2017年6月27日火曜日

資産運用はウイスキー作りに似ている

二年前、山梨県のサントリー白州蒸留所にてウイスキー作りの見学をしました。

そこで厳しくも美しい大自然の中で、長い年月を経て出来上がるウイスキーの製造工程を、そして「長期間(5年、10年単位)の熟成を必要とするウイスキーは商売にならない」と誰もが言った中、知恵と工夫と努力で「極上のジャパニーズウイスキー」を創りあげたサントリーの創業者、鳥井信治郎(1879年1月30日 – 1962年2月20日)の情熱を知り、本当に感動しました。

その時ふと思ったのが「資産運用はウイスキー作りに似ているな」ということでした。

山崎や白州といった有名なシングルモルトウイスキーの製造工程を見てみると、
概ね下記①~⑤のステップを踏みます。

【STEP1】
原料…大麦と水(麦と水の品質がすごく重要)。

【STEP2】
仕込み…原料を混ぜ「麦汁」に、さらに酵母を加え「もろみ(発酵液)」に。

【STEP3】
蒸溜…もろみを2度蒸溜(蒸発後、冷却して液体化)して「モルト原酒」が完成。

【STEP4】
熟成…モルト原酒を樽の中に長期間貯蔵して熟成させる。

【STEP5】
ブレンド…複数のモルト原酒をブレンダ-が混ぜ合わせ「ウイスキー」が完成。

バリューマネジメントが提唱する資産運用の大きな2つのコンセプトは「長期投資とポートフォリオ運用」ですが、長期熟成すればするほど価値が上がるウイスキーに長期投資を、また優れた原酒だけでは駄目で、熟練のブレンダ-がそれをどう組み合わせるかが最終的に重要である点にポートフォリオ運用のイメージが重なります。

ちなみに原酒は株式や債券といった「原証券」に、良質な樽を「投資信託」に、熟練のブレンダ-を「弊社ファイナンシャルアドバイザー」に重ねたりもしました。

白州の厳しい自然の中で、様々な種類の樽の中で長期熟成される各モルト原酒(時間の経過と共に何とも言えない琥珀色と風味を醸し出す)、それを研ぎ澄まされた味覚を持ち、長年の経験を積んだプロのブレンダ-が組み合わせ(決して機械ではできないと言われる)極上のウイスキーが完成する。実に私達が目指す資産運用の姿に似ていると思った次第です。

そしてサントリー山崎25年のように素晴らしい「●●さんポートフォリオ25年」、いやもっと30年、40年物のポートフォリオを創ることを私達は目指したいと思います。

現在、日経新聞(朝刊)でサントリー創業者そして初代マスターブレンダ-でもある鳥井信治郎が主人公の小説「琥珀の夢」が連載されていますが、これが大変面白い。そんなこともあり、私事ですが、最近お酒を飲む時は、ほぼウイスキー(主にハイボール)という状況です(笑)。

2017年6月20日火曜日

GDP考察(第二回)

さて、今回も引き続きGDPについて解説致します。

その前に前回の内容を簡単にまとめると…、

(要約)
・GDPを深く知ることは、「経済を観る眼を養うこと」につながる。
・また同時に「長期投資への理解度を深めること」に役立つ。
・GDPは、例えるなら「パンの生産数」。
・GDP成長とは、「パンの生産数を増やすこと」。
・パンの生産数の増加=「労働人口の増加」×「労働生産性の向上」。

改めて以上の点を頭に入れたうえで、GDP考察(第二回)をお読みください!

【第二回】
日本のGDP(1年間の付加価値合計)は約500兆円。

前回はGDPをパン500個の生産に例え、GDPを生産面(供給サイド)から捉えましたが、次に、生産に関わった方々にパンの売上金を「分配」してみましょう。

その関係者は誰か(生産要素という)というと…、

① パン工場で働いている人(社員)
② パン工場を経営している会社(経営者・株主)、
③ (人ではないが…)パン工場の建物やパン製造器などの設備
④ パン工場に操業許可を与えている政府(国・地方公共団体)

GDP(1年に創出された付加価値合計)は、上記①~④に分配されます。

GDP約500兆円(分配面)=①+②+③+④

経済の専門用語を使い、併せて数字も見てみると…

① 雇用者報酬(約260兆円)=社員の給与・報酬(所得税含む)
② 営業余剰(約100兆円)=企業利益…経営者・株主の取り分(法人税含む)
③ 固定資本減耗(約100兆円)=生産設備・建物の減価償却費
④ 間接税等(約40兆円)=消費税、関税、固定資産税等

上記の数字は、かなりアバウトではあるのですが、日本のGDPは、第一ステップとして、50%が社員の給与、20%が経営者と株主への配分、20%が設備・建物に、10%が税金(政府)に分配されていると理解しておけば、全体感を捉えることができるでしょう。

※実際はその後、第二ステップとして雇用者報酬から所得税・住民税、営業余剰から法人税等が引かれるので、政府部門の取り分はもっと大きくなります。

さらにGDPには3つの目の側面があります。生産され、分配されたお金を、最終的に何に使うか?という「支出面」です。支出面から見たGDPの公式は、数字の集計も比較的にしやすいことから、最もポピュラーです。

GDP約500兆円(支出面)=(C+I+G)+(X‐M)

C=個人消費(約300兆円)
I=企業投資(約80兆円)
G=政府支出(約120兆円)
X=輸出(約88兆円)
M=輸入(約83兆円)

実際には、その他、住宅投資(約16兆円)、在庫変動の数字等も入ってきますが、シンプルに考えれば、この公式でOKです。

(C+I+G)が内需の強さ、(X―M)は外需の強さを反映します。ちなみに生産面=供給サイドに対して、支出面=需要サイドといえます。物価はこの需要と供給の綱引きで決まります(需給バランス)。日本は長年、供給が需要を上回る「需給ギャップ」が解消できず、デフレから脱却できていません。

さて、この公式から個人消費が伸び、企業の設備投資が増加し、公共投資を増やせばGDPは増加することがわかります。また輸出が輸入より増加すれば(貿易黒字が増加)、これもGDPの増加要因となることが理解できるでしょう。

しかしここで大切なのは、GDPは一定期間のフロー(個人で言えば年収、企業なら売上)の概念であるということの認識です。

個人や企業や政府がガンガン借金をして、無駄な消費や投資を増やしたとしても、一時的にはGDPは増加します(GDPは一定期間の量を測るだけで、質を問いません)。

しかし一方で当然そんなことをすれば、個人(家計)、企業、政府の各経済主体の資産内容は悪化します。資産内容の悪化が一線を超えると、借金の返済が最優先になり、消費や投資を控えるようになり、深刻な不況に陥ります。

これを「バランスシート不況」と呼びます。

1990年バブル崩壊後の日本、リーマンショック後の世界経済が、まさしくそうです。そして近年GDPを急成長させてきた中国で、バランスシート不況のリスクが高まっているのかもしれません。

このようにGDPは「生産面」、「分配面」、「支出面」から測定することができ、どの側面から計算してもGDPの数字は一致します。それをGDPの「三面等価の原則」と言います

新聞報道等では、GDPを支出面から捉えることが多いです。時々、他の側面から見ることもありますが、GDPの基本フレームワークを知っておくことで、今まで以上に経済情報の理解度も深まるかと思います。

ただ四半期や1年のGDPの変動や、それによって上下変動する株価・金利・為替等に、長期投資家が一喜一憂することは全くありません。

日本だけでなく、グローバルかつ長期的な視点に立てば、1900年~2000年の人口爆発の世紀ほどでないにしろ、今後も新興国を中心に労働人口は増加しますし、人工知能やロボット等による労働生産性の向上も見込めます。要するに世界のGDPはまだまだ成長余地があるいうことです。

GDPの成長パターンも変化しそうです。世界中でお金の使い方(支出)は「モノからサービスへ」。また21世紀は、20世紀よりも一人当たりの人生の時間が長くなってきます。このあたりをビジネスチャンスにする企業が今後も活躍するでしょう。過去とは異なるパターンでGDPが成長する中で、それを機会に変える企業にしっかり長期投資をしたいものです。

そのためにも弊社ファイナンシャル・アドバイザーは、常に経済を観る眼を鍛え、皆様の資産価値向上に貢献してまいりたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます!

それにしてもGDPだけで、こんなに長い文章になってしまいました。
すみませんでしたー(笑)。

2017年6月13日火曜日

GDP考察(第一回)

日経新聞2017年6月2日 「日銀総資産500兆円を超える~GDP並みに膨張~」

同年6月8日 「日本1~3月期GDPは1.0%増に下方修正~在庫圧縮加速が原因~」

GDPは一国の経済規模を示す代表的な経済指標ですが、以上のように様々な経済関連記事に最も頻繁に登場するといっても過言ではありません。

このGDPを深く知ることは、経済を観る眼を養うことにつながると同時に、
長期投資への理解度をより深めることに役立ちますので、
私の視点から、2回シリーズでGDPについて解説してみたいと思います。

【第一回】

GDP(Gross Domestic Product)=国内総生産
国内で一定期間に生み出された「付加価値の総額」
=国内で一定期間に生産された「最終財・サービスの総額」
※一定期間は1年とか四半期(3ヶ月)

GDP(国内総生産)はその名のとおり、「国内で生産されたものの総額」。
生産という言葉から、目に見える「モノ」のイメージが先行しますが、医療・介護・娯楽等の「サービス」も全て含まれます。一方で主婦の家事や地下経済の取引(麻薬・売春等)は含まれません(この2つを並べ論じるのも大変申し訳ないですが…)。

ということは、良いか悪いかは別にして、家事や介護を家庭でやるのでなく、業者に委託すればGDPの数値は大きくなるということになります。

ところで日本のGDP(1年間の生産総額)は現在、約530兆円。

当然、GDPの中には「様々な財やサービス」があるわけですが、
私はそれを「パン」に集約することでGDPを簡潔に説明することがあります。
皆さんも親戚の中学生や高校生にGDPを教えるような時があれば是非、この手法をご活用ください(笑)。

ここで1兆円=パン1個に換算します。大変高価なパンです(笑)。

日本は年間にパンを約530個生産できる国です。生産規模は世界第3位になります。
世界一の経済規模を誇る米国のGDPは日本の約4倍=パン約2100個、
世界第二位の中国のGDPは日本の約3倍=約1500個。
(私的には、日本500個、米国2000個、中国1500個くらいまで単純化して捉えています。)

ここで少し話を戻しますが、冒頭GDPは「付加価値の総額=最終財・サービスの総額」と記載しておりますが、この意味について、パンの製造工程を例に解説したいと思います。

【パンの製造工程】↓

① 種苗会社が農家に10円で小麦の種を売る。
(付加価値10円)
② 農家は小麦の種を10円で買い、小麦を育て30円で製粉会社に売る。
(付加価値20円)
③ 製粉会社は30円で仕入れた小麦を、小麦粉にして50円でパン屋に売る。
(付加価値20円)
④ パン屋は50円で仕入れた小麦粉からパンを作り、最終消費者に100円で売る。
(付加価値50円)

パンの製造工程(中間財・サービス)で発生した付加価値の合計は100円となり、それは最終消費財のパンの価格100円と等しくなります。

要するに最終財・サービスの合計を計算すると、一国の年間の付加価値総額を捉えることができるということです(中間財・サービスの計算は不要)。

次に経済成長(GDP成長)とは、製造するパンの数を増やすことだと捉えて頂きたい。

パンの数を増やすポイントは2つ。
GDP成長率=「労働人口の成長」×「労働生産性の成長」

パン工場の生産能力を高めるには、「従業員を増やすこと」および「社員教育や機械化やIT化等で従業員一人あたりの生産性を高めること」が重要な要素になるということです。

この単純化したパン工場モデルから、アベノミクスの成長戦略の目標、GDPを500兆円から600兆円にする(パンを500個つくる国から600個つくる国にする)ため、なぜ主婦や高齢者や外国人の労働市場への参加を促しているのか、IOTや人工知能等の技術革命を促す規制緩和等(あまりできてないが…)の位置づけも理解しやすくなるかと思います。

GDP=パンの生産数
GDP成長=パンの生産数を増やす

パンの生産数が増えれば、従業員の給与も増え、飢えや貧困もなくなり豊かになる。よって「経済成長=善」だという側面がある一方で、パンの製造工場をガンフル稼働させると排出ガス等で環境に良くなかったり、パン工場の経営の差が格差社会を生み出したりする負の側面もあります。経済政策においては、そのあたりのバランスがとても難しいことろです。

こんなイメージを持って、GDP関連記事を見てみると面白いかと思います。

次回はこの生産したパンを誰が買って食べるのか(支出面)?とか、
パンの売上をどのように分けるか(分配面)?という観点から、
その昔に学校で習ったであろう「GDPの三面等価の原則」を意識しながら、解説してみたいと思います。

それではまた!!

2017年6月6日火曜日

マーケット・レビュー(2017年5月)

今後、当ブログでは、先月のマーケット・レビューを行います。

定期的に、「世の中の動き」を確認して頂ければ幸いです。
さて早速、下記に先月の主な金融市場の値動きを掲載しました。
「金利、株式、商品、為替」は互いに影響しあって動いています。
ここから、皆さんは何を読み解き、どう感じるでしょうか?
5分で結構なので、是非、下記の数字を見ながら考えてみてください!



■2017年5月の金融市場


【5月末の長期金利】 全体的に長期金利低下。

日本10年国債  0.04% 前月比+0.025% 年初来 変わらず
米国10年国債  2.20% 前月比-0.08%  年初来 -0.24%
ドイツ10年国債 0.30% 前月比-0.023% 年初来 +0.107%
英国10年国債  1.03% 前月比-0.04%  年初来 -0.21%



【5月末の先進国株式】 全体堅調。特に米国ナスダック、ドイツが好調。

日本(TOPIX)  1568.37  前月比+2.4% 年初来+3.3%
米国(S&P500)  2411.80   前月比+1.2% 年初来+7.7%
(ナスダック) 6198.52   前月比+2.5% 年初来+15.1%
ドイツ(DAX)  12615.06   前月比+1.4% 年初来+9.9%
英国(FTSE100) 7519.95    前月比+4.4% 年初来+5.3%



【5月末の新興国株式】 好不調の格差あり。インド好調、ロシア不調。

中国(上海総合)  3117.18  前月比-1.2% 年初来+0.4%
インド(SENSEX) 31145.80 前月比+4.1% 年初来+17.0%
ブラジル(ボベスパ)62711.47 前月比-4.1% 年初来+4.1%
ロシア(RTS)   1050.30  前月比-5.5% 年初来-8.6%



【5月末の商品市況】 原油価格下落、金価格堅調。

WTI原油先物(1バレル)48.32ドル 前月比-1.8% 年初来-10.1%
NY金先物(1オンス)  1272.0ドル 前月比+0.2% 年初来+10.6%



【5月末の為替市場】(+は円安 -は円高)対円で米ドル弱く、ユーロ堅調。

米ドル/円  110.75円  前月比-0.6% 年初来-5.3%
ユーロ/円  124.52円  前月比+2.6% 年初来+1.2%
英ポンド/円 142.82円  前月比-1.0% 年初来-0.9%
豪ドル/円  82.31円   前月比-1.4% 年初来-2.4%



また金融市場は「経済・政治・社会」等の様々な出来事を反映します。

金融市場の動きと、その背景にあるニュースを関連づけることで、長期投資に付随する「ボラティリティ(変動)=価格変動リスク」の要因を知ることができます。このリスクは「リターンの源泉として必要不可欠なリスク」。このリスクからは目を背けるのでなく、その要因を知り、しっかり付き合っていくことが大切です。



■2017年5月の注目ニュース(社会・経済)

3日、ユーロ圏1-3月GDPは年率+1.8%成長。緩やかな回復を維持。
3日、米FRBは金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送る。
5日、米国の4月雇用統計。雇用者数は前月比21.1万人増加(予想18.5万人)。
7日、2016年度、日本の投資信託は14年ぶりに資金流出。毎月分配売れなくなる。
7日、フランス大統領選、中道のマクロン氏が勝利。極右ルペン氏に大差。
8日、フランス大統領選を受け、日経平均が年初来高値を更新。
11日、米トランプ大統領が、FBIのコミー長官を突然解任(ロシアゲート問題)。
12日、2016年度日本の経常黒字が20兆1990億円まで回復(9年ぶり20兆円台)。
13日、日本の上場企業の2018年3月期最終利益は2年連続で過去最高更新の見通し。
14日、新興国株式への投資マインドが回復傾向。中国の財政支出→資源価格上昇。
15日、ドイツ地方選挙、メルケル与党が最大州を制す。欧州政治リスク後退。
18日、日本1-3月GDPは年率+2.2%成長。11年ぶりに5期連続プラス成長。
18日、NYダウ372ドル安、ロシアゲートで政策停滞懸念。
18日、ブラジル株式および為替急落。テメル大統領の汚職疑惑が発覚。
20日、イラン大統領選、核合意順守のロウハニ師が再選。
27日、2017年日本企業の設備投資計画は前年比13.8%増、人手不足への対応急務。
30日、米国の物価は前年同月比1.7%に鈍化、FRBの目標2%に届かず。
30日、アマゾン株1000ドルを突破。1997年上場から20年で株価は約500倍。



5月は世界的に好調な経済指標と企業業績の発表が相次ぎ、経済の堅調さが目立つ一方で、政治面では、好材料と悪材料が目まぐるしく入れ替わる状況でした。

好材料としては、仏大統領選、ドイツ地方選での欧州政治リスク後退、イラン大統領選にて核合意順守の穏健派再選、悪材料として米国の政治リスク(ロシアゲート問題)の増大、ブラジル大統領の汚職等がありました。それを受け世界の株式市場も乱高下しましたが、月間を通してみると、月初高→中旬下落→月末にかけ戻す、という流れとなりました。

そんな状況下、米国アマゾンの株価が1000ドルを超え大きな話題となりました。目先の政治経済の動きと関係なく、社会経済の構造変化と技術革新の波に乗り、そして何よりもアマゾン自身の起業家精神が相まって、株価が20年で500倍に成長した事実こそが、長期投資の本質を捉えているように思えます。