2018年6月28日木曜日

テクノロジーと格差問題

627日付ヤフーサイトに、気になる記事が掲載されておりましたのでご紹介します。

インド全域に「高速インターネット」の衝撃、7兆円の経済効果をもたらす

(以下記事から一部抜粋)
インドにおいて、20193月までにすべての村落に高速ブロードバンドを提供する一大プロジェクト「バーラトネット」が推進されている。これによってブロードバンドユーザーが数億人単位で激増し、国民の生活水準が向上すると期待されている。13億の人口を有するIT大国インドが、その広大な国土にITを普及させる本気の取り組みとは・・・・。


さて詳細の内容については省略しますが「今後の世界経済の成長のかたち」を予感させる記事だと、私は思いました。

1989年に東西冷戦が終結し、1990年代中頃から後半にインターネット時代が到来。経済のグローバル化は加速し、製造業のサプライチェーンは効率的な進化を遂げ、また金融面ではタックスヘイブンを活用した大企業・富裕層の節税(脱税含む)が横行しました。

このような経済・金融のグローバル化の結果、その恩恵を受けた人とそうでない人が出てきてしまい、世界中で個人の経済格差が拡大しました。

その反動によって政治の世界では「反グローバリズム」が台頭。
米国でトランプ大統領が誕生したのは、その象徴と言えるでしょう。

のトランプ大統領ですが、今まさに世界中に貿易戦争を仕掛けています。米国に雇用を取り戻し、強いアメリカを復活させるためかもしれませんが、実際に経済のグローバル化の恩恵を最も受けてきたのは米国企業です。よって彼の反グローバリズム行動は、米国経済に全くメリットはなく、逆に弱いアメリカにつながっていくことになりかねません。

よって、この勝者なきチキンレース(貿易戦争)が、長期間続くことは想定しづらいところではあります(誰にもメリットはないのですから・・・・)。

さて話題を戻してインドです。

インドは豊富な人口を有し、また優秀なエリート層も存在しますが、貧富の格差がとても大きい国(社会)です。また先進国と比較すると、道路や鉄道や通信のインフラもまだまだ充実しておらず、それが経済発展や社会の安定の妨げになっています。

そうした状況下における、今回の「インド全土にわたる高速ブロードバンド計画」。
このプロジェクトは、インド国民の情報と教育の平等化と高度化に寄与し、格差縮小と経済発展を両立させるきっかけになる可能性を秘めています。

テクノロジーの発展が助長した格差拡大ですが、個人的には、今度はさらに進化したテクノロジーとその適用範囲の拡大によって、逆に格差を縮小させていく段階に入ってくるのではないかと期待したいところです。

今後は同様のケースが他の国地域でも起こり、それが新たに世界経済の成長エンジンになっていくのではないでしょうか。そして世界経済のイノベーションも米国(シリコンバレー)の一極集中から、世界の複数のエリアから起きる分散の時代(多極化と言ってもよい)になっていくことでしょう。

そしてこのような変化の中、最近、様々な社会的問題の解決に挑戦する意志を持った新しい会社が出てきていると感じます。

それはリーマンショック後、世界各国の財政が悪化し、政府部門が社会的問題の解決を積極的に取り組むことが困難になる中、民間企業が新たなテクノロジーを武器に挑戦していこうといく潮流に他なりません。

世界経済は新たなステージに突入しつつあり、そこに新たな投資機会の芽が育ちつつあります。「この流れが10年後、20年後の世界をどう変えていくのか?」

長期投資の視点から見ても、大変興味深く、頼もしく感じる今日この頃です。

2018年6月22日金曜日

納得感

長期投資を行うということは、自己資産の一部が「世界経済の成長(および変動)」や「様々な国際情勢」と直接的につながり、その影響を長期間にわたって受け続けることを意味します。

世界経済を10年単位で見ると「人口増大」や「技術革新」を背景に、高い確率で成長することが予想されますが、短期的には悪化(鈍化)する時期もあります。

10年投資をすると、少なくとも2回くらいは、それなりの景気後退期に遭遇するでしょうし、そういう局面では当然、株式等のリスク資産の価格もそれなりに下落します。

残念ながら、そんな時に慌てたり、不安が高まったりして、将来的に価値を生み出すであろう「良質な投資ポートフォリオ」を手離してしまう(売却する)人がいます。

長期投資の脱落者がなるべく出ないよう、難しい時期も丁寧な情報提供に努め、しっかりサポートをしていくのがファイナンシャルアドバイザーの役目ですが、極度に不安が高まる局面では、どうしても理論より感情が先立ち、解ってもらえないケースもあります。

「まさしく10年前のリーマンショックの時がそうでした。」

当時、私が担当するお客様の一部が、厳しいマーケット環境に我慢できず、底値近辺もしくは、その後に元本が回復した時点で売却をしてしまいました。

私はそれを止めることができませんでした。あそこで我慢してポートフォリオを維持していたら、現在どれだけの経済効果があっただろうかと思うと、今でも後悔の念が残ります。

「なぜそうなってしまったのか?」

「それらのお客様がリスクに弱いタイプだったからなのでしょうか?」

正直、実際そういう側面もあろうかと思います。しかしそれ以上に思うのが、実はほんとうは、それらのお客様は、私が提案した投資ポートフォリオへの信頼、もう少し言うならば「真の納得感」が心の奥底で足りていなかったのだと思います。

それはファイナンシャルアドバイザーとして、私が未熟だったからに他ならないと思っています。

この経験を経て、私がお客様の長期投資をサポートする際に、最も重点を置くのが「お客様の納得感」です。

いくら良質な投資ポートフォリオでも、世界の政治・経済・金融市場の変動から影響を受けないでいることはできません。そこでお客様が真に納得して投資していなければ、変動に惑わされ、誤った意思決定をしてしまう可能性が高くなってしまうのです。

その点を理解、共有したうえで、お客様の人生設計、価値観、性格、家族構成、財務状況、リスク許容度等を十分に考慮して「納得できるかたちで長期投資に臨める体制」をつくれるならば、これからも何度となく訪れるであろうマーケットの変動を乗り越え、長期投資を成功させることができるでしょう。

そしてその運用実績に加え「長期投資のプロセスで培われるマインド」が、必ず皆さんの豊かな人生の一助になっていくであろうと私は思います。

もちろん長期投資は100%の成功を保障するものではありませんし、下落局面についても受け入れなければならないわけではありますが、一方で長期の複利効果を活用することで、資産価値を飛躍的に高める可能性も秘めています。

その事実と可能性に対する納得感を持てるかどうか?

また昨今、ビッドコインや新規公開株の一部にみられる「投機的な短期志向」とは真逆の「ライフスタイルも含めた長期志向を持つことへの納得感」があるかどうか?

皆さんにも、今一度考えて頂きたいと思う今日この頃です。

2018年6月7日木曜日

マーケットレビュー(2018年5月)


今月も、先月の経済・金融の振り返りを致します!

足元の世界経済は(米中日を中心に)景気拡大基調が続いていますが、年初と比較すると勢いに欠けています。また最近では、欧州と新興国の一部に顕著な減速感が見られ、世界経済を天気に例えると「晴れのち曇り」という感じでしょうか。

一方で世界の金融市場、5月前半は米国株式を中心に堅調でしたが、後半は米国の保護貿易政策による世界貿易の縮小懸念(実際に縮小しつつある)、米国金利高に端を発した新興国経済(アルゼンチンやトルコ)の苦境、イタリアでEU懐疑派の政権が誕生等々、マーケットに対して悲観的な材料が満載で、リスクオフの相場展開を余儀なくされました。

為替市場ではリスクオフから、米ドルが上昇しユーロが急落しましたが、米ドル以上に買われたのが日本円です。年初からの円高は、弊社のお客様の国際分散投資ポートフォリオにもマイナス要因ですが、為替はあくまで交換レートであり、それ自体が何かの価値を生み出すわけではありません。長期的には為替変動よりも、やはりグローバルな視点で価値を創出する投資機会にアクセスすることが肝要です。


【先月のポイント】

    米トランプ大統領が政権の実績作りに躍起になっていることが、世界経済と国際政治を混乱させています。トランプ大統領の動きのベースにあるのは「11月の中間選挙に勝つこと」のみにあるようにも感じます。イラン問題、北朝鮮問題、中国との貿易戦争、全て選挙に勝つためというのは言い過ぎでしょうか?

    トランプ大統領が仕掛けた保護貿易政策の影響を最も受けているのが欧州だと思います。それに加え南欧(イタリア・スペイン)の政局不安も相まって、堅調だった欧州経済に減速感がでてきました。ユーロ安はそれを反映しながらも、逆に貿易面では有利になることによって、今後の欧州経済を下支えする要因にもなります。

    米国長期金利が一時3.13%まで上昇し米ドル高も進捗しました。その影響もあって新興国金融市場が波乱の状況に陥りました。ブラジル株式市場は先月10%を超える急落、アルゼンチンは金融不安で通貨安となり金利が年率40%まで急上昇。その他、米国の経済制裁が強化されたイラン、政情不安のトルコも厳しいです。しかしながら、このような状況をどのように見るかがポイントです。波乱の中には常に将来の投資機会が潜んでいる。長期投資においては、そのような視点を持つことが大切です。

    日本の1-3GDP9四半期ぶりにマイナス。景気拡大は足踏み状態ですが、堅調さは保っており、現状では今後悪化するという感じではありません。賃金も前年比+3.2%と約20年ぶりの上昇を示し、デフレ脱却の可能性もでてきています。しかしながら国内政治は相変わらずモリカケ問題ばかりで、グローバル経済・政治における日本の存在感が希薄にありつつある現状には、大変危機感を覚えます。


【金融市場の動き】

(5月末の長期金利)
日本10年国債  0.03%     前月比-0.02%  昨年末比 -0.02
米国10年国債  2.86%     前月比-0.09%  昨年末比 +0.46
ドイツ10年国債  0.34%     前月比-0.23%  昨年末比 -0.09
英国10年国債  1.22%     前月比-0.02%   昨年末比 +0.04
  
(5月末の先進国株式)
東証株価指数  1747.45    前月比-1.7%  昨年末比-3.9
米国S&P500   2705.27   前月比+2.2%  昨年末比+1.7
米国ナスダック  7442.12    前月比+5.3%  昨年末比+7.8
ドイツDAX   12604.89  前月比-0.1%  昨年末比-2.4
英国FTSE100  7678.20   前月比+2.2%  昨年末比-0.1
  
(5月末の新興国株式)
中国上海総合    3095.47   前月比+0.4%   昨年末比-6.4
インドSENSEX   35322.38  前月比+0.5%   昨年末比+3.7
ブラジルボベスパ  76753.61   前月比-10.9%   昨年末比+0.5
ロシアRTS     1153.96   前月比+0.8%   昨年末比+0.7

 (5月末の商品市況)
WTI原油先物(1バレル)67.04ドル  前月比-2.2% 昨年末比+11.0
NY金先物(1オンス)  1300.1ドル  前月比-1.2% 昨年末比-0.5
  
(5月末の為替市場) ※ +は円安 -は円高
米ドル/円  108.84円   前月比-0.4%  昨年末比-3.4
ユーロ/円  127.33円   前月比-3.6%  昨年末比-5.8
英ポンド/円 144.68円   前月比-3.9%  昨年末比-4.9
豪ドル/円   82.39円    前月比+0.1%  昨年末比-6.3

以上