の先進国株式】

日本(TOPIX)  1792.08  前月比+1.5% 年初来+18.0%
米国(S&P500)  2647.58  前月比+2.8% 年初来+18.3%
(ナスダック) 6873.97  前月比+2.2% 年初来+27.7%
ドイツ(DAX)  13023.67  前月比-1.6% 年初来+13.4%
英国(FTSE100) 7326.67  前月比-2.2% 年初来+2.6%

11月の米国株式市場は堅調な経済および法人減税への期待からS&P500、ナスダック共に史上最高値を更新。日本も好調な企業業績(純利益で約17%増で過去最高の利益)を背景に25年ぶりの高値を奪回。欧州は全体的に堅調な経済指標を確認するも、ドイツにおいてメルケル首相の連立協議が不調に陥り、政治リスクの高まりから下落。



【11月末の新興国株式】

中国(上海総合)  3317.19   前月比-2.2% 年初来+6.9%
インド(SENSEX) 33149.35  前月比-0.2% 年初来+24.5%
ブラジル(ボベスパ)71970.99  前月比-3.1% 年初来+19.5%
ロシア(RTS)   1131.56   前月比+1.6% 年初来-1.8%

11月の新興国市場は先進国と比較して軟調な展開。5年に1度の全人代が終了した中国が、景気浮揚を中心とした経済政策から、一部において景気の過熱を抑える政策に転換する動きが見られ、その影響で株式市場は下落した。



【11月末の商品市況】

WTI原油先物(1バレル)57.40ドル 前月比+5.6% 年初来+6.9%
NY金先物(1オンス)  1273.20ドル 前月比+0.5% 年初来+10.7%

原油価格は大幅上昇。上昇の要因として、①イラクにおけるクルド自治政府の問題②サウジアラビアにおける内紛③OPECの減産継続による需給の引き締まりが挙げられる。金価格は中東、東アジアの地政学リスクの高まりもあり小幅上昇。



【11月末の為替市場】(+は円安 -は円高)米ドル安、ユーロ高が進展。

米ドル/円  112.54円  前月比-1.0% 年初来-3.7%
ユーロ/円  134.01円  前月比+1.2% 年初来+8.9%
英ポンド/円 152.35円  前月比+0.9% 年初来+5.7%
豪ドル/円  85.18円   前月比-2.1% 年初来+1.0%

11月の為替市場は、米国の金融政策において、今後の利上げがゆっくり慎重に行われることがFOMC議事録の内容等から意識され米ドルが小幅安となった。一方、利上げを行った英国、堅調な経済指標が確認された欧州通貨(ユーロ)が買われました。円に関しては、金融緩和継続の一方で貿易黒字および経常黒字が増加しており、なかなか方向感がつかみづらい状況。

以上。

2017年11月30日木曜日

金融業の未来

すでに皆さんもご存じのニュースだと思いますが、去る11月13日、みずほフィナンシャルグループはメガバンクとしては異例の人員と店舗の削減を柱とする「構造改革」を発表しました。(10年後に現在の人員7.9万人を6万人まで減らし、店舗も500から400に減らしていくといった内容)

みずほFGでここまで危機感が高まっている理由として、①日銀のマイナス金利政策や人口減少で収益環境が悪化している現状と②フィンテックの普及等で異業種からの新規参入が増加し、今後の競争がさらに激化するという点が挙げられています。

「厳しい現状とさらに厳しい未来」に備え、高コスト体質にメスを入れなければ生き残れないというのが、みずほFGに限らず現在の金融業界の共通認識だと言えるでしょう。

ところで、リーマンショック前の2007年の日経平均高値は18,138円ですが、10年後の2017年11月29日の終値は22,597円。ここにきてリーマン前の水準を上回り、25年ぶりの高値を奪回しています。

しかし金融業の株価は冴えません。前述のみずほFGはリーマン前の高値は一時1,000円を超えていましたが、現在は200円近辺をうろうろしている感じです。実に株価は1/5。銀行だけではありません。証券最大手の野村證券の株価もリーマン前に2,500円を超えていた時期がありましたが、現在は600円台に低迷しています。こちらの株価もざっくりいうと1/5。

一方で直近の10年の社会経済のトレンドをつかみ成長している日本企業の株価は大きく値上がりしています。その代表例としてキーエンスを挙げてみます。同社は主にセンサーの開発・販売で知る人ぞ知る優良企業ですが、昨今のIOTや世界的な省力化の流れに乗っただけでなく、独特の営業モデルを強みにしており、業績は右肩上がりです。株価はリーマンショック前に10,000円くらいでしたが、今年70,000円まで上昇しています。なんと10年で約7倍です。

このように平均値(日経平均)だけで漠然と見るとわかりませんが、過去10年、企業間格差・業種間格差は、とても大きく拡大しているのです。

「これからの10年はどうでしょうか?」

私は過去10年よりも今後の10年の方が、よりドラスティックに変わることを確信しています。リーマンショックから10年後の来年(2018年)、歴史的な視点で見ると私たちは新たな変曲点にいるのだと思います。これからの10年、一般的に人々が思う以上に、社会・経済が変わっていく気がします。

金融業の未来もまさしく大きく変わっているでしょう。みずほFGの10年後を見据えての構造改革。私もみずほFGで3年間働いていたので何となく内情はわかる気もしますし、頑張って欲しい気持ちもある一方、店舗や人員の削減が前面にでる「生き残るための構造改革」では、これからの金融の未来を切り開くことはできないのではと危惧します。

また最近、金融業の未来(イノベーション)が、フィンテックやAIといったテクノロジー中心に語られすぎていることも気になります。

例えば金融商品を買う行為が、電話からパソコンになり、さらにスマホになり、手数料が下がったとしても決して儲かるわけではありません。また何を買うかをAIやロボットに決めてもらっても確実に儲かることも当然ありません。平均的な人間よりはいいかもしれませんが…。

それが本当に人間を豊かにする金融業の未来なのか?本来は人間が為すべきところをAI・テクノロジーを活用することで、単に楽をしようとしているだけではないか?その線引きが間違っているではないか?不確実性を許容するからこそ、未来の成長があるということをAIやロボットはすべて解析できるのか?

そんなことを感じつつ、弊社が今後どのようにお客様に貢献していくべきか?改めてこれからの10年を、年末年始にじっくり考えてみたいと思います。

2017年11月22日水曜日

シェアする心

最近の社会経済トレンドの一つとして「シェアリング・エコノミー」が挙げられますが、一般的には個人が保有する遊休資産の貸出しを仲介するサービスとして捉えられています(貸主は遊休資産の活用によって収入が得られ、借主は所有することなく利用できることがメリット)。

車の相乗りサービスを実現したウーバー・テクノロジーや保有する住宅や物件を宿泊施設として仲介するエアビーアンドビーが、シェアリング・エコノミーの代表企業として有名です。これらのサービス、誰にでも思いつきそうなものでありますが、従来は安全性や効率性の問題から実現することはできませんでした。しかし近年、ビッグデータの処理能力の向上、スマートフォンなどのIT端末の進化、ソーシャルメディアの発展による個人情報の整理等、テクノロジーが飛躍的に進化したことで現実のものとなっています。

このように脚光を集めるシェアリング・エコノミーですが、私は以前から究極のシェアリング・エコノミーは株式市場だと思っておりました。

世界で最初の株式会社は、1602年のオランダの東インド会社であることは有名な話です。当時のヨーロッパでは希少価値が高い香辛料を求め、多くの商人が産地のインド(現在の東南アジアあたり)まで航海をしていました。しかし航海は莫大な富を生み出す反面、船員の雇用、船の建造費等のコストも高く、また航海の途中で遭難や略奪にあうリスクもありました。冒険の規模が大きくなるにつれ、徐々にとても一人で背負うことはできなくなっていきました。そこで航海の出資者を募り、リターン(収益)-リスク(危険)-コスト(費用)を、出資の単位に応じて分かち合おうということになったのです。

こうして1602年の東インド会社誕生以後、社会経済の発展を支える仕組みとして、多くの株式会社が生まれ、やがて株式が市場で取引されるようになり、株式市場を形成していきました。

「みなさん、いかがでしょうか?」

株式市場の歴史を振り返ると、本来、株式市場に投資をするということの意味は、将来に挑戦する会社が生み出す期待リターン(収益)と変動リスク(不確実性)を分かち合うということだと思いませんか?

大切なことはリターンもリスクも公平に分かち合うということ。おそらく自分だけリスクを回避してリターンを得ようなどいうのは小賢しい考えなのでしょう。長い航海を信じて待つことが大切。船が波で揺れるたびに一喜一憂するようでは、長期投資家としては失格なのだと思います。

株式は英語でストック(stock)ですが、これは利益を貯蔵する機能を有する意味合いが強いのですが、一方で株式はシェア(share)とも呼ばれます(主に英国で)。こちらは東インド会社のリターンとリスクを分かち合うイメージです。個人的にはこのシェアという言葉が好きです(もちろん株式の価値の貯蔵機能も最重要なところではあるのですが…)。

何はともあれ「シェアをする心を持つこと」が大切。

長期投資の成功に限らず、それこそが人生に真の豊かさをもたらす秘訣なのではないかと思う、今日この頃であります。

2017年11月15日水曜日

信じる者は?

ここ数日、調整局面に入っている日経平均株価ですが、11月に入り25年ぶりに23,000円台を回復するなど堅調な動きを見せています。

ところで個人的なことですが、25年前(平成4年)の私と言えば、野村證券で3年目を迎え、バブル崩壊後の相場の中でも、仕事にも慣れて充実した日々を送っていた記憶があります。普段、昔を思い出すことはあまりしないのですが「25年ぶり」というキーワードに反応した次第です(笑)。

もう少し記憶を掘り下げてみると、個人的に一番苦しかったのは、やはり社会人1年目~2年目の平成2年、3年の頃だったように思います。バブル崩壊が始まり、日経平均株価が日々強烈に下がっていく中で、業務経験に乏しい新人証券マンの私は、販売する株式や投資信託が短期間に値下がりし、お客様に損失を与えてしまうことがとても怖かったのです。当然そうすると営業にも今一つ身が入らなく、結構サボっていました。(営業すればするほど、世の中に損失を与えるなら、何もしない方がマシなのではと思い…)

そんな私に対し、上司、先輩方々は厳しくも適切な指導をしてくれました。当時の私の周りには、どちらかと言えば野村證券の現場では少数派の、根性論ではなく合理的な知性を持った方が多く、そこには株式市場や金融市場の状況がどうであれ「どうすればお客様を儲けさせることができるか?」を真剣に考える土壌がありました。

ある日、仕事に自信がなく、不安な日々を過ごしていた私に上司が言いました。

「中浜、知っているか?信じる者と書いて儲かると読むんだぞ。」

「お前はいいものを持っているのだから、もっと自信を持て!」

「自分を信じることができない者に、お客様を儲けさせることはできないぞ!!」

信じる者=儲かる。「なるほどー」と思いました。普段はつまらないおやじギャグばかり言う上司でしたが、この言葉には感心(尊敬?)しました(笑)。

それから25年経過し、以前より信じられるものが少なくなった世の中になった気がします。何でもかんでも信じていたら、すぐに詐欺に引っかかってしまう時代ですから致し方ないのかもしれませんが…。それでも、おそらく時代は変わっても、「信じる者=儲かる」だと思います。

事業にしても、仕事にしても、家庭生活にしても、もし「不信」をベースにしたとしたら、そこに豊かさや成功などのポジティブなイメージは湧いてきません。実際、成功している幸せそうな人は自分のことや他人のこと、世の中のことを、心のどこかで信じているように感じます。

それは資産運用においても例外ではありません。世の中のすべてを不信の目で見ているような人は、かなり高い確率で長期的には儲かりません。

参考までに私が資産運用をするうえで信じるもの、それは下記のような原理原則です。

・長期的に見ると、金融市場は実体経済(GDP)の成長と共に成長する。

・長期的に見ると、金融市場の中でも株式市場の成長が最も高い。

・金融市場は常に上下に変動するものだ(特に株式市場の変動は大きい)。

・個人が投資で着目すべきは、短期の価格変動でなく長期の資産成長である。

・将来を正確に見通すことはできないので、分散投資を心掛ける。

・投資成果は「投資金額」「投資収益率」「投資年数」で決まる。

・投資収益率を決めるのは、「資産配分」「銘柄選択」「タイミング」。

・自分にあった「資産配分」を決めることが重要(人的資産と金融資産)。

・「銘柄選択」は優れた投資信託を活用するのがいい(信じて託せる運用会社)。

・「タイミングリスク」を低減させるため最大限の時間を使うべき(長期継続)。

このような歴史的に見ても、また経済学の理論上も、おそらく正しいと思われる原理原則を信じ、正しく実践する人こそが、人生の豊かさを実現していく者(=儲かる)になるのだと、私は信じています。

2017年11月8日水曜日

2つの寿命

最近「資産寿命」という言葉を知りました。

人生100年時代には「健康寿命」と「資産寿命」が重要とのこと。

当たり前と言えば当たり前ですが、上手い言い方だなあーと思います。

せっかく長生きしても健康でなければつまらないし、退職後の時間が有り余っていても、資産(お金)が尽きては愉しむこともできないばかりか、生活にさえ困窮してしまいます。

本格的な少子高齢化社会を迎え、公的年金だけに老後資金を頼れない時代、

「健康寿命と資産寿命」、この2つのキーワードについて、これからを生きる私達は真剣に考えなくてはなりません。(どうしても先の長い話は、緊急性がなく後回しになってしまうのですが…)

またこの2つの寿命は、実は別物ではなくリンクしていると考えられます。

資産寿命が長い安定した家計の人は、健康状態も良好である確率が高いように感じます。逆に資産寿命が今にも尽きそうな人は、心身共に疲弊し、健康状態も悪くなる傾向にあります。

「よって資産寿命を長くする取り組み(長期投資)は、健康寿命を長くすることにも繋がる。」

そんな仮説を立てながら、お客様の資産運用をサポートしていければ、ファイナンシャル・アドバイザーとして、こんなに有意義で愉しいことはありません。私たちの仕事が、もしかしたらお客様の健康寿命を延ばすことに貢献できるかもしれないのですから…。

バリューマネジメントは、お客様の人生を支える資産寿命の長期化を図るため、家計に適切な投資ポートフォリオを導入することを提唱しています。

この取組みで大切なことは、マーケットの長期的な成長を、長期的かつ継続的に獲得する仕組みをつくることであって、短期的なタイミングで証券を売買することではありません。

「タイミングより時間が大切」

今まで何度も申し上げてきた事ではありますが、日経平均株価が25年ぶりの高値を奪回したタイミングで、改めて皆さんにお伝えしたいと思った次第です。

2017年11月2日木曜日

マーケットレビュー(2017年10月)

2017年10月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に、「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。それがマーケットの上昇時も下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと私は思います。それでは下記情報をご確認頂き、自分としてどう捉えて、どう考えるか?

「是非お試しください!」



■2017年10月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)

2日、日銀短観10年ぶりの高水準、大企業製造業+22(6月調査から+5)。
2日、つみたてNISA(2018年から開始)の口座開設手続きがスタート。
3日、米ベインキャピタルが広告第3位アサツーディ・ケーへのTOBを実施。
5日、インド中銀、2017年度経済成長率の見通しを下方修正(年7.3%→6.7%)。
5日、家計の外貨預金が2017年6月末時点で6兆円を超えて、3年ぶりの高水準。
6日、2017年世界経済予測で10年ぶりに主要45カ国がそろってプラス成長に。
10日、内閣府9月景気ウォッチャー(街角景気)で国内景気の勢いを確認。
11日、香港政府は中小法人の税率を8.25%に半減(課税所得約2800万円以下)。
11日、FRBは9月FOMC議事録を公表。年内の追加利上げを見込む(12月予想)。
13日、商工中金が不正融資で500人規模(営業職の1/3)の処分検討。
14日、米ハリケーンの影響で三大損保に2000億円超の支払いが発生。
16日、国税庁、ビットコインの運用で得た所得を「雑所得」として取り扱う。
18日、世界株式市場でESG投資の残高が約23兆ドルに(全体の1/3)。
18日、NYダウが23,000ドルを突破。S&P500、ナスダックも史上最高値更新。
19日、中国の7-9月GDPは+6.8%。市場予測の+6.7%を若干上回る。
19日、日産は不祥事(無資格者の検査)で、国内向けの出荷停止。
22日、日本企業や個人が持つ海外資産が初めて1000兆円突破、過去5年で5割増。
22日、第48回衆議院選挙で与党が圧勝。安倍政権再始動。
23日、衆議院選挙で与党勝利、日経平均15日続伸(その間の上昇率は+6.6%)。
25日、中国では習近平総書記の2期目(2022年まで)がスタート。
26日、ソニーの今上半期(4-9月)決算は前年比3倍の約3000億円に。
26日、3月決算上場企業1587社の上半期は営業利益8.2%増。
26日、欧州中銀(ECB)は来年1月から量的緩和縮小を開始することを決定。
27日、米ITビッグ5(アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック)好決算で株価大幅高。
28日、米国の7-9月GDP(速報値)は+3.0%成長、消費・投資が堅調。
30日、三菱UFJ信託銀行は、来年4月から新規住宅ローンの新規融資から撤退。
31日、日銀は短期金利をー0.1%、長期金利をゼロ程度に誘導する現状維持を決定。



■2017年10月の金融市場の動き

【10月末の長期金利】

金利に関しては、表面上の動きは乏しいものの、世界景気拡大と今ひとつ物価が上がってこないという、過去の経験則から言えば相反する事象の狭間で金利上昇のエネルギーを溜めているように見えます。しかし金利が上昇したら国債を買いたいという機関投資家の潜在的ニーズ、そしてテクノロジーの発展によるデフレバイアス等が金利の見えない壁になっているようです。

日本10年国債  0.07% 前月比+0.01%  年初来 +0.03%
米国10年国債  2.38% 前月比+0.05%   年初来 -0.06%
ドイツ10年国債 0.37% 前月比-0.10%  年初来 +0.18%
英国10年国債  1.33% 前月比-0.02%   年初来 +0.09%



【10月末の先進国株式】

9月と打って変わって、10月の世界株式市場は堅調なマクロ経済、ミクロ経済(企業業績)を背景に、強気に転じました。株価上昇は実体経済の強さや企業業績の伸びを背景にしていますので、多少の割高感はあるものの、バブルのような過熱感や高揚感はありません。また足元、北朝鮮情勢が静かになっていることも含め、アジアの地政学リスクへの警戒感が薄れたのも相場上昇を後押ししました。

日本(TOPIX)  1765.96  前月比+5.4% 年初来+16.3%
米国(S&P500)  2575.26   前月比+2.2% 年初来+15.0%
(ナスダック) 6727.67  前月比+3.6% 年初来+25.0%
ドイツ(DAX)  13229.57  前月比+3.1% 年初来+15.2%
英国(FTSE100) 7493.08  前月比+1.6% 年初来+4.9%



【10月末の新興国株式】

10月はインド株式市場が大幅高となりました。今年度GDP成長率を下方修正したにも関わらず、逆に今後の景気対策への期待が高まったのです。このようにマーケットとは、市場参加者が「事実をどう解釈するか」で方向性が決まってきます(特に短期的には)。逆にどんなにいいニュースでも、それを悪く解釈してしまうと市場は下落してしまいます。しかしそんな時こそチャンスであることを常に忘れてはなりません。

中国(上海総合)  3393.34  前月比+1.3% 年初来+9.3%
インド(SENSEX) 33213.13 前月比+6.2% 年初来+24.7%
ブラジル(ボベスパ) 74308.49 前月比0% 年初来+23.4%
ロシア(RTS)   1113.41  前月比―2.1% 年初来-3.4%



【10月末の商品市況】

米国のハリケーン被害の復興需要、OPECのさらなる減産、イラクにおけるクルド問題等の中東の地政学リスクの高まりから、原油価格は大幅高。昨年末と比べ、ずっと低位に推移していた原油価格が、ここにきて昨年末の水準を超えてきました。円ドルレートはまだ昨年より若干円高ですが、年末に向けて日本のガソリン価格も少し高くなりそうです。

WTI原油先物(1バレル)54.38ドル 前月比+5.2% 年初来+1.2%
NY金先物(1オンス) 1267.0ドル 前月比-1.1% 年初来+10.2%



【10月末の為替市場】(+は円安 -は円高)米ドル安、ユーロ高が進展。

為替市場では、10月久しぶりに米ドル高(対ユーロ、対円等)になりました。今後はおそらく米国が12月に利上げをすると予測されますし、欧州も金融緩和縮小が来年1月から実際に始まります。一方日本では衆議院選挙で与党が圧勝し、安倍政権、日銀も黒田総裁の体制が継続する関係で、それに伴い金融緩和の継続が予想されます。年末にかけてもう少し円安が進む可能性が高まっている気がします。但し北朝鮮情勢の悪化等が表面化した場合には105円くらいの円高の可能性も当然あり、結論、短期的な為替の動きはわからん(笑)ということです。

米ドル/円  113.63円  前月比+1.0% 年初来-2.8%
ユーロ/円  132.38円  前月比―0.5% 年初来+7.6%
英ポンド/円 150.99円  前月比+0.2% 年初来+4.8%
豪ドル/円  87.02円   前月比-1.4% 年初来+3.2%



以上。

2017年10月24日火曜日

資産運用と心理学

個人的に毎年10月の楽しみといえば、野球のポストシーズンです。

メジャーリーグのワールドシリーズ、特に今年はロサンゼルス・ドジャースのダルビッシュ有、前田健太の両投手の活躍に期待したいです。また横浜在住で広島カープファンの私としては、セ・リーグのクライマックスシリーズ「広島カープVS横浜DeNAベイスターズ」を今まさに、複雑な想いで観ております(笑)。

もう一つ、毎年10月に注目する出来事があります。それはノーベル賞の発表。

昨年はノーベル文学賞をシンガー・ソングライターのボブ・ディラン氏が受賞して話題になりました。今年も日本の季節の恒例行事ともいえる「今回こそ村上春樹」いう期待も高まる中、ノーベル文学賞は日系英国人のカズオ・イシグロ氏ということで、こちらも大変話題になっているところです。また今年は、化学や物理学等の理系分野で、日本人の受賞がなかったのは残念でした。

そして何といっても、私の専門でもあるところで、注目すべきは経済分野です。
今年のノーベル経済学賞は「行動経済学」で有名な米シカゴ大学のリチャード・セイラー氏に決まりました。合理的な経済学の意思決定の分析に、心理学(人間の感情等)に基づく現実的な仮定を組み込んだ功績を讃えられての受賞です。

彼のアプローチは、1990年ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ氏の現代ポートフォリオ理論(市場は効率的であることを前提に、統計的かつ合理的に経済活動や資産運用を捉えた理論)とは一見正反対のように見えるのですが、この対照的な2人が、シカゴ大学で学び研究をしていたこと、そして同じくノーベル経済学賞を受賞したことが、私にはとても面白く感じられます。

ところで「資産運用はサイエンス(科学)でもあり、アート(芸術)でもある」という言葉がありまして、実は一見正反対に見えるこのお二人の理論は、どちらが正しい、正しくないという話ではなく、実際の資産運用の実務においては、両方の側面が必要不可欠だと感じます。

弊社でもお客様の資産運用を適切なかたちでサポートしていくうえで、合理的なポートフォリオ運用のフレームワークを提供すると同時に、お客様の価値観、性格、感情、リスク耐性のような漠然とした合理的でないものを、どのようにポートフォリオに反映させるか考えます。特に資産運用に付随する価格変動に影響を受ける感情が、誤った投資行動を引き起こさないよう、とても注意を払っています。

また長年にわたる資産運用実務の中で、資産運用で成功するための「人格や性格や心構え」のようなものが、確かに存在すると感じます。

それが何かを理論的に確認するうえでもセーラー教授の行動経済学を代表とする「資産運用と心理学の関係性」は大変興味深い分野です。

資産運用においては、市場の価格変動(上であっても、下であっても)によって、心が揺さぶられ、心配になった時に、誤った意思決定をする可能性が一番高くなります。

そんな時にこそバリューマネジメントのファイナンシャル・アドバイザーにご相談ください!適切なアドバイスで正しい意思決定ができるよう、しっかりサポートさせて頂きます。

2017年10月12日木曜日

「吉田カバン」と「フェラーリ」

先日、日経新聞のコラムで、吉田カバンの吉田社長が「商品を値下げしない誇りを」というお話をされていました。(街を歩いていると、吉田カバンのPORTERシリーズの鞄を愛用しているビジネスマンも結構多いように感じます。)

【以下、吉田社長のお話の抜粋・要約】

「私たちは原則として値下げをしないという信念があり、お客様やものづくりの現場を大切にしたいと思っている。」

「なぜ値下げをしないのか?それは定価で買ってくださったお客様に大変申し訳ないからだ。自分が定価で購入したものが値下げされているのを見れば、悔しい思いに駆られるだろう。」

「値下げをすることは、長年我々が大切に育ててきたブランドイメージを崩すことになる。さらに大事なのは、縫製職人さん、部材屋さん等、商品に関わってくれた全ての心ある人々の結晶が商品であるということだ。このような大切なものを簡単に値下げで処分することはできない。」

また他日の日経新聞では、超高級車で有名な「フェラーリ」の記事が掲載されていました。

世界的にAI(人工知能)による自動運転やEV(電気自動車)の普及が本格化してきそうな状況下、既存の自動車会社の株価は低迷し、逆に新興勢力(グーグルなどのIT企業や電気自動車のテスラ)の株価は大きく上昇していますが、その中で異彩を放っているのがフェラーリ。同社は2015年10月に米国株式市場に上場していますが、2017年の株価上昇率は+97%(8月末時点)にものぼります。(ちなみにEV大手テスラは+67%、フォードモーターは-10%)

フェラーリの車づくりは職人的で、自動車業界で最もITなどの技術革新から遠い存在と言われています。そして年間1万台未満しか生産・販売しないことで、強固なブランド力を保ち、株式市場もそれを高く評価しています。

様々な工夫や努力で製品やサービスの価格を下げ、幅広い消費者の生活を楽にすることは大変意義がある一方、長期的に、値下げ競争は商品やサービスの質を劣化させ、企業を弱体化させ、結果として消費者の生活を脅威にさらすことになりかねません。

「いい製品をつくり、いいサービスを提供して、お客様に満足して頂き、適正な価格を快く支払って頂ける。」それが企業の理想の姿だと私は思います。吉田カバンとフェラーリは、業種は違えど、その理想の姿を体現しているように思います。

話は変わりますが、資産運用業界はどうでしょうか?

来年から制度が始まる「積立NISA(年間40万円まで20年間非課税)」では、金融庁主導で商品(投資信託)のラインナップに厳しい制限が入りました。

積立NISAのコスト面の条件は販売手数料がゼロ、保有時にかかる信託報酬は国内資産で運用するインデックス投信の場合、0.5%以下、アクティブ投信で1%以下です。実際、大多数の運用各社は金融庁のご威光に逆らうことなく、信託報酬(運用報酬)を急激に下げ、国内インデックスファンドでは平均で0.27%くらいになっているようです。

過去の日本の、投資信託の短期売買等で投資家から過剰かつ不当な手数料を搾取したいたと言われても仕方がない歴史を考えると、投資家を守る金融庁の姿勢もわからなくはありませんが、それが本当に正しい姿かと言えば疑問です。

実際、数少ない気骨ある運用会社は、この手数料値下げ競争に意義を唱え警鐘を鳴らしています。私としては、これらの運用会社こそが、運用業界の吉田カバンであり、フェラーリなのだと感じますし、信頼できる運用会社だと思います。

またコスト競争の背景には、日本は米国に比べて資産運用コストが高いという議論があります。しかしそれは一面において正しいのですが、ある面では正しくありません。

なぜなら米国の投資家の多くは、運用商品に係る手数料等に他に、ファイナンシャルアドバイザーに預かり資産の1~2%程度を別途毎年支払っているからです(ネットで自分でやる場合は別)。

よって日米の金融商品単体のコストだけを比べるのはナンセンスです。一方で、残念ですが日本においては、アドバイスに係る報酬(アドバイザリーフィー)も含む資産運用コストが、金融商品の中に内包されていて解りづらいのも事実です。

弊社は、以前から金融商品仲介業の仕組みの説明を通じて、皆様に支払って頂いている資産運用のコストとその対価としてのサービスを丁寧にお話しさせていただいております。

今後も弊社は、「安かろう・悪かろうの罠」に陥ることなく、吉田カバンやフェラーリのような価値観を持って、パーソナル資産運用サービスを進化させていきたいと思います。それによって、皆様の資産運用コストが納得できるものになるよう努力を継続してまいります。

…ということで、今後ともよろしくお願いいたします(笑)。

2017年10月4日水曜日

マーケットレビュー(2017年9月)

2017年9月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に、「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。それがマーケット下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと私は思います。

先月前半は北朝鮮問題や米国のハリケーンの影響からリスクオフの円高が進捗。一時107円台まで突入し株式市場も低調に推移しましたが、後半に米国FRBが量的緩和の縮小、またトランプ大統領と共和党が30年ぶりの大型減税策を発表したことで、円安ドル高に、また株式市場も先進国を中心に上昇しました。

個人的には、英国のダイソンが電気自動車に参入することに大きなインパクトを受けました。フランス、英国、中国がガソリン車の廃止を決定した中、今まさに世界は産業構造の大きな変曲点にいるのだなあーという実感があります。国際情勢や政治が不安な状況下、世界的に企業業績は堅調です。その背景には単なる景気循環ではなく、経済の仕組み・モデル・ルール等が大きく変わる中で、さらなる成長の芽があちらこちらに生まれてきている事実がある気がします。私たちはその成長の芽を、優良ファンドと通じて皆さんのポートフォリオの中にしっかり届けていかなければならないと思っております。

さて、それでは下記情報をご確認頂き、自分としてどう捉えて、どう考えるか?
「今月も是非お試しください!」

■2017年9月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)
1日、ユーロ圏の8月消費者物価指数(コア指数)は前年同月比+1.2%。
1日、米国物価は5カ月連続鈍化。7月は前年比+1.4%、目標+2%を下回る。
1日、8月の米雇用統計15.6万人増(市場予測18万人を下回る)。
3日、世界の上場企業の税負担率が10年前の27.8%から24.6%に低下。
3日、アジア各国の政府・中央銀行の外貨準備高(7月末)が過去最高水準。
3日、北朝鮮がICBM用水爆実験を断行。爆発規模は過去最大。
6日、米大統領は不法移民在留許可制度を撤廃。経済損失は4063億㌦と試算。
6日、米債務上限上げについて合意(12月まで)。債務不履行ひとまず回避。
7日、ECB(欧州中銀)は、来年からの金融緩和縮小を10月に決める考えを発表。
8日、円高加速107円台に突入。米ハリケーン「イルマ」北朝鮮情勢でドル売り。
11日、財務省は、日本郵政株式の月内追加売却を発表。株価は公開後低迷。
11日、国連安保理は北朝鮮への追加制裁を採択。
12日、中国がガソリン車禁止に関して、具体的な導入時期の検討に入った。
12日、米アップル社は、アイフォーンの新機種Xを発表。
13日、7-9月の大企業景況感指数は2期ぶりにプラスに転じる。景気堅調。
19日、日経平均2年ぶりに高値更新。衆議院解散、米国緩和縮小を材料に円安。
19日、三菱UFJは国内の事務作業の自動化で9500人分の労働量削減と発表。
19日、米トイザラスは破産申請。アマゾンにシェアを奪われる。
20日、任天堂9年ぶりに時価総額6兆円を回復。業績不振から回復。
20日、米FRBが「量的緩和の縮小」を10月から開始すると発表。
21日、日銀は金融決定会合で「金融緩和の維持」を決定。
21日、外国為替市場で英国ポンドが利上げ観測で1年3ヶ月ぶりの高値水準へ。
24日、独総選挙でメルケル与党勝利(メルケル首相4選)するも、議席大幅減。
25日、安倍総理が28日に衆議院解散を表明、10月22日投票日。
26日、英家電大手ダイソンが2020年までに電気自動車に参入すると発表。
27日、米大統領と共和党は30年ぶりの大型減税案を発表、今後議会で審議。
28日、東芝は、日米韓連合と半導体部門(東芝メモリ)の売却契約を締結。
30日、日本製造業の雇用者数が7年ぶりに1000万人超に(国内回帰)。
30日、中国のPMI(製造業景気指数)が5年5ヶ月ぶりの高水準に。

■2017年9月の金融市場の動き
【9月末の長期金利】
欧米の金融緩和縮小、英国はインフレから利上げ予想で長期金利は上昇。

日本10年国債  0.06% 前月比+0.05%  年初来 +0.02%
米国10年国債  2.33% 前月比+0.22%  年初来 -0.11%
ドイツ10年国債 0.47% 前月比+0.10%  年初来 +0.28%
英国10年国債  1.35% 前月比+0.32%   年初来 +0.11%

【9月末の先進国株式】
日欧企業業績が堅調で株価上昇、年初来水準で米国をキャッチアップする状況。

日本(TOPIX)  1674.75  前月比+3.5% 年初来+10.3%
米国(S&P500)  2519.36   前月比+1.9% 年初来+12.5%
(ナスダック) 6428.66  前月比+1.0% 年初来+20.7%
ドイツ(DAX)  12828.86  前月比+6.4% 年初来+11.7%
英国(FTSE100) 7372.76  前月比ー0.8% 年初来+3.2%

【9月末の新興国株式】
米国の量的緩和縮小を警戒して新興国市場の上昇は全般的に一服。ブラジルはインフレは利下げ期待から大幅続伸。

中国(上海総合)  3348.94  前月比ー0.4% 年初来+7.9%
インド(SENSEX) 31283.94 前月比-1.4% 年初来+17.5%
ブラジル(ボベスパ) 74293.51 前月比+4.9% 年初来+23.4%
ロシア(RTS)    1136.75  前月比+3.7% 年初来-1.4%

【9月末の商品市況】
金はリスクオフ懸念の後退で下落、原油価格は相変わらず変動が大きいが、45ドル~55ドルのレンジを行ったり来たりしている状況、強弱材料が綱引き。

WTI原油先物(1バレル)51.67ドル 前月比+9.4% 年初来-3.8%
NY金先物(1オンス) 1281.5ドル 前月比ー2.6% 年初来+11.4%

【9月末の為替市場】(+は円安 -は円高)
金融政策の違いから円安進捗。特に英国ポンドが大きく上昇。

米ドル/円  112.51円  前月比+2.3% 年初来-3.7%
ユーロ/円  132.99円  前月比+1.5% 年初来+8.1%
英ポンド/円 150.76円  前月比+6.0% 年初来+4.6%
豪ドル/円  88.24円   前月比+1.0% 年初来+4.6%

以上。

2017年9月22日金曜日

イノベーション

半年前に日本証券アナリスト協会が開催した国際セミナー「資産運用ビジネスの新しい動きとそれに向けた戦略」のパネルディスカッションの中で、農林中金バリューインベストメントCIOの奥野一成氏が「イノベーション」について面白いことをおっしゃっていたので、下記にご紹介いたします。

『日本ではイノベーションは技術革新と訳してしまうが、米国では小さな改善でもイノベーションと呼んでいる。例えば、米国のクロロックス社は、液体状の漂白剤を噴霧状にしたことをイノベーションと称していた。これも社会や顧客の問題を解決した一つの事例といえよう。究極の素材を開発することではなく、顧客の問題解決をすることこそイノベーションであり、顧客とのバリューポイントを大事にしているかという点が重要なことだ。』

私も奥野氏の考え方に賛同します。

そして、ここが日本企業の弱いところだなあーともつくづく思います。
(東芝やシャープのような技術力を持っていてもこの有様です。)

また米国(米国人)がいいのは、やはりこのイノベーションに関する感覚。ちょっとした改善をイノベーションと堂々と言えるところ…ですかね(笑)。

そこで改めて「弊社(バリューマネジメント)にとってイノベーションって何?」と考えてみました。

私的には弊社は資産運用の焦点を、完全に「個人バランスシートの価値向上および保全」に絞りこみ、それを「長期的かつ丁寧にサポートすることにコミットしている」点だと思います。それは結果として、お客様の「信頼すべき資産運用の相談相手(パートナー)」になるということでもあります。

「信頼すべき資産運用の相談相手(パートナー)」

世界有数の金融資産大国日本において、これほど不足しているものはあるでしょうか?「需要と供給のミスマッチが甚だしいにもほどがある」と言っても言い過ぎではないかと思います。

今まで日本には本当に資産運用を信頼して相談できる先がなかった。(専門性の欠如であったり、利益相反であったり、過剰な手数料商売であったり、理由は諸々)

今後も人生100年時代などと言われる一方、年金だけでは引退後の生活は成り立たない、よって長期的な視点で資産運用管理をしなければならないのに、日常の仕事は忙しく、専門的な資産運用の勉強を膨大な時間をかけてやることが効率的か疑問であるし、と言って簡単に自分の大切な資産を既存の証券会社や銀行に相談をしていいものだろうか?

そんな問題の解決を図るのが、弊社のイノベーション。
個々人の資産価値向上のみを目的とした資産運用会社=パーソナル・アセットマネジメント・カンパニー。それが弊社のコンセプトです。

通常、今までの資産運用会社(例えば、野村アセットマネジメントや大和投信等)は、不特定多数の人のお金を集めて、何か儲かるものに投資をするというスタイルでここまできました。一般的に運用会社は個々のお客様の個別特性を考慮することはありません。預かったお金をルールに基づき増やすことだけが使命と言えますし、実はそれでOKです。

本来、お客様の個別特性を考慮すべき、金融機関は証券会社や銀行だと思いますが、完全にお客様サイドに立つことはビジネスモデル上、相当困難であることは、おそらく現場の方が一番分かっているような気がします。

バリューマネジメントはビジネスモデル上、お客様の長期的な資産価値向上にコミットメントすることだけに集中できるかたちになっているので、そこもイノベーションを起こすのに有利な点だと思っています。

まあとにかく、小さな改善でもイノベーションです。

あまり大きなことばかり考えず、毎日コツコツと会社や家庭で何かしらイノベーションを起こしていきたいものです(笑)。

2017年9月12日火曜日

風が吹けば…

先日、日経新聞に来年「パナソニック」が100周年を迎えるという、大きな広告が掲載されていましたが、やはりパナソニックと言えば、経営の神様である創業者松下幸之助を抜きに語ることはできません。

創業者松下幸之助の意志が、100年継続するパナソニックの根っこにあり、また社会に必要とされ貢献しなければ、100年も続けることは絶対にできないことを考えると、心から「おめでとうございます。」と申し上げたい気持ちになります。

私も会社経営者の端くれとして、時々思い出したように(大体は仕事で思い悩んだ時ですが)、松下幸之助氏が昭和43年から連載していた短文をまとめた「道をひらく」という文庫本を読んでいます。今でも大きな本屋さんに行くと、結構売れているようです。ベストセラーなので読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

さて今回パナソニック100周年の新聞広告を見て、私も改めて読んでみましたが(3年ぶりくらいかなー)、やはり名著は何度読んでも、常に新しい気づきがあるものです。本の内容は変わらなくても、自分自身の状況や変化や成長によって読むポイントも微妙に変わってくるからなのでしょう。

最近は「市場変動と投資家の行動心理との相関」に興味が深いせいか、印象に残ったのは…「風が吹けば」というタイトルの文章でした。



「風が吹けば」

風が吹けば波が立つ。波が立てば船も揺れる。

揺れるよりも揺れないほうがよいけれど、

風が強く波が大きければ、何万トンの船でも、

ちょっと揺れないわけにはゆくまい。

これを強いて止めようとすれば、かえってムリが生じる。

ムリを通せば船がこわれる。

揺れなければならぬときには揺れてよかろう。

これも一つの考え方。

大切なことは、うろたえないことである。あわてないことである。

うろたえては進路を誤る。そして沈めなくてもよい船でも、

沈めてしまう結果になりかねない。

(以上本文から一部抜粋)



皆さんは読んでみてどう感じましたか?

私はこの文章は、長期投資に付随する短期変動への心構えとして、あるべき姿を見事に表現していると思います。いや投資だけでなく、仕事や生活や人生全般に通じる普遍的な心構えです。

「変動を無理に回避すること」を最新の金融工学で商品化したのが「サブプライムローン債券」や「仕組債」と呼ばれるものであり、その崩壊の結果が2008年のリーマンショックであったと私は捉えています。

私自身も改めて「風が吹けば」を読み、お客様の長期投資と共にある「バリューマネジメントという船」を沈めないために、文中にもあるよう「うろたえないよう、あわてないよう」頑張っていきたいと、心を新たにした次第です。

それでは皆さん、引き続きよろしくお願いいたします!

2017年9月5日火曜日

マーケットレビュー(2017年8月)

2017年8月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に、「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。それがマーケット下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと私は思います。

今月のポイントは、「堅調さを保つ世界経済および企業業績」(好材料)VS「米国の内政・災害リスク、スペインのテロ、北朝鮮問等の地政学リスク)」(悪材料)。この2つの綱引きで、金融市場は動くに動けない状況。それをどう見るかといったところでしょうか?

特に先進国の長期金利が、この1カ月でかなり低下したところに、市場参加者の先行きに対する警戒感の強さを感じます。

それでは下記情報をご確認頂き、自分としてどう捉えて、どう考えるか?

「是非お試しください!」


■2017年8月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)

1日、ユーロ圏2017年4-6月GDPは、年率2.3%成長。内需主導で堅調。
1日、米国物価は4カ月連続鈍化。6月は前年比+1.4%、FRB目標+2%を下回る。
1日、米アップル4-6月期決算は12%増益。iPhoneの大画面モデル堅調。
2日、NYダウが初の22,000ドルの大台へ。アップルの好決算を好感。
4日、米国自動車販売7ヵ月連続減少。これは構造的な問題?(ライドシェア台頭)
4日、7月米雇用統計で雇用者数は+20.9万人。市場予測18万人を上回る。
8日、日本の2017年上期経常収支は10.5兆円の黒字。リーマン危機後最大。
9日、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功したという報道が原因で「円高、株安」に。
10日、日本の公募投信の7月末残高が102兆円に。2年ぶりに最高値更新。
10日、北朝鮮問題の緊迫化で「VIX指数(恐怖指数)」の売買高が過去最高に。
11日、中国が通貨・人民元の切り下げを行ってから、ちょうど2年が経過。
12日、日本企業2018年3月期決算、純利益+13.6%増予想(3%程度上方修正)。
14日、仏マクロン大統領が就任3ヵ月。歳出削減等の政策が不人気で支持率急落。
14日、日本2017年4-6月GDPは+4.0%(予想+2.4%)。消費と投資が堅調。
15日、トランプ大統領の白人至上主義を巡る発言「双方に非がある」が大問題に。
16日、中国ネット大手アリババが、日本でスマホの電子決済サービスを始める。
18日、スペインのバルセロナでイスラム過激派によるテロが起きる。
18日、米トランプ大統領はバノン主席戦略官を解任。政権の混乱収束みえず。
22日、世界最大のHF(ブリッジウォーター)が、政治リスクから米国株弱気に。
22日、インドネシア利下げ実施。他の新興国も金融緩和の動き(先進国と反対)。
23日、米小売り大手ウォルマートとグーグルがネット通販で提携(VSアマゾン)。
25日、日本物価じわり上昇。7月の物価は前年同月比+0.5%(7ヵ月連続上昇)。
25日、米国ハリケーン「ハービー」直撃。トランプ政権の危機対応能力試される。
29日、北朝鮮が弾道ミサイル発射、日本上空を通過。日米韓、緊急安保理を要請。

 

■2017年8月の金融市場の動き

【8月末の長期金利】

米欧が量的緩和縮小に向かう段階に及んでも、長期金利は上昇するどころか下落している。米国で車が売れなくなっている背景にシェアリングエコノミーの進展等の構造問題があると言われるが、長期金利が上昇しないのも構造問題なのだろうか?それは今のところ判断するのは正直難しいところだと感じる。

日本10年国債  0.01% 前月比-0.07%  年初来 -0.03%
米国10年国債  2.11% 前月比-0.19%   年初来 -0.33%
ドイツ10年国債 0.36% 前月比-0.18%  年初来 +0.17%
英国10年国債  1.03% 前月比-0.2%   年初来 -0.21%


【8月末の先進国株式】

株式市場は、好調なマクロ経済、企業業績を背景に堅調だが、全体として膠着状態に突入。世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター」の創業者レイ・ダリオが、「政治リスクがかつてないほど高まっている」と継承を鳴らしたり、北朝鮮の行動がエスカレートしていたり、スペインでテロが起きたり等の地政学リスクの高まりから、株式市況の変動率も高まっている。

日本(TOPIX)  1617.41  前月比-0.1% 年初来+6.5%
米国(S&P500)  2471.65   前月比+0.1% 年初来+10.4%
(ナスダック) 6428.66  前月比+1.3% 年初来+19.4%
ドイツ(DAX)  12055.84  前月比-0.5% 年初来+5.0%
英国(FTSE100) 7430.62  前月比+0.8% 年初来+4.0%



【8月末の新興国株式】

新興国市場の最大の懸案事項は、米国の量的緩和縮小による米ドル高で、自国通貨が大幅下落してインフレ率が高まり、またドル建ての借金の負担が重くなることで、社会・政治・経済が不安に陥ることだと思う。しかし足元では逆に米ドルが安くなり、自国通貨も安定していることから、景気回復に軸足を置いた政策(金融緩和策等)が可能になっている。その結果、株式市場も堅調に推移している。

中国(上海総合)  3360.81  前月比+2.7% 年初来+8.3%
インド(SENSEX) 31730.49 前月比-2.4% 年初来+19.2%
ブラジル(ボベスパ)70835.05 前月比+7.5% 年初来+17.6%
ロシア(RTS)   1007.14  前月比+8.8% 年初来-4.9%



【8月末の商品市況】

米国トランプリスクの高まりにおける米ドル安、そして北朝鮮等の地政学リスクの受け皿に、「金というアセットクラス」は健在のようである。ビットコイン等も受け皿的になっている感もあるが値動きが荒すぎるので、やはり「有事の金」ということであろう。原油価格は先月大幅反発の反動で下落。

WTI原油先物(1バレル)47.23ドル 前月比-5.9% 年初来-12.1%
NY金先物(1オンス) 1316.2ドル 前月比+3.9% 年初来+14.5%



【8月末の為替市場】(+は円安 -は円高)米ドル安、ユーロ高が進展。

為替市場では、米ドル安が進捗。トランプ政権下の米国通貨「ドル」への信認がすぐに揺らぐことはないと思うが、黄色信号が点滅しているような印象を受ける。円が日本の国内要因で積極的に買われることはなさそうだが、外部要因、例えば更なる米ドル安によって、もしくは今年高くなっているユーロが安くなること等に起因とする円高リスクはあるとみる。

米ドル/円  109.97円  前月比-0.2% 年初来-5.9%
ユーロ/円  130.96円  前月比+0.3% 年初来+6.4%
英ポンド/円 142.20円  前月比-2.5% 年初来-1.3%
豪ドル/円  87.39円   前月比-1.0% 年初来+3.6%

以上

2017年8月22日火曜日

長期志向の会社に長期投資を

長期投資においては、長期的に成長する会社に投資をすることが大切です。

しかし残念ながら、どんな会社も一本調子で成長するなんてことはなく、必ず危機や困難に直面します。

それらを乗り越え、次の成長ステージに移行するには、優れた経営陣、社員、技術、アイディア、製品、サービス、強固な財務基盤、危機を乗り越える企業文化等々、様々なファクターが必要でしょうが、やはり何よりも経営者が長期志向(長期のヴィジョン)を持っていることが最重要だと私は思います。

その長期志向を持つ経営者ですが、やはりサラリーマン経営者よりも創業者(もしくは創業者一族)に多いように感じます。アップル創業者のスティーブ・ジョブスやアマゾンのジェフ・ベゾスがその典型ですが、彼らの興味は、四半期、半期、1年の短期業績などより、ビジネスを通じ、長期的に世の中を変革することにあります。

さてバリューマネジメントは基本的に、長期的に成長する企業の発掘および投資、いわゆる銘柄選択の作業を優れた運用会社に委託していますが、弊社が最も信頼する運用会社キャピタルの評価も高い日本の会社に「村田製作所」があります。

村田製作所は、1944年創業(京都市)の世界的な電子部品会社です。

(2017年3月期の連結売上高1兆1355億円、営業利益2012億円)

電子部品業界は一般的には馴染みが薄い業界ですが、電子部品の製造は、お椀や茶碗等の焼き物をつくることに通じるものがあり、とても職人的だと言われています。世界的に見て、日本の強みが最も活かされている業界だと感じます。

日本の大手電子部品会社6社(京セラ、ローム、村田製作所、日本電産、TDK、アルプス電気)のうち、4社が京都企業というのも決して偶然ではなく、「京焼」などの伝統文化の延長線上に電子部品会社の出現、発展があるのです。

今後、世界経済の潮流としてIOT(モノのインターネット化)が急速に進展する中、スマートフォンの高度化、自動車の自動運転等々、様々な社会的変化が予想されます。

その中で必要不可欠になってくる電子部品、センサーを供給する会社の中でも、同社は優れた技術力を背景に、高い競争力を有しています(特に同社の積層セラミックコンデンサーはスマホやテレビ等の蓄電に欠かせないコンデンサーの小型化、高性能化に成功している)。

そんな同社の村田恒夫社長が、2017年7月10日付日経新聞のインタビュー記事で以下のように語っています。

「一般論でいえば、部品ビジネスは市況性が高いので、いい時も悪い時もあるが、業績が悪化したからといって、投資をやめるようでは競争力はつかない。苦しい時でも、長期的な見通しにたって、新製品の開発投資や工場投資を継続することが大切だと思う。」

この村田社長の長期投資志向が、営業利益率20%の世界的な高収益企業を創りだしているのだと私は思います。

いかがでしょう。私たちの資産運用(長期投資)にも通じる考え方ではないでしょうか?

8月に入り、北朝鮮問題、米国トランプ政権の混迷、スペインのテロ等の政治リスク、地政学リスクの高まりによって、金融市場という市況は悪化傾向にあります。

しかしこのような時期を何度も乗り越え投資を継続することが大切です。そしてそのたびに、私たちの長期投資志向(マインド)は醸成され、それと同時に投資ポートフォリオの長期的な収益力も向上していくのだと思います。

2017年8月9日水曜日

基本を大切に「逞しい資産」を創る

あくまで私見ですが、仕事、勉強、スポーツ等々、何でもそうですが、一般的にやればやるほど情報量も増え、スキルも向上していく一方で、最初に学んだ基本的なことを見失ったり、疎かにしてしまったりするケースも増える気がします。

資産運用についても同様のことが言えます。詳しくなればなるほど、詳しく見れば見るほど、些細なことが気になり、資産運用の成功から遠ざかっていく(資産運用で失敗する)。そんなことが頻繁に起きたりするから厄介です。そういった意味でも、間違ったかたちで資産運用を学ぶことは大変危険です。むしろ学ばなかった方がマシだったりします。

このような事象が起きてしまうのは、人間心理として致し方ないことではあるのですが、なるべくそうならないために、常に「資産運用の基本に立ち戻る」ことが大切です。

例えば「長期投資の基本」として、以下の3つの当たり前のことを、頭に深く刻み込んでおくだけでも資産運用の失敗確率を減らし、長期的な成功に導くことにつながります。

①金融市場の収益(リターン)と変動(リスク)はセットになっているいう認識。

②長い目で見れば金融市場は成長する。そこにリターンはあるという信念。

③リターンに付随する変動は「高い確率で報われるリスク」であるという理解。

実は誰もが自分だけは「リターンだけ欲しい。リスクはいらない。」と、心のどこかで思っていたりします。私自身もそうですが、人間は思った以上に身勝手なのですねー。しかしそんな幸運が起こることを願うのはやはり贅沢すぎるのです。(本当にそれが幸運かは疑問だか…)

「変動があるから成長がある。」「変動がないところに成長はない。」

この事こそが、資産運用に限らず人生全般の基本(原理原則)ではないでしょうか?

例えば子育てにおいて、あまり子供を過保護にし過ぎると、ひ弱な子供に育ってしまうのと同様、資産をあまり過保護にして、変動から守ろうとしすぎると、長期的にはインフレに負けてしまう「ひ弱な資産」になります。

多少変動に晒して、苦しい場面を経験したりすることで、資産は本当の意味で「逞しい資産」となって価値を生み出していくのだと思います。

「 逞しい資産」こそが、皆さんの長い人生を豊かな方向に導くのだと思います(ひ弱な資産では駄目なのです)。

資産運用の仕事を30年ちかくやってきて、そのように感じる今日この頃です。

2017年8月4日金曜日

マーケット・レビュー(2017年7月)

2017年7月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を、まとめて関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。
変動の要因を理解することこそが、マーケット下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと、私は思います。

今月のポイントは、「米ドル安の世界金融経済に対する影響」、「2つの中国(古い中国と新しい中国)」、「米パリ協定脱退後の世界各国の行動」、「世界株式市場の堅調さと一方で台頭する頭打ち感」といったところでしょうか。

それでは下記情報をご確認頂き、「自分としてどう捉えて、そう考えるか? 」

是非お試しください!

■2017年7月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)

2日、東京都議会選で「都民ファーストの会」が第一党になる。自民党惨敗。
3日、6月の日銀短観で「景況感3期連続改善」。輸出・消費が回復。
3日、米国の6月製造業景況感指数は57.8(2年10ヵ月ぶりの高水準)。
4日、米国自動車販売が2017年1-6月期に前年同期比で2.1%減少(8年ぶり)。
5日、インドのデジタル経済規模は今後3.4年で1兆ドルに倍増(IT大臣発言)。
5日、イタリア政府は、不良債権の最大案件だった大手銀行の国有化を決定。
6日、日本とEUは経済連携協定(EPA)の締結で合意。2019年発効へ。
6日、日本の10年国債が0.1%に上昇(欧米の長期金利上昇の影響を受け)。
7日、米国6月雇用者数は前月比22万2000人増(予測17万人)。米雇用堅調。
7日、日本の公的年金(GPIF)の2016年度運用成績が公表される。「+5.86%」。
8日、仏が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の国内販売を禁止と発表。
10日、日本の生命保険各社は、死亡率低下に伴い来春から死亡保険料を下げる。
10日、金利差拡大を受け、円ドルレートが円安に(2ヵ月ぶりに114円台)。
10日、イラク首相が「イスラム国」に勝利宣言。モスル奪還。
11日、中国新車販売が急減速。2017年上半期は3.8%増(2016年+13.7%)。
13日、中国スマホ販売が急減速。2017年上半期3.9%減(3年ぶりに減少)。
13日、FRBイエレン議長が年内にFRB保有資産も縮小を開始すると表明。
13日、ビットコイン(仮想通貨)市場が大荒れ、取引所の分裂騒動や価格急落。
19日、中国4-6月期GDPは+6.9%と予想を上回る(ネット通販が+33%)。
19日、業種別指数「化学株」が過去最高値。旭化成、クラレが上場来高値更新。
20日、日銀物価2%目標を先送り(17年+1.1%、18年+1.5%、19年+1.8%)。
20日、米主要500社の4-6月期は8.5%増益(予想EPS140ドルと過去最高へ)
24日、IMF世界経済見通し2017年+3.5%(米国下方修正、欧州上方修正)。
24日、エジプトでインフレ率が30%に達し、経済が苦境に陥る。
25日、英国も仏同様2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止。
26日、電子部品6社受注が4-6月期15%増と拡大。スマホ高性能化、ゲーム機等。
27日、米ドル指数が1年ぶりの安値。物価上昇の鈍さとトランプ政権への不信。
28日、オバマケア見直しが否決。大型減税、インフラ投資の政権公約も暗礁へ。

■2017年7月の金融市場の動き

【7月末の長期金利】
前半各国で金利上昇も後半低下し、結果変わらず。

日本10年国債  0.08% 前月比変わらず  年初来 +0.035%
米国10年国債  2.30% 前月比変わらず  年初来 -0.14%
ドイツ10年国債 0.54% 前月比+0.11%   年初来 +0.35%
英国10年国債  1.23% 前月比-0.02%   年初来 -0.01%

【7月末の先進国株式】
先月下落のナスダック指数が「IT大手の好決算」で反発。

日本(TOPIX)  1618.61   前月比+0.4% 年初来+6.6%
米国(S&P500)  2470.30   前月比+1.9% 年初来+10.3%
(ナスダック) 6348.12.  前月比+3.4% 年初来+17.9%
ドイツ(DAX)  12118.25   前月比-1.7% 年初来+5.5%
英国(FTSE100) 7372.00   前月比+0.8% 年初来+3.2%

【7月末の新興国株式】
新興国経済と市場にリスクオンの傾向(米ドル安の裏返し)。

中国(上海総合)  3273.03  前月比+2.5% 年初来+5.5%
インド(SENSEX)  32514.94 前月比+5.2% 年初来+22.1%
ブラジル(ボベスパ)65920.36 前月比+4.8% 年初来+9.5%
ロシア(RTS)    1007.14  前月比+0.6% 年初来-12.6%

【7月末の商品市況】
原油価格が大幅反発。金も年初来で1割上昇(米ドルとの相関)。

WTI原油先物(1バレル)50.17ドル 前月比+9.0% 年初来-6.6%
NY金先物(1オンス) 1266.6ドル 前月比+2.1% 年初来+10.1%

【7月末の為替市場】
(+は円安 -は円高)米ドル安、ユーロ高が進展。

米ドル/円  110.24円  前月比-2.0% 年初来-5.7%
ユーロ/円  130.57円  前月比+1.7% 年初来+6.1%
英ポンド/円 145.78円  前月比-0.5% 年初来+1.2%
豪ドル/円  88.23円   前月比+2.1% 年初来+4.6%

以上。

2017年7月25日火曜日

絶対と絶対の間

もし「絶対確実に儲かるものがある」という情報があるとするなら、それは詐欺だと思うのですが、なぜか「絶対確実な儲け話」に飛びつく人が後を絶ちません。

金融知識がない高齢者が絶対儲かる新規公開株で騙されたりしますが、実は有名な企業経営者や富裕層も結構騙されます。その最たるものが、2008年12月に発覚した元ナスダック会長バーナード・マドフによる史上最大の投資詐欺事件です。

彼は「10%以上の確実な配当」を謳い文句に総額650億ドルの資金を集めましたが、実際には運用をしないでネズミ講方式でファンド出資者に配当を支払い続けていました。しかしリーマンショックを機にその自転車操業も限界に達し、詐欺行為が判明したのです。

映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏などの多くのセレブ達、また金融のプロと言われる銀行や保険会社もこの詐欺被害にあっています。

このように「投資詐欺事件に騙された人がいる」などの情報を耳にすると、一般的には儲からなくても損をしなければいいという心理が働くのも無理はありません。別に儲からなくても「絶対に損をしない銀行預金とかタンス預金」でいいと考え、資産運用管理に対し無関心になる人も出てくるでしょう。(実際には銀行が破たんしたらペイオフ制度で1000万円までしか確実な保障はないのですが…)

しかしこの考え方にも大きな誤りがあります。なぜなら預金は表面上は絶対に損をしないかもしれませんが、物価上昇を加味した実質価値でみた場合、長期的には損をする可能性が極めて高いからです。

数字で見ると過去40年間(1975年~2015年)の日本の消費者物価は平均で年率1.7%上昇しています。単純計算だと40年前に100円で買えたものは現在193円。

一方で同期間の普通預金の金利は0.8%。40年間で100円が137円という計算です。

その差は0.9%。193円-137円=56円。100円の普通預金は40年という時間をかけ、ゆっくりと確実に累積で56円の損を出したとも言えます。

このような話をすると、過去40年で見ると、前半20年はインフレ率が高く、1995年以降はデフレになっているので、今では話が違うのではと思う方もいらっしゃることでしょう(実に鋭い指摘です)。

しかし物価と普通預金の差を検証すると、国や時代に関わらず、概ね普通預金の金利は物価上昇率に勝っていません。

直近では先週7/20、日銀が金融政策決定会合で2%のインフレ目標を先送りし、物価上率を2017年度+1.1%、2018年度+1.5%、2019年度+1.8%と発表しました。2018年度、2019年度は分かりませんが、2017年度はほぼ確実な数字かと思います。

要するに足元で物価は年で1.1%上昇しているということ。一方普通預金金利は0.001%。まあゼロに近いので、普通預金の実質価値は1年で1.1%減少するということです。

これは過去40年の平均にほぼ近い数字です。今後も普通預金金利は物価上昇率に対して1%低いと仮定するなら、100万円の普通預金の10年後の実質価値は90万4382円、20年後は81万7907円、30年後は73万9700円ということになります。

こう考えると、やはり生活予備資金や5年以内に確実に使うお金は普通預金で確保し、将来の資産形成等は正しい合理的なかたちで投資を行うべきだと思います。
「絶対儲かる投資話」と「絶対損をしない預金」の間にある適切な場所で。

ちなみに絶対儲かると絶対損をしないの間にある、世界株式市場(MSCIワールド指数)は、過去40年の同期間、上がったり下がったりしながらも平均で8.6%上昇しています。それは100円が40年間で2,720円になったということ。

100%ではないが過去の経験則に基づき、そして「今後も変わらないであろう原理原則」に基づき、多少不安はあるかもしれないが、将来に向けて投資を行う。その姿勢こそが健全であり、また豊かな未来を創るために必要なマインドセットなのだと思います。

「変わらざる中心を持たない限り、激しい変化に対応することはできない。」
(7つの習慣の著者、スティーブン・R・コビィー)

2017年7月18日火曜日

情報とのつきあい方

資産運用業は「金融産業」であると同時に「情報産業」とも言えます。

投資家は様々な情報を元に投資の意思決定を行いますが、
企業や年金等の機関投資家は四半期、半期、年度などの決算期があるが故に
結構、短期思考の投資行動にでてしまうことが多いように感じます。

例えば、株式市場に短期的な悪い情報が出て、株価が底値の時(本来は買い時)、周りの投資家が売却しているという情報を目の当たりにして、自分たちも急いで売却してしまうというミスを意外に犯しています。(だからいっその事、資産運用を感情がないロボットに任せた方がいいのではという考えもでてきたりしている。)

一方で長期投資家は、長期情報の予測(それを個人的に合理的信念と呼びたい)をベースに、市場の過剰反応で短期的に割安になった証券をここぞとばかりに購入します。
そんな数少ない本物の運用会社を資産運用のパートナーにすることは、皆さんの人生をより豊かにすることにつながると私は信じます。

ところで先週「FRB、ECB等の量的緩和縮小」や「中国経済の減速(車やスマホの販売減速)」等が盛んに報道され、今後のマーケットに警鐘を鳴らしています。※危機感を煽っているという言い方もできるかもしれません。

「量的緩和の縮小ができるところまで経済が回復してきた」とか、「中国経済が量から質へ転換する中で、無駄な投資の代わりに、高度な消費活動が今後も成長を牽引するだろう」といったポジティブな側面からの声はほとんど見受けられません。

私が思うに、成功している長期投資家は「長期の視点で世の中のポジティブな側面に焦点をあてる方法で情報処理」を行っている気がします。それは決して物事を都合よく解釈するとか、現実から目を背けるということではありません。「証券市場のリターン(収益)の源泉」もしくは「優れた投資機会といったもの」は、世の中のポジティブな側面の中に存在することを、彼らは経験的にも直感的にも理解しているのでしょう。

一方、一般的な投資家がなぜ情報に踊らされ、右往左往しているかと言うと、それは短期の視点で、必要以上に世の中のネガティブな側面に焦点をあてる方法で情報処理をしているからです。

何はともあれ、世の中(社会・経済・金融等)と自分自身(収入・支出・資産・負債等)をつなぐ「情報」というものを、正しいフレームワークと考え方で処理することが、個人の資産運用を成功させるうえで大変重要なことだと私は思います。

「長期投資家にとって、本当に大切な情報とは何か?」この点については、今後も会社として、また個人としても、しっかり広く情報発信していきたいと考えております。

ビッグデータとかAIとか騒がれるこの時代、
資産運用に限らず「生きていくうえで情報といかにつきあうべきか?」

誰もが、改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。

2017年7月11日火曜日

GPIFの運用を見て思うこと

先週7月7日、私たちの公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立法人)の2016年度運用成績が公表されました。結果は+5.94%(市場運用部分)。GPIFは運用資産を約145兆円も有する世界最大の機関投資家ですから、運用益も約8兆円と巨額となりました。

ところで、GPIFは2001年度から本格的に金融市場で資産運用を開始したのですが、以前は主に年金福祉事業団が財政投融資債を購入するかたちで運用を行っていました。しかしそれでは日本国民の大事な老後資金がどのように運用管理されているのかが極めて不透明であることから、独立した運用管理機関(GPIF)をつくり透明性の高い運用をしようということになったのです。

現在は基本的に国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%というバランス(資産配分)で運用することになっています。

ところでGPIFが2001年度に市場運用を始めてから、常につきまとうのが「国民の大事な老後資金を株式や為替の変動に晒して、損を出したらどうするのだ!」という、マスコミを中心とした批判の声です。

ちなみに2015年度のGPIF運用成績は-4%で約5兆円資産が減少しています。
この時もアベノミクスの失敗とか、年金がギャンブルをしているなどという論調で、一部のマスコミが騒ぎ立てていました。こうして一般的な日本人に「投資は危ない」という刷り込みがされていった気もします。

ここでGPIFの過去10年の市場運用の成績をご覧ください。

【過去10年の運用成績】
2007年度 -6.4%
2008年度 -10.0%
2009年度 +9.6%
2010年度 -0.5%
2011年度 +2.5%
2012年度 +11.3%
2013年度 +9.3%
2014年度 +12.9%
2015年度 -4.0%
2016年度 +5.9%
(10年間の平均リターン+2.76%、資産増加+31%)

運用成績を単年度でみると、10年間でマイナスの年が4回。プラスの年が6回。
(特に当初、100年に一度と言われるリーマンショックが起きていることに注目)
冷静に見て、かなり運の悪い10年と言ってもいいでしょう。

とは言え、もしもGPIFが短期の変動を回避して、元本割れのない預貯金で運用をしていたとしたなら(実際には巨額過ぎて預金も難しいのですが…)、この10年間で資産は全く増えず、年金財政はさらに悪化したことでしょう。

GPIFは市場運用を開始した2001年度~2002年度にもITバブル崩壊にあって大きなマイナスを出しましたが、2001年度~現在にいたる資産運用の累積収益は約50兆円にも上ります。国民の大事な老後資金を長期の視点でしっかり増加させているのです。

それでも海外の優れた機関投資家の運用成績には全く及ばないのが実情ですから、今後ますます運用改革をして、少しでも私たちの老後資金を増やしてほしいものです。

しかし残念ながら…、GPIFがいくら頑張っても、それによって私たちの退職後の生活が良くなることはないでしょう。

日本の年金制度は賦課方式で、基本的に現役世代の年金保険料(掛け金)から年金受給者の年金が支払われる仕組みです。

過去、現役世代の掛け金が給付より多かった分、毎年それが蓄積され、それが今のGPIFの運用資産になっています。資産規模は約145兆円と確かに世界最大級ではあるのですが、今後は確実に取り崩しのステージに入ってきます。

平成27年時点、現役世代で年金を払っている人の数は約6712万人、年金をもらっている人は約4025万人。概ね6人で4人を支えている構図です。そして現在、日本全体で年間の年金給付がいくらかというと約50兆円です。この数字は今後も増加していくことを考えると、GPIFの145兆円も少なく感じます。

このように現役世代と年金受給者の比率、年金給付の絶対額を見ると、我が国の公的年金がいかに厳しい状況か、よく解ります。

今後はGPIF(年金)に退職後の生活を頼るのではなく、GPIFの運用を参考に、自分自身の資産運用をどうするかを考えるべきなのだと思います。

「投資が危ないのではなく、投資をしないことの方が危ない。」
GPIFの運用を見ながら、そんな時代のメッセージを感じます。

2017年7月4日火曜日

マーケット・レビュー(2017年6月)

早いもので2017年も半分が過ぎました。今年の中間地点において「世の中で何が起き、金融市場がどう動いたか?」ご確認頂くと同時に「ご自身の資産運用、仕事、生活等にどのような影響があるか?」是非考えてみてください!

■2017年6月の注目ニュース(社会・経済)

1日、トランプ米大統領が地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」離脱を表明。
2日、異次元緩和で日銀総資産(5月末時点)が500兆円を超える(GDP比93%)。
2日、IT株上昇で世界株式の時価総額が76兆㌦になり、2年ぶりに過去最高更新。
2日、日経平均が1年半ぶりに2万円回復。
2日、米国の5月雇用統計は、前月比13.8万人増(予想18万人)。
4日、トヨタと米電気自動車テスラが提携を解消。今後は強力なライバル関係に。
5日、サウジアラビア等アラブ諸国がカタールと国交断行。
6日、世界半導体販売額は前年比+11.5%。IOTでメモリー、センサー需要拡大。
9日、英国総選挙で与党が敗北。メイ首相が続投表明も影響力の低下が免れない。
9日、ナスダック急落。最近急ピッチで上げてきた反動と短期筋の手じまい売り。
10日、米国の経済成長戦略がロシアゲートの影響で停滞する見通しが相次ぐ。
13日、米ドル実効レートが8ヵ月ぶりの低水準(トランプ大統領以前の水準)。
13日、米ヤフーが消滅(通信大手ベライゾンの買収完了)。日本ヤフーは継続。
14日、米FRBが今年2回目となる0.25%の利上げを実施(1%~1.25%誘導目標)。
14日、米利上げ後に世界株高。長期金利が低位安定し、株式市場に安心感。
14日、FRBイエレン議長は、年3回の利上げを維持する政策シナリオを公表。
16日、日銀は金融緩和の維持を決定(9ヶ月連続)。金融緩和の出口は見えず。
16日、アマゾンが米高級食品ホールフーズ・マーケットを買収。
18日、フランス下院選挙で、マクロン新党が大勝、EUの結束に光明。
20日、ソニーの株価が9年ぶりの高値をつける。ゲーム事業の収益性を評価。
21日、NY原油価格が9ヶ月ぶりの安値。OPECが減産しても、他の国が増産。
23日、英国EU離脱から1年。英国では通貨安、インフレ率上昇など経済に影。
24日、欧州中央銀行(ECB)はイタリアの中小銀行の破綻処理を決定。
26日、エアバックのタカタが民事再生法申請。負債総額1兆円超。
26日、昨年度の対日直接投資は3兆円を突破して過去最高に(シャープの買収等)。
27日、銀行の国債保有は202兆円と過去最低に(5年間で半分に)。
28日、欧州国債利回りが急上昇。金融緩和の縮小の見方強まる(ユーロ高)。
29日、欧州の金利上昇をきっかけに銀行の利ザヤ改善期待から金融株が上昇。
29日、中国の通信機器大手ファーウェイが日本に生産拠点を新設。
29日、ソニー29年ぶりにアナログレコードの自社生産を再開。

■2017年6月の金融市場の動き

【6月末の長期金利】 世界の長期金利は小幅上昇も低位安定。
日本10年国債  0.08% 前月比+0.035% 年初来 +0.035%
米国10年国債  2.30% 前月比+0.1%  年初来 -0.14%
ドイツ10年国債 0.43% 前月比+0.13% 年初来 +0.237%
英国10年国債  1.25% 前月比+0.22%  年初来 +0.01%

【6月末の先進国株式】 概ね堅調も欧州株式と米ナスダックに調整売り。
日本(TOPIX)  1611.90  前月比+2.8% 年初来+6.1%
米国(S&P500)  2423.41  前月比+0.5% 年初来+8.2%
(ナスダック) 6140.42  前月比-0.9% 年初来+14.1%
ドイツ(DAX)  12352.12 前月比-2.3% 年初来+7.4%
英国(FTSE100) 7312.72 前月比-2.8% 年初来+2.4%

【6月末の新興国株式】 概ね横ばい、原油価格に連動するロシア株は軟調。
中国(上海総合)  3192.43  前月比+2.4% 年初来+2.9%
インド(SENSEX) 30921.61 前月比-0.7% 年初来+16.1%
ブラジル(ボベスパ)62899.87 前月比+0.3% 年初来+4.4%
ロシア(RTS)   1000.96  前月比-5.0% 年初来-13.1%

【6月末の商品市況】 原油価格を中心に商品市況は下落。
WTI原油先物(1バレル)46.04ドル 前月比-4.7% 年初来-14.3%
NY金先物(1オンス) 1240.7ドル 前月比-2.5% 年初来+7.9%

【6月末の為替市場】(+は円安 -は円高)年初からの円高圧力弱まる。
米ドル/円  112.48円  前月比+1.6% 年初来-3.8%
ユーロ/円  128.45円  前月比+2.6% 年初来+1.2%
英ポンド/円 146.49円  前月比+2.6% 年初来+1.7%
豪ドル/円  86.73円   前月比+5.7% 年初来-0.4%

■長期投資の視点 「日米欧の金融政策の現在地」

先月、米国FRBが今年2回目の0.25%の利上げを実施し(FFレート誘導目標を年1%~1.25%に)且つ、量的緩和の出口戦略を具体的に検討し始めました。また欧州ECBドラキ総裁もデフレからインフレを意識する発言をし、欧州でも量的緩和の出口が意識されました。一方で日銀は政策決定会合において9カ月連続の金融緩和維持を決定、黒田総裁はデフレに戻るリスクを避けるため、金融緩和の出口はまだ見えていないことを示唆しました。日米欧の中央銀行の金融政策の違いが、大変解りやすく示された2017年6月だったと言えます(為替市場は円安に反応)。

米国では昨年来の金利上昇に伴い、低所得者向けの自動車ローンの焦げ付きが増えるなど、実体経済への悪影響も見え始めていますが、経済全般は概ね良好と言えます。

さて日本においても、これから数年以内に金融緩和の出口を迎えるときが必ず来ます。日銀は過去数年の金融緩和に伴う国債やETFの購入で、今や資産が500兆円を越え、GDPに匹敵する規模に膨れ上がり、その財務内容はFRBやECBよりもリスキーな状態とも言えます。米国のように実体経済への悪影響を極力抑えながら、金融緩和の出口を出ることができるかどうかは相当心配な状況。最近、日本の不動産市況がピークアウトしてきている模様ですが、それは近い将来の金利上昇リスクを意識し始めた動きなのかもしれません。

このように金利の動きは、金融市場だけの問題ではなく、実体経済や個々人の生活に大きく関わってくる重要な問題です。株式より地味な金利や債券市場ですが、これからの動向をしっかりチェックしておく必要があります。

2017年6月27日火曜日

資産運用はウイスキー作りに似ている

二年前、山梨県のサントリー白州蒸留所にてウイスキー作りの見学をしました。

そこで厳しくも美しい大自然の中で、長い年月を経て出来上がるウイスキーの製造工程を、そして「長期間(5年、10年単位)の熟成を必要とするウイスキーは商売にならない」と誰もが言った中、知恵と工夫と努力で「極上のジャパニーズウイスキー」を創りあげたサントリーの創業者、鳥井信治郎(1879年1月30日 – 1962年2月20日)の情熱を知り、本当に感動しました。

その時ふと思ったのが「資産運用はウイスキー作りに似ているな」ということでした。

山崎や白州といった有名なシングルモルトウイスキーの製造工程を見てみると、
概ね下記①~⑤のステップを踏みます。

【STEP1】
原料…大麦と水(麦と水の品質がすごく重要)。

【STEP2】
仕込み…原料を混ぜ「麦汁」に、さらに酵母を加え「もろみ(発酵液)」に。

【STEP3】
蒸溜…もろみを2度蒸溜(蒸発後、冷却して液体化)して「モルト原酒」が完成。

【STEP4】
熟成…モルト原酒を樽の中に長期間貯蔵して熟成させる。

【STEP5】
ブレンド…複数のモルト原酒をブレンダ-が混ぜ合わせ「ウイスキー」が完成。

バリューマネジメントが提唱する資産運用の大きな2つのコンセプトは「長期投資とポートフォリオ運用」ですが、長期熟成すればするほど価値が上がるウイスキーに長期投資を、また優れた原酒だけでは駄目で、熟練のブレンダ-がそれをどう組み合わせるかが最終的に重要である点にポートフォリオ運用のイメージが重なります。

ちなみに原酒は株式や債券といった「原証券」に、良質な樽を「投資信託」に、熟練のブレンダ-を「弊社ファイナンシャルアドバイザー」に重ねたりもしました。

白州の厳しい自然の中で、様々な種類の樽の中で長期熟成される各モルト原酒(時間の経過と共に何とも言えない琥珀色と風味を醸し出す)、それを研ぎ澄まされた味覚を持ち、長年の経験を積んだプロのブレンダ-が組み合わせ(決して機械ではできないと言われる)極上のウイスキーが完成する。実に私達が目指す資産運用の姿に似ていると思った次第です。

そしてサントリー山崎25年のように素晴らしい「●●さんポートフォリオ25年」、いやもっと30年、40年物のポートフォリオを創ることを私達は目指したいと思います。

現在、日経新聞(朝刊)でサントリー創業者そして初代マスターブレンダ-でもある鳥井信治郎が主人公の小説「琥珀の夢」が連載されていますが、これが大変面白い。そんなこともあり、私事ですが、最近お酒を飲む時は、ほぼウイスキー(主にハイボール)という状況です(笑)。

2017年6月20日火曜日

GDP考察(第二回)

さて、今回も引き続きGDPについて解説致します。

その前に前回の内容を簡単にまとめると…、

(要約)
・GDPを深く知ることは、「経済を観る眼を養うこと」につながる。
・また同時に「長期投資への理解度を深めること」に役立つ。
・GDPは、例えるなら「パンの生産数」。
・GDP成長とは、「パンの生産数を増やすこと」。
・パンの生産数の増加=「労働人口の増加」×「労働生産性の向上」。

改めて以上の点を頭に入れたうえで、GDP考察(第二回)をお読みください!

【第二回】
日本のGDP(1年間の付加価値合計)は約500兆円。

前回はGDPをパン500個の生産に例え、GDPを生産面(供給サイド)から捉えましたが、次に、生産に関わった方々にパンの売上金を「分配」してみましょう。

その関係者は誰か(生産要素という)というと…、

① パン工場で働いている人(社員)
② パン工場を経営している会社(経営者・株主)、
③ (人ではないが…)パン工場の建物やパン製造器などの設備
④ パン工場に操業許可を与えている政府(国・地方公共団体)

GDP(1年に創出された付加価値合計)は、上記①~④に分配されます。

GDP約500兆円(分配面)=①+②+③+④

経済の専門用語を使い、併せて数字も見てみると…

① 雇用者報酬(約260兆円)=社員の給与・報酬(所得税含む)
② 営業余剰(約100兆円)=企業利益…経営者・株主の取り分(法人税含む)
③ 固定資本減耗(約100兆円)=生産設備・建物の減価償却費
④ 間接税等(約40兆円)=消費税、関税、固定資産税等

上記の数字は、かなりアバウトではあるのですが、日本のGDPは、第一ステップとして、50%が社員の給与、20%が経営者と株主への配分、20%が設備・建物に、10%が税金(政府)に分配されていると理解しておけば、全体感を捉えることができるでしょう。

※実際はその後、第二ステップとして雇用者報酬から所得税・住民税、営業余剰から法人税等が引かれるので、政府部門の取り分はもっと大きくなります。

さらにGDPには3つの目の側面があります。生産され、分配されたお金を、最終的に何に使うか?という「支出面」です。支出面から見たGDPの公式は、数字の集計も比較的にしやすいことから、最もポピュラーです。

GDP約500兆円(支出面)=(C+I+G)+(X‐M)

C=個人消費(約300兆円)
I=企業投資(約80兆円)
G=政府支出(約120兆円)
X=輸出(約88兆円)
M=輸入(約83兆円)

実際には、その他、住宅投資(約16兆円)、在庫変動の数字等も入ってきますが、シンプルに考えれば、この公式でOKです。

(C+I+G)が内需の強さ、(X―M)は外需の強さを反映します。ちなみに生産面=供給サイドに対して、支出面=需要サイドといえます。物価はこの需要と供給の綱引きで決まります(需給バランス)。日本は長年、供給が需要を上回る「需給ギャップ」が解消できず、デフレから脱却できていません。

さて、この公式から個人消費が伸び、企業の設備投資が増加し、公共投資を増やせばGDPは増加することがわかります。また輸出が輸入より増加すれば(貿易黒字が増加)、これもGDPの増加要因となることが理解できるでしょう。

しかしここで大切なのは、GDPは一定期間のフロー(個人で言えば年収、企業なら売上)の概念であるということの認識です。

個人や企業や政府がガンガン借金をして、無駄な消費や投資を増やしたとしても、一時的にはGDPは増加します(GDPは一定期間の量を測るだけで、質を問いません)。

しかし一方で当然そんなことをすれば、個人(家計)、企業、政府の各経済主体の資産内容は悪化します。資産内容の悪化が一線を超えると、借金の返済が最優先になり、消費や投資を控えるようになり、深刻な不況に陥ります。

これを「バランスシート不況」と呼びます。

1990年バブル崩壊後の日本、リーマンショック後の世界経済が、まさしくそうです。そして近年GDPを急成長させてきた中国で、バランスシート不況のリスクが高まっているのかもしれません。

このようにGDPは「生産面」、「分配面」、「支出面」から測定することができ、どの側面から計算してもGDPの数字は一致します。それをGDPの「三面等価の原則」と言います

新聞報道等では、GDPを支出面から捉えることが多いです。時々、他の側面から見ることもありますが、GDPの基本フレームワークを知っておくことで、今まで以上に経済情報の理解度も深まるかと思います。

ただ四半期や1年のGDPの変動や、それによって上下変動する株価・金利・為替等に、長期投資家が一喜一憂することは全くありません。

日本だけでなく、グローバルかつ長期的な視点に立てば、1900年~2000年の人口爆発の世紀ほどでないにしろ、今後も新興国を中心に労働人口は増加しますし、人工知能やロボット等による労働生産性の向上も見込めます。要するに世界のGDPはまだまだ成長余地があるいうことです。

GDPの成長パターンも変化しそうです。世界中でお金の使い方(支出)は「モノからサービスへ」。また21世紀は、20世紀よりも一人当たりの人生の時間が長くなってきます。このあたりをビジネスチャンスにする企業が今後も活躍するでしょう。過去とは異なるパターンでGDPが成長する中で、それを機会に変える企業にしっかり長期投資をしたいものです。

そのためにも弊社ファイナンシャル・アドバイザーは、常に経済を観る眼を鍛え、皆様の資産価値向上に貢献してまいりたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます!

それにしてもGDPだけで、こんなに長い文章になってしまいました。
すみませんでしたー(笑)。

2017年6月13日火曜日

GDP考察(第一回)

日経新聞2017年6月2日 「日銀総資産500兆円を超える~GDP並みに膨張~」

同年6月8日 「日本1~3月期GDPは1.0%増に下方修正~在庫圧縮加速が原因~」

GDPは一国の経済規模を示す代表的な経済指標ですが、以上のように様々な経済関連記事に最も頻繁に登場するといっても過言ではありません。

このGDPを深く知ることは、経済を観る眼を養うことにつながると同時に、
長期投資への理解度をより深めることに役立ちますので、
私の視点から、2回シリーズでGDPについて解説してみたいと思います。

【第一回】

GDP(Gross Domestic Product)=国内総生産
国内で一定期間に生み出された「付加価値の総額」
=国内で一定期間に生産された「最終財・サービスの総額」
※一定期間は1年とか四半期(3ヶ月)

GDP(国内総生産)はその名のとおり、「国内で生産されたものの総額」。
生産という言葉から、目に見える「モノ」のイメージが先行しますが、医療・介護・娯楽等の「サービス」も全て含まれます。一方で主婦の家事や地下経済の取引(麻薬・売春等)は含まれません(この2つを並べ論じるのも大変申し訳ないですが…)。

ということは、良いか悪いかは別にして、家事や介護を家庭でやるのでなく、業者に委託すればGDPの数値は大きくなるということになります。

ところで日本のGDP(1年間の生産総額)は現在、約530兆円。

当然、GDPの中には「様々な財やサービス」があるわけですが、
私はそれを「パン」に集約することでGDPを簡潔に説明することがあります。
皆さんも親戚の中学生や高校生にGDPを教えるような時があれば是非、この手法をご活用ください(笑)。

ここで1兆円=パン1個に換算します。大変高価なパンです(笑)。

日本は年間にパンを約530個生産できる国です。生産規模は世界第3位になります。
世界一の経済規模を誇る米国のGDPは日本の約4倍=パン約2100個、
世界第二位の中国のGDPは日本の約3倍=約1500個。
(私的には、日本500個、米国2000個、中国1500個くらいまで単純化して捉えています。)

ここで少し話を戻しますが、冒頭GDPは「付加価値の総額=最終財・サービスの総額」と記載しておりますが、この意味について、パンの製造工程を例に解説したいと思います。

【パンの製造工程】↓

① 種苗会社が農家に10円で小麦の種を売る。
(付加価値10円)
② 農家は小麦の種を10円で買い、小麦を育て30円で製粉会社に売る。
(付加価値20円)
③ 製粉会社は30円で仕入れた小麦を、小麦粉にして50円でパン屋に売る。
(付加価値20円)
④ パン屋は50円で仕入れた小麦粉からパンを作り、最終消費者に100円で売る。
(付加価値50円)

パンの製造工程(中間財・サービス)で発生した付加価値の合計は100円となり、それは最終消費財のパンの価格100円と等しくなります。

要するに最終財・サービスの合計を計算すると、一国の年間の付加価値総額を捉えることができるということです(中間財・サービスの計算は不要)。

次に経済成長(GDP成長)とは、製造するパンの数を増やすことだと捉えて頂きたい。

パンの数を増やすポイントは2つ。
GDP成長率=「労働人口の成長」×「労働生産性の成長」

パン工場の生産能力を高めるには、「従業員を増やすこと」および「社員教育や機械化やIT化等で従業員一人あたりの生産性を高めること」が重要な要素になるということです。

この単純化したパン工場モデルから、アベノミクスの成長戦略の目標、GDPを500兆円から600兆円にする(パンを500個つくる国から600個つくる国にする)ため、なぜ主婦や高齢者や外国人の労働市場への参加を促しているのか、IOTや人工知能等の技術革命を促す規制緩和等(あまりできてないが…)の位置づけも理解しやすくなるかと思います。

GDP=パンの生産数
GDP成長=パンの生産数を増やす

パンの生産数が増えれば、従業員の給与も増え、飢えや貧困もなくなり豊かになる。よって「経済成長=善」だという側面がある一方で、パンの製造工場をガンフル稼働させると排出ガス等で環境に良くなかったり、パン工場の経営の差が格差社会を生み出したりする負の側面もあります。経済政策においては、そのあたりのバランスがとても難しいことろです。

こんなイメージを持って、GDP関連記事を見てみると面白いかと思います。

次回はこの生産したパンを誰が買って食べるのか(支出面)?とか、
パンの売上をどのように分けるか(分配面)?という観点から、
その昔に学校で習ったであろう「GDPの三面等価の原則」を意識しながら、解説してみたいと思います。

それではまた!!

2017年6月6日火曜日

マーケット・レビュー(2017年5月)

今後、当ブログでは、先月のマーケット・レビューを行います。

定期的に、「世の中の動き」を確認して頂ければ幸いです。
さて早速、下記に先月の主な金融市場の値動きを掲載しました。
「金利、株式、商品、為替」は互いに影響しあって動いています。
ここから、皆さんは何を読み解き、どう感じるでしょうか?
5分で結構なので、是非、下記の数字を見ながら考えてみてください!



■2017年5月の金融市場


【5月末の長期金利】 全体的に長期金利低下。

日本10年国債  0.04% 前月比+0.025% 年初来 変わらず
米国10年国債  2.20% 前月比-0.08%  年初来 -0.24%
ドイツ10年国債 0.30% 前月比-0.023% 年初来 +0.107%
英国10年国債  1.03% 前月比-0.04%  年初来 -0.21%



【5月末の先進国株式】 全体堅調。特に米国ナスダック、ドイツが好調。

日本(TOPIX)  1568.37  前月比+2.4% 年初来+3.3%
米国(S&P500)  2411.80   前月比+1.2% 年初来+7.7%
(ナスダック) 6198.52   前月比+2.5% 年初来+15.1%
ドイツ(DAX)  12615.06   前月比+1.4% 年初来+9.9%
英国(FTSE100) 7519.95    前月比+4.4% 年初来+5.3%



【5月末の新興国株式】 好不調の格差あり。インド好調、ロシア不調。

中国(上海総合)  3117.18  前月比-1.2% 年初来+0.4%
インド(SENSEX) 31145.80 前月比+4.1% 年初来+17.0%
ブラジル(ボベスパ)62711.47 前月比-4.1% 年初来+4.1%
ロシア(RTS)   1050.30  前月比-5.5% 年初来-8.6%



【5月末の商品市況】 原油価格下落、金価格堅調。

WTI原油先物(1バレル)48.32ドル 前月比-1.8% 年初来-10.1%
NY金先物(1オンス)  1272.0ドル 前月比+0.2% 年初来+10.6%



【5月末の為替市場】(+は円安 -は円高)対円で米ドル弱く、ユーロ堅調。

米ドル/円  110.75円  前月比-0.6% 年初来-5.3%
ユーロ/円  124.52円  前月比+2.6% 年初来+1.2%
英ポンド/円 142.82円  前月比-1.0% 年初来-0.9%
豪ドル/円  82.31円   前月比-1.4% 年初来-2.4%



また金融市場は「経済・政治・社会」等の様々な出来事を反映します。

金融市場の動きと、その背景にあるニュースを関連づけることで、長期投資に付随する「ボラティリティ(変動)=価格変動リスク」の要因を知ることができます。このリスクは「リターンの源泉として必要不可欠なリスク」。このリスクからは目を背けるのでなく、その要因を知り、しっかり付き合っていくことが大切です。



■2017年5月の注目ニュース(社会・経済)

3日、ユーロ圏1-3月GDPは年率+1.8%成長。緩やかな回復を維持。
3日、米FRBは金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送る。
5日、米国の4月雇用統計。雇用者数は前月比21.1万人増加(予想18.5万人)。
7日、2016年度、日本の投資信託は14年ぶりに資金流出。毎月分配売れなくなる。
7日、フランス大統領選、中道のマクロン氏が勝利。極右ルペン氏に大差。
8日、フランス大統領選を受け、日経平均が年初来高値を更新。
11日、米トランプ大統領が、FBIのコミー長官を突然解任(ロシアゲート問題)。
12日、2016年度日本の経常黒字が20兆1990億円まで回復(9年ぶり20兆円台)。
13日、日本の上場企業の2018年3月期最終利益は2年連続で過去最高更新の見通し。
14日、新興国株式への投資マインドが回復傾向。中国の財政支出→資源価格上昇。
15日、ドイツ地方選挙、メルケル与党が最大州を制す。欧州政治リスク後退。
18日、日本1-3月GDPは年率+2.2%成長。11年ぶりに5期連続プラス成長。
18日、NYダウ372ドル安、ロシアゲートで政策停滞懸念。
18日、ブラジル株式および為替急落。テメル大統領の汚職疑惑が発覚。
20日、イラン大統領選、核合意順守のロウハニ師が再選。
27日、2017年日本企業の設備投資計画は前年比13.8%増、人手不足への対応急務。
30日、米国の物価は前年同月比1.7%に鈍化、FRBの目標2%に届かず。
30日、アマゾン株1000ドルを突破。1997年上場から20年で株価は約500倍。



5月は世界的に好調な経済指標と企業業績の発表が相次ぎ、経済の堅調さが目立つ一方で、政治面では、好材料と悪材料が目まぐるしく入れ替わる状況でした。

好材料としては、仏大統領選、ドイツ地方選での欧州政治リスク後退、イラン大統領選にて核合意順守の穏健派再選、悪材料として米国の政治リスク(ロシアゲート問題)の増大、ブラジル大統領の汚職等がありました。それを受け世界の株式市場も乱高下しましたが、月間を通してみると、月初高→中旬下落→月末にかけ戻す、という流れとなりました。

そんな状況下、米国アマゾンの株価が1000ドルを超え大きな話題となりました。目先の政治経済の動きと関係なく、社会経済の構造変化と技術革新の波に乗り、そして何よりもアマゾン自身の起業家精神が相まって、株価が20年で500倍に成長した事実こそが、長期投資の本質を捉えているように思えます。

2017年5月30日火曜日

豊かな人生とは?


皆さんにとって、豊かな人生とはどんなものでしょうか?

世間の常識や周りの声に左右されることなく、一度じっくり考えてみることをお薦めしたいと思います。実はそのイメージの中にこそ、皆さんに最適な資産運用スタイルのヒントがあります。

私は1990年に証券会社で仕事を始めた頃から、生涯の大半の時間を費やす自分自身の仕事が、もし仮にお客様から喜ばれないとするなら「それは結構悲しいよなー」と強く感じてきました。どうせやるなら「最高のサービスですね」と言われたい。それに資産運用を業とする自分としては、何よりも仕事を通じて「お客様の豊かな人生」に貢献したい。もしかしたらそれは組織の中では、単なるエゴなのかもしれないし、格好つけているだけかもしれないと悩んだこともありましたが、それでも自分が正しいと思うことを、正しいと思われる方法でやりたい。そんな個人的な気持ちが、私がバリューマネジメントを創業した理由であり、これからも続けていこうと思うモチベーションであると、今だから確信を持って言えます。

「なぜ今なのか?」

それは長年抱えてきた疑問、「豊かな人生って何?」という本質的な問題に対して、概ね自分なりの捉え方ができるようになってきたからです。仕事の目的(お客様の豊かな人生への貢献)が明確になってきたからこそ、手段(ツール)としての資産運用の位置づけも明確になってきたのだと思います。

そもそも、「豊かな人生」なんていうものには、結構個人差があるわけでして、豊かさを構成する要素(仕事、家族、人間関係、お金、健康、食事、夢、時間、趣味、住居、etc)も数多く、どの要素を重要視するかで、豊かさの基準も変わってきます。要するに、人によって「豊かな人生」は異なるということです。

「豊かな人生の答えは、個々のお客様自身の中にある」という当たり前のことを、私は長年、本当には解っていませんでした。それが解った時、自分の金融知識を押しつけがちだった仕事のスタイルが変わり、お客様に最適なかたちを模索していく意識が高まりました。

しかし個々の豊かさの基準は違っても、そこに共通する軸があるということも、色々な学び(パーソナルファイナンス学習)や実務経験(数多くのお客様へのアドバイス)を経て、自分なりに解ってきました。その軸とは、人は誰も自分自身が思い描くライフプランを実現していくことによって、人生の満足感を得ていくということです。

ライフプランと言うと、なんだか堅苦しいものと感じる人もいるかと思いますが、決してそうではなく、私個人で言えば、「バリューマネジメントを真に質が高い個人資産運用カンパニーに育てたい!」という仕事上の長期目標から、「明日、友人と飲みに行くので楽しみだ!」といった気軽な短期プランまで、未来のことは全て含まれる概念です。しかし気軽なライフプランでさえ、体調を崩してしまっては飲みにも行けませんし、失業して経済的に厳しいと、その気も失せるかもしれません。ライフプランを実現するには、それが何であれ「経済基盤と健康状態」が大変重要な鍵になってくるということです。

お客様のライフプラン実現を支える経済基盤を、人生の時間軸に沿って、長期的に構築して管理するために、最適な資産運用プランを立案し、実行・継続をサポートしていくこと。それがバリューマネジメントのファイナンシャル・アドバイザーの仕事です。

そのためには一方で、「世界のどこに?」「未来のどこに?」付加価値を生み出す投資機会があるのかについて、パートナーである運用会社と共に模索し続ける必要もあります。

大変ですが、自分の人生をかけて取り組むべき価値の高い仕事だと、27年間続けてきて、ようやく自信を持って言える段階にきた気がします。とは言え、この仕事にこれで終わりというものはなく、常に進化していかなくてはなりません。そうでないと人工知能やロボットに追い越されてしまう時代ですから…(苦笑)。

2017年5月24日水曜日

日本人の資産運用利回り

日本の個人金融資産の合計金額は、2016年9月末時点で1752兆円。

当然、弊社がお客様からお預かりしている運用資産も含まれているわけですが、ここで問題です。

Q.日本の個人金融資産1752兆円が生み出す年間の利息・配当収入(インカムゲイン)の総額はいくらでしょうか?

A.答えは14兆円。

よって日本人の資産運用利回り(元本の変動除く)は、14兆円/1752兆円=約0.8%となります。

一方、米国と欧州(ユーロ圏)の状況を見ると、下記のとおり(円換算ベース)。

【米国】個人金融資産(2015年時点)=約8400兆円、利息・配当収入=259兆円。資産運用利回りは、259兆円/8400兆円=約3.2%。

【欧州】個人金融資産(2016年時点)=2676兆円、利息・配当収入=98兆円。資産運用利回りは、98兆円/2676兆円=約4.1%。

利息・配当金額を比較すると、日本:米国:欧州=14兆円:259兆円:98兆円。運用利回りの比較では、日本:米国:欧州=0.8%:3.2%:4.1%。

実は上記の数値は、あくまでインカムゲインに着目した数字であり、元本の変動である値上がり、値下がり(キャピタルゲイン)を加味していませんが、それを加味した長期データを分析しても、おそらく日本の資産運用利回りの順位が上がることはありません。

残念ながら圧倒的な差です。長年、資産運用業界で仕事をしてきた人間として責任を感じてしまいます。

このデータからは、現役時代に懸命に働き、せっかく貯めたお金が、ほとんど収益を生まないで、将来の豊かさに貢献できていない。そんな日本人の平均的なライフスタイルが浮かんできます。

この差を生み出す大きな原因になっているのが、個人金融資産の全体バランス=「預貯金‐投資比率」にあると、私は見ています。(それに加えて資産運用会社の運用スキルの差等)

日本の金融資産に占める預貯金比率は約52%、米国は約14%、欧州は約35%。一方で投資(株式+投資信託)の占める比率は、日本は約14%、米国は約46%、欧州は約25%となっています。

この数字を見て、皆さんはどう感じますか?

将来に向け必要な投資をしない会社に成長はありませんが、実は個人も一緒だと思います。「長期投資(自分の能力開発も含め)なくして豊かな未来なし」ではないでしょうか?

高度経済成長時代は、個人の代わりに、国や企業や銀行が投資をして、その分け前をもらうことで、個人の退職後の生活が成り立つモデル(間接金融モデル)でしたが、現在は人生を支える投資活動を、個人の責任で行わなくてはならない時代(直接金融モデルの時代)がきていることを認識しなければなりません。

バリューマネジメントは、長期投資を通じ、弊社のお客様の長期的な資産運用利回りを向上させることが主業務です。それが日本全体の資産運用利回りの向上および経済成長にも繋がると信じ…。それと、いつまでも米国や欧州に負けているのも癪ですしねー。

ブログを書きながら「自分の負けじ魂」に火がついてきました(笑)。

(注)上記数値は、一橋大学院国際企業戦略研究科の調査レポート(2017年5月)からの抜粋。

2017年5月15日月曜日

ブログ始めます。


「長期投資の視点」というタイトルのブログを始めます。

最近、何人かのお客様から、「世の中で起きていることに対し、中浜さんがどのような物の見方、考え方をしているのか、実際に会っている時以外にも知りたい、それが資産運用を継続するうえで安心感にもなるし勉強にもなります。」といった熱いリクエストを頂き、それにお応えしたいと思いブログを始めることにしました。

以前、新聞紙上で経済コラムや投資信託の分析記事等を執筆したりもしていたのですが、正直、自分の文章が、自分の意図を正確に伝えきれていないのではというジレンマがありました。

また作文している自分に気づき、途中で書くことが面倒になったのもあります。本音で語れるフェイストゥフェイスの個人面談の方が楽しいですからねー(笑)。それでも私の文章が好きだという方もいてくださったりして…、そんなこんなで書くことに再挑戦。今度は途中で自分自身が嫌にならないよう、皆さんとお会いして話をしている時のままでいきたいと思っております。

「長期投資の視点」を読んで頂き、巷の金融経済情報を、短期視点でなく、長期視点で捉え、考える習慣をつけて頂ければ幸いです。それが皆さんの「長期投資の継続と成功につながる」と信じ、私もブログを長期継続していくつもりでおりますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします!