2017年9月22日金曜日

イノベーション

半年前に日本証券アナリスト協会が開催した国際セミナー「資産運用ビジネスの新しい動きとそれに向けた戦略」のパネルディスカッションの中で、農林中金バリューインベストメントCIOの奥野一成氏が「イノベーション」について面白いことをおっしゃっていたので、下記にご紹介いたします。

『日本ではイノベーションは技術革新と訳してしまうが、米国では小さな改善でもイノベーションと呼んでいる。例えば、米国のクロロックス社は、液体状の漂白剤を噴霧状にしたことをイノベーションと称していた。これも社会や顧客の問題を解決した一つの事例といえよう。究極の素材を開発することではなく、顧客の問題解決をすることこそイノベーションであり、顧客とのバリューポイントを大事にしているかという点が重要なことだ。』

私も奥野氏の考え方に賛同します。

そして、ここが日本企業の弱いところだなあーともつくづく思います。
(東芝やシャープのような技術力を持っていてもこの有様です。)

また米国(米国人)がいいのは、やはりこのイノベーションに関する感覚。ちょっとした改善をイノベーションと堂々と言えるところ…ですかね(笑)。

そこで改めて「弊社(バリューマネジメント)にとってイノベーションって何?」と考えてみました。

私的には弊社は資産運用の焦点を、完全に「個人バランスシートの価値向上および保全」に絞りこみ、それを「長期的かつ丁寧にサポートすることにコミットしている」点だと思います。それは結果として、お客様の「信頼すべき資産運用の相談相手(パートナー)」になるということでもあります。

「信頼すべき資産運用の相談相手(パートナー)」

世界有数の金融資産大国日本において、これほど不足しているものはあるでしょうか?「需要と供給のミスマッチが甚だしいにもほどがある」と言っても言い過ぎではないかと思います。

今まで日本には本当に資産運用を信頼して相談できる先がなかった。(専門性の欠如であったり、利益相反であったり、過剰な手数料商売であったり、理由は諸々)

今後も人生100年時代などと言われる一方、年金だけでは引退後の生活は成り立たない、よって長期的な視点で資産運用管理をしなければならないのに、日常の仕事は忙しく、専門的な資産運用の勉強を膨大な時間をかけてやることが効率的か疑問であるし、と言って簡単に自分の大切な資産を既存の証券会社や銀行に相談をしていいものだろうか?

そんな問題の解決を図るのが、弊社のイノベーション。
個々人の資産価値向上のみを目的とした資産運用会社=パーソナル・アセットマネジメント・カンパニー。それが弊社のコンセプトです。

通常、今までの資産運用会社(例えば、野村アセットマネジメントや大和投信等)は、不特定多数の人のお金を集めて、何か儲かるものに投資をするというスタイルでここまできました。一般的に運用会社は個々のお客様の個別特性を考慮することはありません。預かったお金をルールに基づき増やすことだけが使命と言えますし、実はそれでOKです。

本来、お客様の個別特性を考慮すべき、金融機関は証券会社や銀行だと思いますが、完全にお客様サイドに立つことはビジネスモデル上、相当困難であることは、おそらく現場の方が一番分かっているような気がします。

バリューマネジメントはビジネスモデル上、お客様の長期的な資産価値向上にコミットメントすることだけに集中できるかたちになっているので、そこもイノベーションを起こすのに有利な点だと思っています。

まあとにかく、小さな改善でもイノベーションです。

あまり大きなことばかり考えず、毎日コツコツと会社や家庭で何かしらイノベーションを起こしていきたいものです(笑)。

2017年9月12日火曜日

風が吹けば…

先日、日経新聞に来年「パナソニック」が100周年を迎えるという、大きな広告が掲載されていましたが、やはりパナソニックと言えば、経営の神様である創業者松下幸之助を抜きに語ることはできません。

創業者松下幸之助の意志が、100年継続するパナソニックの根っこにあり、また社会に必要とされ貢献しなければ、100年も続けることは絶対にできないことを考えると、心から「おめでとうございます。」と申し上げたい気持ちになります。

私も会社経営者の端くれとして、時々思い出したように(大体は仕事で思い悩んだ時ですが)、松下幸之助氏が昭和43年から連載していた短文をまとめた「道をひらく」という文庫本を読んでいます。今でも大きな本屋さんに行くと、結構売れているようです。ベストセラーなので読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

さて今回パナソニック100周年の新聞広告を見て、私も改めて読んでみましたが(3年ぶりくらいかなー)、やはり名著は何度読んでも、常に新しい気づきがあるものです。本の内容は変わらなくても、自分自身の状況や変化や成長によって読むポイントも微妙に変わってくるからなのでしょう。

最近は「市場変動と投資家の行動心理との相関」に興味が深いせいか、印象に残ったのは…「風が吹けば」というタイトルの文章でした。



「風が吹けば」

風が吹けば波が立つ。波が立てば船も揺れる。

揺れるよりも揺れないほうがよいけれど、

風が強く波が大きければ、何万トンの船でも、

ちょっと揺れないわけにはゆくまい。

これを強いて止めようとすれば、かえってムリが生じる。

ムリを通せば船がこわれる。

揺れなければならぬときには揺れてよかろう。

これも一つの考え方。

大切なことは、うろたえないことである。あわてないことである。

うろたえては進路を誤る。そして沈めなくてもよい船でも、

沈めてしまう結果になりかねない。

(以上本文から一部抜粋)



皆さんは読んでみてどう感じましたか?

私はこの文章は、長期投資に付随する短期変動への心構えとして、あるべき姿を見事に表現していると思います。いや投資だけでなく、仕事や生活や人生全般に通じる普遍的な心構えです。

「変動を無理に回避すること」を最新の金融工学で商品化したのが「サブプライムローン債券」や「仕組債」と呼ばれるものであり、その崩壊の結果が2008年のリーマンショックであったと私は捉えています。

私自身も改めて「風が吹けば」を読み、お客様の長期投資と共にある「バリューマネジメントという船」を沈めないために、文中にもあるよう「うろたえないよう、あわてないよう」頑張っていきたいと、心を新たにした次第です。

それでは皆さん、引き続きよろしくお願いいたします!

2017年9月5日火曜日

マーケットレビュー(2017年8月)

2017年8月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に、「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。それがマーケット下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと私は思います。

今月のポイントは、「堅調さを保つ世界経済および企業業績」(好材料)VS「米国の内政・災害リスク、スペインのテロ、北朝鮮問等の地政学リスク)」(悪材料)。この2つの綱引きで、金融市場は動くに動けない状況。それをどう見るかといったところでしょうか?

特に先進国の長期金利が、この1カ月でかなり低下したところに、市場参加者の先行きに対する警戒感の強さを感じます。

それでは下記情報をご確認頂き、自分としてどう捉えて、どう考えるか?

「是非お試しください!」


■2017年8月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)

1日、ユーロ圏2017年4-6月GDPは、年率2.3%成長。内需主導で堅調。
1日、米国物価は4カ月連続鈍化。6月は前年比+1.4%、FRB目標+2%を下回る。
1日、米アップル4-6月期決算は12%増益。iPhoneの大画面モデル堅調。
2日、NYダウが初の22,000ドルの大台へ。アップルの好決算を好感。
4日、米国自動車販売7ヵ月連続減少。これは構造的な問題?(ライドシェア台頭)
4日、7月米雇用統計で雇用者数は+20.9万人。市場予測18万人を上回る。
8日、日本の2017年上期経常収支は10.5兆円の黒字。リーマン危機後最大。
9日、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功したという報道が原因で「円高、株安」に。
10日、日本の公募投信の7月末残高が102兆円に。2年ぶりに最高値更新。
10日、北朝鮮問題の緊迫化で「VIX指数(恐怖指数)」の売買高が過去最高に。
11日、中国が通貨・人民元の切り下げを行ってから、ちょうど2年が経過。
12日、日本企業2018年3月期決算、純利益+13.6%増予想(3%程度上方修正)。
14日、仏マクロン大統領が就任3ヵ月。歳出削減等の政策が不人気で支持率急落。
14日、日本2017年4-6月GDPは+4.0%(予想+2.4%)。消費と投資が堅調。
15日、トランプ大統領の白人至上主義を巡る発言「双方に非がある」が大問題に。
16日、中国ネット大手アリババが、日本でスマホの電子決済サービスを始める。
18日、スペインのバルセロナでイスラム過激派によるテロが起きる。
18日、米トランプ大統領はバノン主席戦略官を解任。政権の混乱収束みえず。
22日、世界最大のHF(ブリッジウォーター)が、政治リスクから米国株弱気に。
22日、インドネシア利下げ実施。他の新興国も金融緩和の動き(先進国と反対)。
23日、米小売り大手ウォルマートとグーグルがネット通販で提携(VSアマゾン)。
25日、日本物価じわり上昇。7月の物価は前年同月比+0.5%(7ヵ月連続上昇)。
25日、米国ハリケーン「ハービー」直撃。トランプ政権の危機対応能力試される。
29日、北朝鮮が弾道ミサイル発射、日本上空を通過。日米韓、緊急安保理を要請。

 

■2017年8月の金融市場の動き

【8月末の長期金利】

米欧が量的緩和縮小に向かう段階に及んでも、長期金利は上昇するどころか下落している。米国で車が売れなくなっている背景にシェアリングエコノミーの進展等の構造問題があると言われるが、長期金利が上昇しないのも構造問題なのだろうか?それは今のところ判断するのは正直難しいところだと感じる。

日本10年国債  0.01% 前月比-0.07%  年初来 -0.03%
米国10年国債  2.11% 前月比-0.19%   年初来 -0.33%
ドイツ10年国債 0.36% 前月比-0.18%  年初来 +0.17%
英国10年国債  1.03% 前月比-0.2%   年初来 -0.21%


【8月末の先進国株式】

株式市場は、好調なマクロ経済、企業業績を背景に堅調だが、全体として膠着状態に突入。世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター」の創業者レイ・ダリオが、「政治リスクがかつてないほど高まっている」と継承を鳴らしたり、北朝鮮の行動がエスカレートしていたり、スペインでテロが起きたり等の地政学リスクの高まりから、株式市況の変動率も高まっている。

日本(TOPIX)  1617.41  前月比-0.1% 年初来+6.5%
米国(S&P500)  2471.65   前月比+0.1% 年初来+10.4%
(ナスダック) 6428.66  前月比+1.3% 年初来+19.4%
ドイツ(DAX)  12055.84  前月比-0.5% 年初来+5.0%
英国(FTSE100) 7430.62  前月比+0.8% 年初来+4.0%



【8月末の新興国株式】

新興国市場の最大の懸案事項は、米国の量的緩和縮小による米ドル高で、自国通貨が大幅下落してインフレ率が高まり、またドル建ての借金の負担が重くなることで、社会・政治・経済が不安に陥ることだと思う。しかし足元では逆に米ドルが安くなり、自国通貨も安定していることから、景気回復に軸足を置いた政策(金融緩和策等)が可能になっている。その結果、株式市場も堅調に推移している。

中国(上海総合)  3360.81  前月比+2.7% 年初来+8.3%
インド(SENSEX) 31730.49 前月比-2.4% 年初来+19.2%
ブラジル(ボベスパ)70835.05 前月比+7.5% 年初来+17.6%
ロシア(RTS)   1007.14  前月比+8.8% 年初来-4.9%



【8月末の商品市況】

米国トランプリスクの高まりにおける米ドル安、そして北朝鮮等の地政学リスクの受け皿に、「金というアセットクラス」は健在のようである。ビットコイン等も受け皿的になっている感もあるが値動きが荒すぎるので、やはり「有事の金」ということであろう。原油価格は先月大幅反発の反動で下落。

WTI原油先物(1バレル)47.23ドル 前月比-5.9% 年初来-12.1%
NY金先物(1オンス) 1316.2ドル 前月比+3.9% 年初来+14.5%



【8月末の為替市場】(+は円安 -は円高)米ドル安、ユーロ高が進展。

為替市場では、米ドル安が進捗。トランプ政権下の米国通貨「ドル」への信認がすぐに揺らぐことはないと思うが、黄色信号が点滅しているような印象を受ける。円が日本の国内要因で積極的に買われることはなさそうだが、外部要因、例えば更なる米ドル安によって、もしくは今年高くなっているユーロが安くなること等に起因とする円高リスクはあるとみる。

米ドル/円  109.97円  前月比-0.2% 年初来-5.9%
ユーロ/円  130.96円  前月比+0.3% 年初来+6.4%
英ポンド/円 142.20円  前月比-2.5% 年初来-1.3%
豪ドル/円  87.39円   前月比-1.0% 年初来+3.6%

以上