2018年8月31日金曜日

健全なる楽観論

投資の意志決定に関して「情報」が大切なことは言うまでもありませんが、実はこの情報こそが「長期投資の成功を阻害する最大の要因」になることも、私たちはよく認識しておく必要があります。

私たちは多くの情報について、新聞やテレビやインターネット等のメディアを通じて取得することになりますが、これは二次情報であり、マスコミが大衆の注目を集めるため都合よく操作することも、おそらく頻繁に起きていると推測されます。

巷に溢れる情報と、実際に世の中で起きている事実には、大なり小なり乖離が生じていますし、また以前から既に(かつ継続的に)起きている事実を、急にクローズアップすることで、それをあたかも最新トピックのように装飾し、むやみやたらに世の中の不安を煽ったりするケースも多いのではと感じます。

国際関係戦略研究所所長のパスカル・ボニファス氏(フランス人)は、自身の著書の中でこのように述べています。

【以下抜粋】
「世界の状況は悪くなる一方ではない。」

世界を、現実と理想とではなく過去と比べれば、状況は着実に改善していることがわかる。この30年間で7~8億人が貧困ラインを脱した。大飢饉の時代は過ぎ去ったのだ。

人々の教育と知識の水準は上がり続けており、20世紀の間に世界の富は20倍に増え、寿命は2倍に延び、健康に老いることが可能になった。

人種差別は残っているものの、アメリカなど民主主義が確立された国に、かつてのような差別的制度はもうない。南アフリカとジンバブエではアパルトヘイトが廃止された。男女平等は、いまだに道半ばとは言え、大半の社会で当たり前になっている。

様々な科学分野で技術革新が進んで特許登録が増え、物資の不足や病気や死に立ち向かうことができるようになった。ITのおかげで情報がより広まりやすくなった。

さらに原動力となる市民社会が至るところで発展している。移動の自由、結婚するか否かの選択、パートナーの選び方も比較的自由になってきた。

(以上)

皆さんいかがでしょうか?私はボニファス氏の世界の見方に賛同します。

能天気に批判精神を失ったり、真に悲惨な事実を見て見ぬふりをしたりすることがあってはならない一方で、世間に流布するネガティブなニュースに必要以上に反応し影響されることがあってはならないと思うのです。

実際…これからも世界中で様々な問題が噴出するでしょう。しかし人類は、過去の歴史でもその問題を解決することで進歩してきたように、今後も少しずつかもしれませんが改善を重ね、次世代の歴史を作っていくのだと思います。私はこの過去の事実と未来の再現性を信じることを「健全なる楽観論」と定義しています。

私たちが目指す長期投資の成功においても、この「健全なる楽観論」が心の中にインプットされていなくてはなりません。悲惨な未来を描きながら長期投資をするなんて、ストレス以外の何物でもありませんから…(笑)。

2017年に米国でトランプ大統領が誕生して以来、国際情勢の先行き不安がマスコミを通じて大きくクローズアップされている状況が続いています。こんな時こそ、皆さんにも改めて「健全なる楽観論」をベースに、長期投資マインドを醸成して頂きたく思います。

さて本日で8月も終わり、明日から9月です。2018年もあと4ヵ月、充実した2018年に仕上げるべくお互い頑張ってまいりましょう!!

2018年8月22日水曜日

50にして想う

昨日、第100回全国高等学校野球選手権記念大会(夏の甲子園)の決勝戦が行われ、大阪桐蔭が春夏連覇を達成、全国3781校の頂点に立ちました。

決勝戦で敗れた金足農業は残念でしたが、地元密着の公立高校が私立の強豪校を次々と打ち負かしていった姿は多くの人に感動を与え、ある意味、優勝した大阪桐蔭よりも注目度が高かったと言えるでしょう。

また今大会はレジェンド始球式など高校野球の歴史を感じさせる企画もあり、100回記念大会に相応しい数多くの熱戦もあり、指折りの記憶に残る大会になったことは間違いないでしょう。決勝戦が終わった時、甲子園上空に綺麗な虹が出現したのが、それを象徴しているかのようでした。

さて実は私も32年前、地方の高校野球球児でした。

私の同級生で、当時甲子園で最も活躍していたのがPL学園の桑田、清原です。

準決勝(金足農業VS日大三高)の始球式で元PL学園の桑田真澄の投球を見た時は、年甲斐もなく胸が熱くなり、ついでに目頭まで熱くなった次第です(笑)。

そして翌日の決勝戦、同じく元PL学園の清原選手の姿を見た時、こちらは違った意味で涙が出そうになりました。

2人の人生は対照的なものになったかもしれませんが、間違いなく自分の時代の高校野球レジェンドは、この2人だったと思います。

普段、ほとんど過去のことを回顧しない私ですが、桑田と清原を見ているとPL学園が全盛期に高校生だった自分達も、その後それぞれの人生を歩み、今みんな50歳(もしくは51歳)になったのだなーと、感慨深い気持ちになりました。

そんな懐かしモードにスイッチが入ったわけではないのですが、今年はお盆休みを利用して、実家の松山で30年ぶりに高校の学年同窓会に出席してきました。

久しぶりに会う恩師や同級生と旧交を温め、とても愉しい一時を過ごしてきましたが、そこで既に亡くなった友人がいることも知りました。

色々な意味で高校を卒業してからの時の流れを感じると同時に、人生において残された時間についても意識せずにはいられませんでした。

「残された時間を自分はどのように生きていくか?」

高校球児のような輝きは無理かもしれませんが…、
「自分が持つこれからの時間をいかに有意義に使っていこうかな?」
「その前に、自分にとって、ほんとうの豊かな人生(有意義な人生)ってどんなもの?」
等々、

そんな人生の課題にどう立ち向かうかについて、50歳にして、改めて考える2018年夏です。

2018年8月7日火曜日

マーケットレビュー(2018年7月)

2018年7月は西日本豪雨、記録的猛暑、通常ルートを逆走する台風等によって、日本各地で大きな被害がでました。このような異例とも言える天変地異は、人心を不安にさせ、景気を悪化させる要因になることもあるので、資産運用の面でも十分注意しておく必要があります。

ただ注意しすぎるあまり、(長期投資家の行動として)やってはならないのは、不安心理が高まり投資マインドが減退する時期に、感情に流され投資を止めてしまうことです。

仮に今後、景気が悪化する局面が来たとしても、そこは一時的な我慢の時期ですし、実は景気低迷期に上昇する投資対象も結構ありますので、思考停止するのではなく、資産配分や銘柄選択の微調整で対応することが肝要です。

全体的な雰囲気に流され、資産運用の意志決定を短絡的に行ってはなりません。特に中核(コア)資産は、状況が厳しい時でも保有を継続することが重要だということを、世界貿易戦争等で不確実性が高まっている今のような時期にこそ、再認識しておきたいと思います。

また個人的かつパーソナルファイナンスの観点から、特に今は健康管理に気をつけなければならないと思っております。記録的な猛暑日が続く中、自分が思っている以上に疲れが蓄積されている可能性があります。

兎にも角にも、最近の外部環境の様々な変化(異変)が、個々人の「人的資産や金融資産」にどのような影響を及ぼしているのか?今一度、立ち止まって現状確認をしつつ、長期視点で「これから」について再考する時期ではないかと感じる今日この頃です。


【マーケットコメント】

20187月、世界貿易戦争への楽観的な見通しが強まったこと、また米国の4-6GDPが+4.1%と高成長を遂げたことから、米国株式を中心(NYダウは月間+4.7%)に世界株式市場は上昇しました。

先月の重要ポイントは76日、米中が互いの輸入品目に340億ドルの関税をかけあったところです。これは米中貿易戦争の最初の一手(お互いにとって)ですが、マーケットは不思議なもので、先行き不安が事実になったことで逆に悪材料出尽くし感から落ち着きを取り戻したのです。

続いて725日、米国とEUの間で「工業製品(自動車を除く)の関税撤廃」及び「米国の対EU輸出拡大に関する貿易交渉開始」についての合意がありました。こちらは素直にグッドニュース、世界株式市場の上昇を後押ししたと言えるでしょう。

しかしながら今後、11月の中間選挙を意識しているトランプ大統領が、貿易戦争に関してどのような動きを見せるかは全く予断を許しません。

よって先月の株式市場の上昇を手放して喜んでいる投資家は皆無だと思います。7月末に株式市場の上値が重たくなってきた状況を見ても「まだまだ不透明な状況が続いている。」というのがマーケットコンセンサスだというのは明確です。。

一方、日本国内では久しぶりに日銀の金融政策が話題となりました。ゼロ金利政策が始まり約2年半、当局はデフレ脱却のため、長短金利をゼロ近辺でコントロールしてきたわけですが、先月(730日~31日)の日銀金融決定会合で変化の兆しが見え始めました。

決定会合で日銀は物価見通しを下げた(20181.3%→1.1%、20191.8%→1.5%)にも関わらず、0%程度に誘導していた長期金利(10年国債利回り)について、0.2%程度までの上振れを容認したのです。

世界的にも長期金利は上昇基調にあり、おそらく米国では堅調な経済を背景に10年国債利回りが3%台に定着するのも時間の問題かと思います。

このような世界的な金利上昇は、経済や金融に一時的な痛みを与える一方で、資産運用サイドから見ると、そこに新たな投資機会を見出すこともできるというものです。

資産運用においては、ある一つの事象が及ぼす影響について、「表側と裏側」をしっかり見ていかなくてはなりません。それができる運用チーム(アドバイザーや運用会社)は数少ないと感じますが、そんな運用チームを味方にすることができるなら、投資家は短期的な変動に惑わされず「長期的な安心」と「長期的な運用実績」の両立が可能になるでしょう。


【金融市場の動き】

(7月末の長期金利) 
先進国の景気の強さを背景に、金利上昇圧力が強まっている。

日本10年国債  0.06%     前月比 +0.03%  昨年末比 +0.02
米国10年国債  2.96%     前月比 +0.10%  昨年末比 +0.56
ドイツ10年国債 0.45%     前月比 +0.15%  昨年末比 +0.02
英国10年国債  1.33%     前月比 +0.15%   昨年末比 +0.10

 
7月末の先進国株式)
貿易戦争への楽観見通しから、先進国株式は全体的に上昇。

東証株価指数  1753.29    前月比+1.3%  昨年末比-3.5
米国S&P500    2816.29    前月比+3.6%  昨年末比+5.3
米国ナスダック  7671.79    前月比+2.2%  昨年末比+11.1
ドイツDAX   12805.50   前月比+4.1%  昨年末比-0.9
英国FTSE100  7748.76   前月比+1.5%   昨年末比+0.8


7月末の新興国株式) 
貿易戦争への楽観見通しから、新興国にも買い戻しが入る。

中国上海総合    2876.40   前月比+1.0%  昨年末比-13.0
インドSENSEX   37606.58  前月比+6.2%  昨年末比+10.4
ブラジルボベスパ  79220.43  前月比+8.9%    昨年末比+3.7
ロシアRTS     1173.06   前月比+1.6%   昨年末比+1.6


7月末の商品市況) 
米国の原油備蓄放出観測から原油安、「米国金利上昇ドル高」から金は下落

WTI原油先物(1バレル) 68.76ドル   前月比-7.3% 昨年末比+13.8
NY金先物(1オンス)   1223.70ドル 前月比-2.5% 昨年末比-6.3


(7月末の為替市場) ※ +は円安 -は円高
世界的なリスクオフの緩和で、総じて小幅な円安が進捗。

米ドル/円  111.84円   前月比+1.0%  昨年末比-0.8
ユーロ/円  130.84円   前月比+1.2%  昨年末比-3.2
英ポンド/円 146.82円   前月比+0.5%  昨年末比-3.5
豪ドル/円   83.11円     前月比+1.4%  昨年末比-5.5

以上