2017年8月22日火曜日

長期志向の会社に長期投資を

長期投資においては、長期的に成長する会社に投資をすることが大切です。

しかし残念ながら、どんな会社も一本調子で成長するなんてことはなく、必ず危機や困難に直面します。

それらを乗り越え、次の成長ステージに移行するには、優れた経営陣、社員、技術、アイディア、製品、サービス、強固な財務基盤、危機を乗り越える企業文化等々、様々なファクターが必要でしょうが、やはり何よりも経営者が長期志向(長期のヴィジョン)を持っていることが最重要だと私は思います。

その長期志向を持つ経営者ですが、やはりサラリーマン経営者よりも創業者(もしくは創業者一族)に多いように感じます。アップル創業者のスティーブ・ジョブスやアマゾンのジェフ・ベゾスがその典型ですが、彼らの興味は、四半期、半期、1年の短期業績などより、ビジネスを通じ、長期的に世の中を変革することにあります。

さてバリューマネジメントは基本的に、長期的に成長する企業の発掘および投資、いわゆる銘柄選択の作業を優れた運用会社に委託していますが、弊社が最も信頼する運用会社キャピタルの評価も高い日本の会社に「村田製作所」があります。

村田製作所は、1944年創業(京都市)の世界的な電子部品会社です。

(2017年3月期の連結売上高1兆1355億円、営業利益2012億円)

電子部品業界は一般的には馴染みが薄い業界ですが、電子部品の製造は、お椀や茶碗等の焼き物をつくることに通じるものがあり、とても職人的だと言われています。世界的に見て、日本の強みが最も活かされている業界だと感じます。

日本の大手電子部品会社6社(京セラ、ローム、村田製作所、日本電産、TDK、アルプス電気)のうち、4社が京都企業というのも決して偶然ではなく、「京焼」などの伝統文化の延長線上に電子部品会社の出現、発展があるのです。

今後、世界経済の潮流としてIOT(モノのインターネット化)が急速に進展する中、スマートフォンの高度化、自動車の自動運転等々、様々な社会的変化が予想されます。

その中で必要不可欠になってくる電子部品、センサーを供給する会社の中でも、同社は優れた技術力を背景に、高い競争力を有しています(特に同社の積層セラミックコンデンサーはスマホやテレビ等の蓄電に欠かせないコンデンサーの小型化、高性能化に成功している)。

そんな同社の村田恒夫社長が、2017年7月10日付日経新聞のインタビュー記事で以下のように語っています。

「一般論でいえば、部品ビジネスは市況性が高いので、いい時も悪い時もあるが、業績が悪化したからといって、投資をやめるようでは競争力はつかない。苦しい時でも、長期的な見通しにたって、新製品の開発投資や工場投資を継続することが大切だと思う。」

この村田社長の長期投資志向が、営業利益率20%の世界的な高収益企業を創りだしているのだと私は思います。

いかがでしょう。私たちの資産運用(長期投資)にも通じる考え方ではないでしょうか?

8月に入り、北朝鮮問題、米国トランプ政権の混迷、スペインのテロ等の政治リスク、地政学リスクの高まりによって、金融市場という市況は悪化傾向にあります。

しかしこのような時期を何度も乗り越え投資を継続することが大切です。そしてそのたびに、私たちの長期投資志向(マインド)は醸成され、それと同時に投資ポートフォリオの長期的な収益力も向上していくのだと思います。

2017年8月9日水曜日

基本を大切に「逞しい資産」を創る

あくまで私見ですが、仕事、勉強、スポーツ等々、何でもそうですが、一般的にやればやるほど情報量も増え、スキルも向上していく一方で、最初に学んだ基本的なことを見失ったり、疎かにしてしまったりするケースも増える気がします。

資産運用についても同様のことが言えます。詳しくなればなるほど、詳しく見れば見るほど、些細なことが気になり、資産運用の成功から遠ざかっていく(資産運用で失敗する)。そんなことが頻繁に起きたりするから厄介です。そういった意味でも、間違ったかたちで資産運用を学ぶことは大変危険です。むしろ学ばなかった方がマシだったりします。

このような事象が起きてしまうのは、人間心理として致し方ないことではあるのですが、なるべくそうならないために、常に「資産運用の基本に立ち戻る」ことが大切です。

例えば「長期投資の基本」として、以下の3つの当たり前のことを、頭に深く刻み込んでおくだけでも資産運用の失敗確率を減らし、長期的な成功に導くことにつながります。

①金融市場の収益(リターン)と変動(リスク)はセットになっているいう認識。

②長い目で見れば金融市場は成長する。そこにリターンはあるという信念。

③リターンに付随する変動は「高い確率で報われるリスク」であるという理解。

実は誰もが自分だけは「リターンだけ欲しい。リスクはいらない。」と、心のどこかで思っていたりします。私自身もそうですが、人間は思った以上に身勝手なのですねー。しかしそんな幸運が起こることを願うのはやはり贅沢すぎるのです。(本当にそれが幸運かは疑問だか…)

「変動があるから成長がある。」「変動がないところに成長はない。」

この事こそが、資産運用に限らず人生全般の基本(原理原則)ではないでしょうか?

例えば子育てにおいて、あまり子供を過保護にし過ぎると、ひ弱な子供に育ってしまうのと同様、資産をあまり過保護にして、変動から守ろうとしすぎると、長期的にはインフレに負けてしまう「ひ弱な資産」になります。

多少変動に晒して、苦しい場面を経験したりすることで、資産は本当の意味で「逞しい資産」となって価値を生み出していくのだと思います。

「 逞しい資産」こそが、皆さんの長い人生を豊かな方向に導くのだと思います(ひ弱な資産では駄目なのです)。

資産運用の仕事を30年ちかくやってきて、そのように感じる今日この頃です。

2017年8月4日金曜日

マーケット・レビュー(2017年7月)

2017年7月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を、まとめて関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。
変動の要因を理解することこそが、マーケット下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと、私は思います。

今月のポイントは、「米ドル安の世界金融経済に対する影響」、「2つの中国(古い中国と新しい中国)」、「米パリ協定脱退後の世界各国の行動」、「世界株式市場の堅調さと一方で台頭する頭打ち感」といったところでしょうか。

それでは下記情報をご確認頂き、「自分としてどう捉えて、そう考えるか? 」

是非お試しください!

■2017年7月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)

2日、東京都議会選で「都民ファーストの会」が第一党になる。自民党惨敗。
3日、6月の日銀短観で「景況感3期連続改善」。輸出・消費が回復。
3日、米国の6月製造業景況感指数は57.8(2年10ヵ月ぶりの高水準)。
4日、米国自動車販売が2017年1-6月期に前年同期比で2.1%減少(8年ぶり)。
5日、インドのデジタル経済規模は今後3.4年で1兆ドルに倍増(IT大臣発言)。
5日、イタリア政府は、不良債権の最大案件だった大手銀行の国有化を決定。
6日、日本とEUは経済連携協定(EPA)の締結で合意。2019年発効へ。
6日、日本の10年国債が0.1%に上昇(欧米の長期金利上昇の影響を受け)。
7日、米国6月雇用者数は前月比22万2000人増(予測17万人)。米雇用堅調。
7日、日本の公的年金(GPIF)の2016年度運用成績が公表される。「+5.86%」。
8日、仏が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の国内販売を禁止と発表。
10日、日本の生命保険各社は、死亡率低下に伴い来春から死亡保険料を下げる。
10日、金利差拡大を受け、円ドルレートが円安に(2ヵ月ぶりに114円台)。
10日、イラク首相が「イスラム国」に勝利宣言。モスル奪還。
11日、中国新車販売が急減速。2017年上半期は3.8%増(2016年+13.7%)。
13日、中国スマホ販売が急減速。2017年上半期3.9%減(3年ぶりに減少)。
13日、FRBイエレン議長が年内にFRB保有資産も縮小を開始すると表明。
13日、ビットコイン(仮想通貨)市場が大荒れ、取引所の分裂騒動や価格急落。
19日、中国4-6月期GDPは+6.9%と予想を上回る(ネット通販が+33%)。
19日、業種別指数「化学株」が過去最高値。旭化成、クラレが上場来高値更新。
20日、日銀物価2%目標を先送り(17年+1.1%、18年+1.5%、19年+1.8%)。
20日、米主要500社の4-6月期は8.5%増益(予想EPS140ドルと過去最高へ)
24日、IMF世界経済見通し2017年+3.5%(米国下方修正、欧州上方修正)。
24日、エジプトでインフレ率が30%に達し、経済が苦境に陥る。
25日、英国も仏同様2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止。
26日、電子部品6社受注が4-6月期15%増と拡大。スマホ高性能化、ゲーム機等。
27日、米ドル指数が1年ぶりの安値。物価上昇の鈍さとトランプ政権への不信。
28日、オバマケア見直しが否決。大型減税、インフラ投資の政権公約も暗礁へ。

■2017年7月の金融市場の動き

【7月末の長期金利】
前半各国で金利上昇も後半低下し、結果変わらず。

日本10年国債  0.08% 前月比変わらず  年初来 +0.035%
米国10年国債  2.30% 前月比変わらず  年初来 -0.14%
ドイツ10年国債 0.54% 前月比+0.11%   年初来 +0.35%
英国10年国債  1.23% 前月比-0.02%   年初来 -0.01%

【7月末の先進国株式】
先月下落のナスダック指数が「IT大手の好決算」で反発。

日本(TOPIX)  1618.61   前月比+0.4% 年初来+6.6%
米国(S&P500)  2470.30   前月比+1.9% 年初来+10.3%
(ナスダック) 6348.12.  前月比+3.4% 年初来+17.9%
ドイツ(DAX)  12118.25   前月比-1.7% 年初来+5.5%
英国(FTSE100) 7372.00   前月比+0.8% 年初来+3.2%

【7月末の新興国株式】
新興国経済と市場にリスクオンの傾向(米ドル安の裏返し)。

中国(上海総合)  3273.03  前月比+2.5% 年初来+5.5%
インド(SENSEX)  32514.94 前月比+5.2% 年初来+22.1%
ブラジル(ボベスパ)65920.36 前月比+4.8% 年初来+9.5%
ロシア(RTS)    1007.14  前月比+0.6% 年初来-12.6%

【7月末の商品市況】
原油価格が大幅反発。金も年初来で1割上昇(米ドルとの相関)。

WTI原油先物(1バレル)50.17ドル 前月比+9.0% 年初来-6.6%
NY金先物(1オンス) 1266.6ドル 前月比+2.1% 年初来+10.1%

【7月末の為替市場】
(+は円安 -は円高)米ドル安、ユーロ高が進展。

米ドル/円  110.24円  前月比-2.0% 年初来-5.7%
ユーロ/円  130.57円  前月比+1.7% 年初来+6.1%
英ポンド/円 145.78円  前月比-0.5% 年初来+1.2%
豪ドル/円  88.23円   前月比+2.1% 年初来+4.6%

以上。