2017年10月24日火曜日

資産運用と心理学

個人的に毎年10月の楽しみといえば、野球のポストシーズンです。

メジャーリーグのワールドシリーズ、特に今年はロサンゼルス・ドジャースのダルビッシュ有、前田健太の両投手の活躍に期待したいです。また横浜在住で広島カープファンの私としては、セ・リーグのクライマックスシリーズ「広島カープVS横浜DeNAベイスターズ」を今まさに、複雑な想いで観ております(笑)。

もう一つ、毎年10月に注目する出来事があります。それはノーベル賞の発表。

昨年はノーベル文学賞をシンガー・ソングライターのボブ・ディラン氏が受賞して話題になりました。今年も日本の季節の恒例行事ともいえる「今回こそ村上春樹」いう期待も高まる中、ノーベル文学賞は日系英国人のカズオ・イシグロ氏ということで、こちらも大変話題になっているところです。また今年は、化学や物理学等の理系分野で、日本人の受賞がなかったのは残念でした。

そして何といっても、私の専門でもあるところで、注目すべきは経済分野です。
今年のノーベル経済学賞は「行動経済学」で有名な米シカゴ大学のリチャード・セイラー氏に決まりました。合理的な経済学の意思決定の分析に、心理学(人間の感情等)に基づく現実的な仮定を組み込んだ功績を讃えられての受賞です。

彼のアプローチは、1990年ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ氏の現代ポートフォリオ理論(市場は効率的であることを前提に、統計的かつ合理的に経済活動や資産運用を捉えた理論)とは一見正反対のように見えるのですが、この対照的な2人が、シカゴ大学で学び研究をしていたこと、そして同じくノーベル経済学賞を受賞したことが、私にはとても面白く感じられます。

ところで「資産運用はサイエンス(科学)でもあり、アート(芸術)でもある」という言葉がありまして、実は一見正反対に見えるこのお二人の理論は、どちらが正しい、正しくないという話ではなく、実際の資産運用の実務においては、両方の側面が必要不可欠だと感じます。

弊社でもお客様の資産運用を適切なかたちでサポートしていくうえで、合理的なポートフォリオ運用のフレームワークを提供すると同時に、お客様の価値観、性格、感情、リスク耐性のような漠然とした合理的でないものを、どのようにポートフォリオに反映させるか考えます。特に資産運用に付随する価格変動に影響を受ける感情が、誤った投資行動を引き起こさないよう、とても注意を払っています。

また長年にわたる資産運用実務の中で、資産運用で成功するための「人格や性格や心構え」のようなものが、確かに存在すると感じます。

それが何かを理論的に確認するうえでもセーラー教授の行動経済学を代表とする「資産運用と心理学の関係性」は大変興味深い分野です。

資産運用においては、市場の価格変動(上であっても、下であっても)によって、心が揺さぶられ、心配になった時に、誤った意思決定をする可能性が一番高くなります。

そんな時にこそバリューマネジメントのファイナンシャル・アドバイザーにご相談ください!適切なアドバイスで正しい意思決定ができるよう、しっかりサポートさせて頂きます。

2017年10月12日木曜日

「吉田カバン」と「フェラーリ」

先日、日経新聞のコラムで、吉田カバンの吉田社長が「商品を値下げしない誇りを」というお話をされていました。(街を歩いていると、吉田カバンのPORTERシリーズの鞄を愛用しているビジネスマンも結構多いように感じます。)

【以下、吉田社長のお話の抜粋・要約】

「私たちは原則として値下げをしないという信念があり、お客様やものづくりの現場を大切にしたいと思っている。」

「なぜ値下げをしないのか?それは定価で買ってくださったお客様に大変申し訳ないからだ。自分が定価で購入したものが値下げされているのを見れば、悔しい思いに駆られるだろう。」

「値下げをすることは、長年我々が大切に育ててきたブランドイメージを崩すことになる。さらに大事なのは、縫製職人さん、部材屋さん等、商品に関わってくれた全ての心ある人々の結晶が商品であるということだ。このような大切なものを簡単に値下げで処分することはできない。」

また他日の日経新聞では、超高級車で有名な「フェラーリ」の記事が掲載されていました。

世界的にAI(人工知能)による自動運転やEV(電気自動車)の普及が本格化してきそうな状況下、既存の自動車会社の株価は低迷し、逆に新興勢力(グーグルなどのIT企業や電気自動車のテスラ)の株価は大きく上昇していますが、その中で異彩を放っているのがフェラーリ。同社は2015年10月に米国株式市場に上場していますが、2017年の株価上昇率は+97%(8月末時点)にものぼります。(ちなみにEV大手テスラは+67%、フォードモーターは-10%)

フェラーリの車づくりは職人的で、自動車業界で最もITなどの技術革新から遠い存在と言われています。そして年間1万台未満しか生産・販売しないことで、強固なブランド力を保ち、株式市場もそれを高く評価しています。

様々な工夫や努力で製品やサービスの価格を下げ、幅広い消費者の生活を楽にすることは大変意義がある一方、長期的に、値下げ競争は商品やサービスの質を劣化させ、企業を弱体化させ、結果として消費者の生活を脅威にさらすことになりかねません。

「いい製品をつくり、いいサービスを提供して、お客様に満足して頂き、適正な価格を快く支払って頂ける。」それが企業の理想の姿だと私は思います。吉田カバンとフェラーリは、業種は違えど、その理想の姿を体現しているように思います。

話は変わりますが、資産運用業界はどうでしょうか?

来年から制度が始まる「積立NISA(年間40万円まで20年間非課税)」では、金融庁主導で商品(投資信託)のラインナップに厳しい制限が入りました。

積立NISAのコスト面の条件は販売手数料がゼロ、保有時にかかる信託報酬は国内資産で運用するインデックス投信の場合、0.5%以下、アクティブ投信で1%以下です。実際、大多数の運用各社は金融庁のご威光に逆らうことなく、信託報酬(運用報酬)を急激に下げ、国内インデックスファンドでは平均で0.27%くらいになっているようです。

過去の日本の、投資信託の短期売買等で投資家から過剰かつ不当な手数料を搾取したいたと言われても仕方がない歴史を考えると、投資家を守る金融庁の姿勢もわからなくはありませんが、それが本当に正しい姿かと言えば疑問です。

実際、数少ない気骨ある運用会社は、この手数料値下げ競争に意義を唱え警鐘を鳴らしています。私としては、これらの運用会社こそが、運用業界の吉田カバンであり、フェラーリなのだと感じますし、信頼できる運用会社だと思います。

またコスト競争の背景には、日本は米国に比べて資産運用コストが高いという議論があります。しかしそれは一面において正しいのですが、ある面では正しくありません。

なぜなら米国の投資家の多くは、運用商品に係る手数料等に他に、ファイナンシャルアドバイザーに預かり資産の1~2%程度を別途毎年支払っているからです(ネットで自分でやる場合は別)。

よって日米の金融商品単体のコストだけを比べるのはナンセンスです。一方で、残念ですが日本においては、アドバイスに係る報酬(アドバイザリーフィー)も含む資産運用コストが、金融商品の中に内包されていて解りづらいのも事実です。

弊社は、以前から金融商品仲介業の仕組みの説明を通じて、皆様に支払って頂いている資産運用のコストとその対価としてのサービスを丁寧にお話しさせていただいております。

今後も弊社は、「安かろう・悪かろうの罠」に陥ることなく、吉田カバンやフェラーリのような価値観を持って、パーソナル資産運用サービスを進化させていきたいと思います。それによって、皆様の資産運用コストが納得できるものになるよう努力を継続してまいります。

…ということで、今後ともよろしくお願いいたします(笑)。

2017年10月4日水曜日

マーケットレビュー(2017年9月)

2017年9月(前月)の金融経済レビューをいたします。

直近1カ月分の「社会・経済のニュース」と「金融市場の動き」を関連付けて観ることは、「金融リテラシーの向上に役立つ」と同時に、「長期投資に付随する変動(ボラティリティ)の要因を理解すること」につながります。それがマーケット下落時もしっかり投資に向き合うことができる秘訣だと私は思います。

先月前半は北朝鮮問題や米国のハリケーンの影響からリスクオフの円高が進捗。一時107円台まで突入し株式市場も低調に推移しましたが、後半に米国FRBが量的緩和の縮小、またトランプ大統領と共和党が30年ぶりの大型減税策を発表したことで、円安ドル高に、また株式市場も先進国を中心に上昇しました。

個人的には、英国のダイソンが電気自動車に参入することに大きなインパクトを受けました。フランス、英国、中国がガソリン車の廃止を決定した中、今まさに世界は産業構造の大きな変曲点にいるのだなあーという実感があります。国際情勢や政治が不安な状況下、世界的に企業業績は堅調です。その背景には単なる景気循環ではなく、経済の仕組み・モデル・ルール等が大きく変わる中で、さらなる成長の芽があちらこちらに生まれてきている事実がある気がします。私たちはその成長の芽を、優良ファンドと通じて皆さんのポートフォリオの中にしっかり届けていかなければならないと思っております。

さて、それでは下記情報をご確認頂き、自分としてどう捉えて、どう考えるか?
「今月も是非お試しください!」

■2017年9月、IFA中浜祐士が注目したニュース(社会・経済)
1日、ユーロ圏の8月消費者物価指数(コア指数)は前年同月比+1.2%。
1日、米国物価は5カ月連続鈍化。7月は前年比+1.4%、目標+2%を下回る。
1日、8月の米雇用統計15.6万人増(市場予測18万人を下回る)。
3日、世界の上場企業の税負担率が10年前の27.8%から24.6%に低下。
3日、アジア各国の政府・中央銀行の外貨準備高(7月末)が過去最高水準。
3日、北朝鮮がICBM用水爆実験を断行。爆発規模は過去最大。
6日、米大統領は不法移民在留許可制度を撤廃。経済損失は4063億㌦と試算。
6日、米債務上限上げについて合意(12月まで)。債務不履行ひとまず回避。
7日、ECB(欧州中銀)は、来年からの金融緩和縮小を10月に決める考えを発表。
8日、円高加速107円台に突入。米ハリケーン「イルマ」北朝鮮情勢でドル売り。
11日、財務省は、日本郵政株式の月内追加売却を発表。株価は公開後低迷。
11日、国連安保理は北朝鮮への追加制裁を採択。
12日、中国がガソリン車禁止に関して、具体的な導入時期の検討に入った。
12日、米アップル社は、アイフォーンの新機種Xを発表。
13日、7-9月の大企業景況感指数は2期ぶりにプラスに転じる。景気堅調。
19日、日経平均2年ぶりに高値更新。衆議院解散、米国緩和縮小を材料に円安。
19日、三菱UFJは国内の事務作業の自動化で9500人分の労働量削減と発表。
19日、米トイザラスは破産申請。アマゾンにシェアを奪われる。
20日、任天堂9年ぶりに時価総額6兆円を回復。業績不振から回復。
20日、米FRBが「量的緩和の縮小」を10月から開始すると発表。
21日、日銀は金融決定会合で「金融緩和の維持」を決定。
21日、外国為替市場で英国ポンドが利上げ観測で1年3ヶ月ぶりの高値水準へ。
24日、独総選挙でメルケル与党勝利(メルケル首相4選)するも、議席大幅減。
25日、安倍総理が28日に衆議院解散を表明、10月22日投票日。
26日、英家電大手ダイソンが2020年までに電気自動車に参入すると発表。
27日、米大統領と共和党は30年ぶりの大型減税案を発表、今後議会で審議。
28日、東芝は、日米韓連合と半導体部門(東芝メモリ)の売却契約を締結。
30日、日本製造業の雇用者数が7年ぶりに1000万人超に(国内回帰)。
30日、中国のPMI(製造業景気指数)が5年5ヶ月ぶりの高水準に。

■2017年9月の金融市場の動き
【9月末の長期金利】
欧米の金融緩和縮小、英国はインフレから利上げ予想で長期金利は上昇。

日本10年国債  0.06% 前月比+0.05%  年初来 +0.02%
米国10年国債  2.33% 前月比+0.22%  年初来 -0.11%
ドイツ10年国債 0.47% 前月比+0.10%  年初来 +0.28%
英国10年国債  1.35% 前月比+0.32%   年初来 +0.11%

【9月末の先進国株式】
日欧企業業績が堅調で株価上昇、年初来水準で米国をキャッチアップする状況。

日本(TOPIX)  1674.75  前月比+3.5% 年初来+10.3%
米国(S&P500)  2519.36   前月比+1.9% 年初来+12.5%
(ナスダック) 6428.66  前月比+1.0% 年初来+20.7%
ドイツ(DAX)  12828.86  前月比+6.4% 年初来+11.7%
英国(FTSE100) 7372.76  前月比ー0.8% 年初来+3.2%

【9月末の新興国株式】
米国の量的緩和縮小を警戒して新興国市場の上昇は全般的に一服。ブラジルはインフレは利下げ期待から大幅続伸。

中国(上海総合)  3348.94  前月比ー0.4% 年初来+7.9%
インド(SENSEX) 31283.94 前月比-1.4% 年初来+17.5%
ブラジル(ボベスパ) 74293.51 前月比+4.9% 年初来+23.4%
ロシア(RTS)    1136.75  前月比+3.7% 年初来-1.4%

【9月末の商品市況】
金はリスクオフ懸念の後退で下落、原油価格は相変わらず変動が大きいが、45ドル~55ドルのレンジを行ったり来たりしている状況、強弱材料が綱引き。

WTI原油先物(1バレル)51.67ドル 前月比+9.4% 年初来-3.8%
NY金先物(1オンス) 1281.5ドル 前月比ー2.6% 年初来+11.4%

【9月末の為替市場】(+は円安 -は円高)
金融政策の違いから円安進捗。特に英国ポンドが大きく上昇。

米ドル/円  112.51円  前月比+2.3% 年初来-3.7%
ユーロ/円  132.99円  前月比+1.5% 年初来+8.1%
英ポンド/円 150.76円  前月比+6.0% 年初来+4.6%
豪ドル/円  88.24円   前月比+1.0% 年初来+4.6%

以上。