2018年7月31日火曜日

FB株価急落から連想する「未来のかたち」


今年色々な意味で注目を浴びているフェイスブック(FB)ですが、同社は社員の給料が高いことでも有名です。

2018418日付け日経新聞記事に「日米トップ企業の社員平均給与」が掲載されておりましたので、下記にその一部をご紹介します。

フェイスブック2600万円

ツイッター1700万円

ソフトバンク1164万円

ソニー910万円

トヨタ自動車842万円


この数字を見て、私はフェイスブック社員の平均年収の高さに驚いたと同時に、日本企業は優秀で頑張っている社員の給料をもっと上げていかないと、明るい未来はないのではないかと危惧しました。

現在、日本も含め、世界的にビッグデータ解析などのIT専門人材の需要も大変高いわけですが、社員への処遇において日本企業が見劣りしているのは明らかです。

全体的に日本企業は「能力があり、頑張っても、給料が上がらない。」

それが経済成長を妨げ、個人の人生の豊かさの欠如を引き起こしている最大の原因なのだと私は思います。

この問題については「頑張らなくても最低限の給料が貰える」という社会構造とセットで考えなくてはならないし、根が深い問題なので深く触れませんが、何にせよ日本の労働市場の改革なくして、経済成長はありえないと思う次第です。


ところで話は変わりますが最近、上記でも紹介されている社員の平均給与が高い「フェイスブックとツイッターの株価」が急落しました。

フェイスブックについては大きなニュースになっていますので、ご存じの方も多いかと思いますが、同社の20184-6月の純利益は前年同期比+31%と過去最高益を更新したものの、欧米でユーザー数の伸びが低迷し、それに伴い今後の売上見通しの伸び率が下方修正されたのです。その影響で同社株価が725日(NY市場)に1日で19%下落、時価総額(円ベース)で13兆円も減少しました。

日本一のトヨタ自動車の時価総額は約25兆円、2位~4位(NTTドコモ、NTT、ソフトバンク)の時価総額は約10兆円くらいですから、それと比較すると、フェイスブックの1日の時価総額の減少額がいかに凄まじい金額だったか理解できるでしょう。

時を同じくして、727日(NY市場)にツイッターの株価も急落しました。同社もフェイスブックと同様、業績は好調でしたが、テロ行為を称賛する等の利用規約に違反した不正アカウントを閉鎖したことで、月間利用者数が減少しました。そのニュースを受けて失望売りが広がり、株価は1日で21%急落。フェイスブックほどではありませんが、時価総額(円ベース)は約7300億円も減少したのです。

過去半年を振り返ると、米中貿易戦争の影響からリアルエコノミーでモノを作り、動かしている企業の株価が大きく下落し、その影響を受けにくいデジタルエコノミーを主戦場とするIT企業(特に独占的プラットフォーマー)に投資資金が集まり、各社の株価は高値圏にありましたので、今回はその反動で余計に大きな株価下落につながったと言えるでしょう。

さて短期的な事はさておき、今回のフェイスブックの株価急落を受け、同社を含めた独占的プラットフォーマーは今後どうなっていくのか?ということを中心に「企業・社会・経済等の未来のかたち」について、私なりに考えてみました。

便利なサービスを無料で提供し、多くの人を集客する。
そしてそこに付随する大量のデータを解析しながら広告価値を高めていく。
そんなビジネスモデルに限界が来ているのでしょうか?

それとも21世紀型の新しいマーケティング手法はまだまだ進化の過程にあり、今回の問題を解決することで、フェイスブックやツイッター、そしてグーグルやアマゾン等の独占的プラットフォーマーの繁栄はまだまだ続くのでしょうか?

個人的な意見ですが、近い将来、独占的プラットフォーマーが現状のビジネスモデルの中で利益を独占する時代は終わり、次なる時代が来るのではないかと感じています。

れはすでに構築されている洗練されたITプラットフォーム上で「本当に世の中の問題解決を図っていく革新的なサービスを提供していく企業群」が主役になる時代です。

そこで活躍する企業は多種多様で、加えて言うならば、一つ一つの企業の時価総額は現在のトップ企業のように大きくなくてもいいのではないかと考えます。

さて次なる時代で活躍する企業の入れ替わりが起こるのではないかと予測する中(大型恐竜から小型哺乳類の時代が来たような感じ)で、社会や経済のスタイルも大きく変わっていくことが予想されます。既にその兆候は世界各地で見られ、言及もされていますが…。

「独占的な一極集中の時代」から「シェアエコノミー型の分散の時代」へ。

「大規模で柔軟性がないというスタイル」ではなく「分散された柔軟性があるスタイル」へ。

「そして現在は、その過渡期にいて、それはすごく面白い時代だ!」
私の希望的観測も含まれていますが、フェイスブックの株価急落を見ながら、そんな未来の世界を想像する今日この頃です(笑)。

ちなみに現在の独占的プラットフォーマーも、上記のような問題意識を持ちながら、M&Aを通じ新たな生態系をつくる挑戦をしています。その実験的な挑戦が上手くいくならば、彼らの時代はまだまだ続くと思いますし、その可能性も十分にあるでしょう。

「皆さんはどう思われますか?」

また機会があれば、ご意見等をお聞かせいただければ幸いです!

2018年7月20日金曜日

AI時代を勝ち抜くために

現在、日本経済新聞で「データの世紀」という特集記事が組まれており、興味深く読んでいます。

そこでは個人の嗜好や健康状態等の膨大なパーソナルデータを人工知能(AI)が解析することで、特定された個人の購買意欲を喚起する精度の高いパーソナル広告が作り出されている現実が書かれています。

そのことを記事では「私が奪われる!」という言葉を用いて警鐘を鳴らしています。

私もその現実に一種の不気味さを感じつつ、一方で個人データをグーグルやフェイスブックやアマゾンに売ることで(彼らはそれをお金に換える)生活の利便性を得ている。そう割り切るしかないとも感じています。

フェイクニュースを使った政治利用等は大きな問題となり、規制の必要性も高まっていますが…、大きな流れは変わらないでしょう。広告業界だけでなく、様々な分野でAIが活躍する時代になったのは確実です。

これからの仕事を考えた時(個人・会社に関わらず)「AIを味方につけるか?それともAIに駆逐されるか?」それが問われている時代と言ってもいいかもしれません。

そんな時代に対応すべく「AIを味方につける条件は何か?」と考えてみた時、それはその会社(もしくは個人)が「質が高い情報を保有しているかどうか?」そこがポイントになってくるかと思います。

「質が高い情報とは何か?」それはフェイクニュースではない「本当のこと」です。

AIは膨大な量の情報(ビッグデータ)をインプットして、過去のパターンを推測した上で、未来を予測しながら最適なアウトプットを出していくことは得意です。

しかし今後はおそらくAIとAIの対決になってきますので、その際に「質が高い情報(本当のこと)」をインプットさせることが最重要ポイントになってくると思います。要するに「情報の質が勝敗を分けるフェーズ」に入ってきたということです。

質が高い一次情報を取得すること。あるべき未来を想像してヴィジョンを描くこと。
私はこの2点についてはAIにできない部分だと思うので、人間はそこをさらに強化し、その他はAIにやらせるという関係性が最強だと考えます。

「質が高い情報」を企業価値の向上に結び付けている会社の一つとして、私も注目しているのが東証一部の大和ハウス工業(本社大阪)です。同社の主力事業は、今や住宅(ハウス)ではなく、その他の物流施設、店舗、ホテル等に変化しました。

しかし業態の変化に関わらず、同社の成長を支えているのは、長年の営業活動を通じて取得してきた(汗水流して調査をして)質量ともに充実した地主情報です。

例えばある小売企業が店舗を出店したいと思った時、どこの地主に話を持っていけばいいか?同社に聞けば迅速に答えが返ってくると聞きます。これからも同社が持つ「質が高い一次情報およびそれを取得する営業力」は、AIの活用との相乗効果によって最大限パフォーマンスを発揮していくのではと思います。

ところで、質が高い一次情報を得るには、やはり信頼というものがベースになくてはなりません。よってAI時代こそ、食事をしたりお酒を飲んだりして腹を割って話しをするなんてことが、今まで以上に重要になっているのかもしれませんね。

そんなことを考えつつ暑気払いにビールを一杯といきたいところです(笑)。

しかし、それにしても暑すぎる日が続きすぎています。皆様、健康にはくれぐれもご留意ください。

またこの場をお借りして、西日本豪雨被害に被災された方々および関係者の皆様のご健康と少しでも早い復興を心からお祈り申し上げます。

2018年7月6日金曜日

マーケットレビュー(2018年6月)

さて今年も半分終わりましたが、皆さんにとって2018年前半はいかがでしたか?

社会経済学者の故ピーター・ドラッカー氏は、夏に必ず1週間ほどの時間を確保して、1年間の振り返りと今後の計画を立てたそうです。

私たちも1週間は難しくても、半年に一度、丸一日くらいを使って、過去半年を振り返り、今後半年の計画をブラッシュアップするのもいいかもしれませんね。

それでは、毎月恒例のマーケットレビューを行います。以下ご参照ください!


マーケットコメント】

さて2018年前半の金融市場を振り返ると、米国株式市場は比較的堅調でしたが、それ以外の株式市場は低迷しました。米国の金利上昇によって、世界的に金利上昇圧力がかかり、債券価格が下落。為替市場でも総じて円高が進捗しました。

資産運用上は、大変厳しい半年であったと言えます。」

現時点においても、世界経済・金融市場は年初の楽観的見通しが失われており、悲観に変わったとまでは言いませんが、「米国の金利上昇」と「世界貿易戦争」の2つの事柄が重しとなり、先行きの不透明感が増しています。

特に昨年好調だった新興国の経済・金融市場が、かなり混乱してきており、足元堅調な先進国経済に波及する懸念も拡がっています。

先月の経済・金融の話題も、貿易戦争一色と言っても過言ではありませんでした。(政治では初の米中首脳会談、スポーツの世界ではサッカーW杯が話題でしたが…)

6月は貿易戦争の一部が現実化する中で、中国の株式市場(上海総合指数)が月間で8%も下落しました。また新興国通貨が直近で大きく売られ、弊社のお客様のポートフォリオにおいても新興国のアセットクラスに影響が出ております。

しかしながら長期的な視点に立つなら、今後の世界経済の成長を牽引していくのは、やはりアジア・アフリカ・東欧等の新興国経済圏だと思います。先進国の企業も新興国のマーケットでいかに商売をするかが、今後の利益成長の重要ポイントと言っても過言ではありません。

よって私たち長期投資家は「新興国で起きている足元の混乱」と「そこで起きつつある様々なイノベーションや投資機会」について、冷静にしっかり分けて考えておくことが大切です。

トランプ大統領が仕掛けている貿易戦争の帰結がどうなるかは、まだ誰にもわかりませんが、あまりやりすぎると米国企業がこれらの成長地域から締め出されるリスクも高まります。
当然そのことをトランプ大統領も理解しているでしょうが、彼は本当にポーカーゲームの類のものが大好きなのでしょう。なかなか止めようとしません。

しかし勝負が長引けば長引くほど、米国を含むグローバル企業も経営上の様々な意思決定を留保し、様々な投資活動が停滞することになります。その結果、米国経済が停滞すると、彼の支持率も大きく下がり、11月の中間選挙で波乱が起きる可能性も十分にあり得ます。

すでに我慢できなくなって、新たな意思決定をした米国企業も出てきました。先月、米国の有名バイクメーカーのハーレー・ダビッドソンが、欧州への輸出にかかる高関税を嫌い、一部の生産拠点を欧州に移すと発表したことについては、皆さんも周知のところだと思います。

それをトランプ大統領が「根性がない!!」などと罵倒しても始まりません。早くこのチキンレースに折り合いをつけなければ、最終的には、すべてブーメランとなって自分自身にかえってくるのですから…。

それでも彼が何をするのか予測不能ということで、経済や金融の先行きに対する不透明感が増しており、なかなか動けなくなっているという状況が、まさに今です。

ただ個人的には、現時点で堅調さを保っている世界経済や企業業績を背景に、この政治的なチキンレースの折り合いがつくことで、年後半に向けてマーケットは徐々に落ち着きを取り戻すことを期待しています。

また前回のブログ、「テクノロジーと格差問題」でも書きましたが、不透明感が漂う中でも、新たな投資機会が創出されつつある世界経済の「楽観的な側面」も見逃してはなりません。

このように常に逆の側面も見ておこうという感覚は、長期投資を継続していくうえでとても重要です。その感覚がなければ、相場の雰囲気に一喜一憂して売買を繰り返す等、合理的でない投資行動に陥るリスクがあると思うからです。


【金融市場の動き】

(6月末の長期金利) 
米国が0.25%利上げにも関わらず、世界貿易戦争を危惧し長期金利は上昇せず。
日本10年国債  0.03%     前月比 変わらず 昨年末比 -0.02
米国10年国債  2.86%     前月比 変わらず 昨年末比 +0.46
ドイツ10年国債  0.34%     前月比-0.04%  昨年末比 -0.13
英国10年国債  1.28%     前月比+0.06%   昨年末比 +0.10
  

(6月末の先進国株式)
先進国では企業業績の増益率が高い米国だけが年初比で上昇。
東証株価指数  1730.89    前月比-0.9%  昨年末比-4.8
米国S&P500    2718.37   前月比+0.5%  昨年末比+1.7
米国ナスダック   7510.31    前月比+0.9%  昨年末比+8.8
ドイツDAX    12306.00  前月比-2.4%  昨年末比-4.7
英国FTSE100  7636.93   前月比-0.5%   昨年末比-0.7

  
(6月末の新興国株式) 
貿易戦争の影響で中国が、内政の混乱でブラジルが急落。
中国上海総合    2847.42   前月比-8.0%   昨年末比-13.9
インドSENSEX   35423.48  前月比+0.3%  昨年末比+4.0
ブラジルボベスパ  72762.51  前月比-5.2%    昨年末比-4.8
ロシアRTS     1154.16   前月比-0.8%   昨年末比 変わらず


 (6月末の商品市況) 
イラン問題で原油価格急騰。米利上げで金下落。
WTI原油先物(1バレル) 74.15ドル   前月比+10.1% 昨年末比+11.0
NY金先物(1オンス)   1254.16ドル 前月比-3.5% 昨年末比-4.0


(6月末の為替市場) ※ +は円安 -は円高
米国利上げ、欧州量的緩和終了のアナウンスで円安、新興国通貨は総じて下落。
米ドル/円  110.71円   前月比+1.7%  昨年末比-1.8
ユーロ/円  129.27円   前月比+1.5%  昨年末比-4.4
英ポンド/円 146.10円   前月比+1.0%  昨年末比-4.0
豪ドル/円   81.95円       前月比-0.5%  昨年末比-6.8

以上