2018年9月30日日曜日

経営者という面白い存在

私はファイナンシャルアドバイザーの仕事を通じ、色々な職種のお客様の資産運用管理のサポートをしておりますが、中でも個性的な面々が揃っているのが、自分で会社を起業し、成功している企業経営者の皆さんです。

勿論、会社に勤務するビジネスパーソンの中にも、すごく魅力的な方が沢山いらっしゃいますが、事業を成功させている創業者の個性は、やはりダントツの面白さがある気がします。

世の中的にも、様々な個性を持った企業経営者の動向は、多くの人に注目されていますが、特に米国の企業経営者は映画スターのようにさえ見えます。

最近ではテスラのイーロン・マスク氏が、米証券取引委員会(SEC)に提訴され苦境に陥っています。今後どうなるのか?この苦境を乗り切り、ハッピーエンドの映画のような結末を迎えるのか?それにしてもこの状況で、ゾゾタウンの社長はテスラ(スペースX)のロケットで本当に月に行けるのか?(笑)。

それは誰にもわかりませんが、以前からイーロン・マスクの言動、行動を見ていると一種の危うさを感じつつ、しかしその性格ゆえに、誰もやらない新しい事業に思いきって飛び込んでいけるのであろうと思ったりもします。

※このブログを書いている途中にイーロン・マスクがテスラの会長を退任し(CEOにはとどまる)、マスク氏個人とテスラがそれぞれ2000万ドル(約23億円)の制裁金を支払うことでSECと合意した。

彼は強烈なドリーマーで、タイトロープの上を歩むように生きている感じがします、個人的にはアップルの故スティーブ・ジョブスと似ているところがあるように思います。

一方でアマゾンのジェフ・ベゾス氏。彼も強烈な経営者ですが、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブスとは異なるタイプのように感じます。

私は、彼の自伝や関連の本を読んだこともなく、特に詳しいわけではないのですが、直感的に彼は地に足がついたタイプで、決してタイトロープの上でスリルを楽しんだりすることはない人だと思います。

最近、ジェフ・ベゾスのインタビューを見て、大変共感したことがあります。

彼は18時間の睡眠をとり、朝のコーヒーや新聞、家族との朝食を大切にし、朝の会議を10時に始め、ランチタイム前に重要な決定を行うとのこと(夕方は頭が疲れて駄目だと…)。1日に3つの質の高い意思決定ができれば、それで満足。アマゾン社長の自分より、父としての自分の方が大切だとも言っていました。

経営者の端くれの私ではありますが、個人としては、イーロン・マスクよりジェフ・ベゾスのような生き方(考え方)に共感を覚えます。

勿論、どちらがいいというわけでありませんが、経営者にも色々なタイプがいて、彼らの生き様自体が(特に創業者の場合)会社のコーポレート・アイデンティティーになっているのは間違いありません。

兎にも角にも、世界で、日本で、これから多くの会社が生まれ育ち、面白い経営者が誕生していくでしょう。そして誰もがいつかは引退(それは死かもしれませんが…)の時期を迎えます。

中国アリババの創業者ジャック・マー氏が先日、引退すると発表しました。御年55歳。彼はIT業界ではもう若くないと言いながらも、ライフワークと考えている教育事業を行うこと、そしておそらく人生を愉しむという点において、まだまだ若いと感じているようです。個人として「人生をより豊かに創造する」という挑戦は、まだまだ続いているのでしょう。

アリババのことを考えていると、アリババ創業時に投資(出資)をして、大きな財産をつくったソフトバンクの孫正義氏のことが頭に浮かんできます。彼は当初60歳で引退する準備をし、周囲に発表までしていましたが、その後、前言を撤回して、今まさに以前よりもスケールアップして事業を展開しています。今、世界で最も有名な日本の経営者が孫正義であることを否定する人はいないでしょう。

成功すればするほど引き際も難しくなると思いますが、企業経営者の人生は、本当に面白いです。ちょっと言い方は悪いですが、予測できない飽きることのないドラマのようです(笑)。

前述した世界的な大企業ではなくとも、世界には、そして日本にも、多くの個性的な企業経営者の皆さんが活躍しています。

そんな企業経営者の皆さんが波乱に満ちた人生を乗り切るため、私もファイナンシャルアドバイザーとして「資産運用管理を通じた長期的な財務基盤の強化」という点で、しっかり貢献してまいりたいと思っております。

今後ともよろしくお願いいたします!!

2018年9月27日木曜日

金融教育の重要性

201895日~7日、日本経済新聞で「イデコ100万人時代」という特集記事が掲載されており、興味深く読ませて頂きました。

【記事の内容について、要点を列挙すると下記のような感じです。】
個人型確定拠出年金(以下イデコ)の加入者が、近々100万人の大台に乗る見通し。

イデコの制度は18年前からあるが、2017年の制度改正で、公務員も含め全国民が加入できるようになり加入者が飛躍的に増大してきた。

国の制度を熟知する官僚(公務員)は、税優遇に敏感でイデコのけん引役となっている。

イデコは原則60歳まで引き出せないが、掛け金は全額所得控除となる。

公務員の場合イデコの年間拠出上限は14.4万円だが、税率30%と仮定すると年43200円の節税効果がある。

日本の公的年金の現役時代の所得代替率は2014年時点で実質63%だが、20年後には50%まで低下すると予測されている。

細る公的年金を補う老後の備えとして私的年金の重みが増している。

厚労省の調査では、日本の65歳以上の高齢者世帯の収入の66%を公的年金が占めている。

米国の高齢者の収入内訳では公的年金が40%弱で、その他労働所得が30%、職域・個人年金が20%等と収入源が分散されている。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、現状のままでは2050年時点で85歳の世帯の1/2で金融資産が枯渇すると予測する。

米コンサルのマーサー社の国別年金制度(公的年金や私的年金)の総合評価において、世界の主要30カ国中、日本は29位(ちなみに30位はアルゼンチン)。

オーストラリアでは強制加入の私的年金(スーパーアニュエーション)制度がある。

日本のイデコの資産内訳を見ると、20173月時点で元本確保型の預貯金と保険が約65%を占め、投信などの投資商品は約35%にとどまる。

イデコの定期預金の金利は高くて0.05%。20万円の残高に対して利息は100円。一方でイデコでは国民年金基金連合会や信託銀行への手数料が最低でも年2004円かかる。

このままでは長期的な物価上昇に勝てず、イデコ全体の運用利回りが実質マイナスになる可能性が大。 

以上)

「さて皆さんは、このような状況の背景にある原因について、どう思われますか?」

私は日本で「本当の金融教育」が為されていないことが、最大の原因だと思います。

本当の金融教育とは、体系的なパーソナルファイナンスの観点から「いかに生きるのか?いかに働くか?いかにお金を遣うか?」等、自分自身の人生のあり方を深く考察することの中で、経済や金融というものの基本的な仕組みを知り、人生において金融市場を活用することの意義について、本質的な理解を得ることだと私は考えます。

それができていないから、イデコという制度をつくっても、この有様。

投資を「金融商品の選択」という側面からだけ捉えていては、いつまでたってもこの状況は解消されません。

真の金融教育の普及について、微力ですが弊社も頑張っていかなくてはと、この記事を読んで心を新たにした次第です。

2018年9月6日木曜日

マーケットレビュー(2018年8月)

まもなくリーマンショック(2018915日)から10年を迎えます。
 「あの頃、皆さんはどのような状況でしたか?」

私はバリューマネジメントを創業して約2年が経過(40歳)。事業も少し軌道に乗り始めた頃でしたが、リーマンショックで状況は一変しました。このことがその後の私の仕事や人生に及ぼした影響は、かなり大きなものとなりました。
お客様にも多大なご心配をおかけした時期でした。

当時の記憶を思い返すと、投資信託の平均下落率は、リーマンショックを起点に1年以内に4割~5割に達し、経済環境も最悪で、先行きが全く見えない状況でした。雇用環境も悪化し、当時の就活生はとんでもない苦労をしていたことを思い出します。10年後の現在の人手不足の様相を誰が想像したでしょうか?

その後、各国政府の積極財政政策と中央銀行の金融緩和政策もあって、ギリシャ危機、超円高、東日本大震災等の逆風を受けながらも、日本でもアベノミクス等の効果もあって、徐々に金融市場も実体経済も回復していきました。

その結果、リーマンショックの寸前に運悪く投資を始めた人も、当初投資金額は45年後に投資元本を回復し、10年後の現在は1.5倍以上に増加しています。

100年に一度と言われた経済危機においても、10年単位の長期投資の有効性は実証されたのです。おそらく、これからの10年についても、様々な社会・経済・市場の変化の波を受けながら「長期投資という戦略の有効性」は証明されていくでしょう。

ただそのためには、良い金融商品を、自分に合った良いかたちで保有しなくてはならなくてはなりません。弊社はより良いかたちで、それをサポートしていきたいと思っております。兎にも角にもリーマンショックから10年、改めて身が引き締まる想いです。


【マーケットコメント】

先月の実体経済および金融市場で起きた出来事を振り返り、個人的な見解等を述べてみます。

まず8月最初に注目したのが米国アップル社の決算。同社の4-6月期決算は過去最高益となり、時価総額は史上初の1兆ドル超えとなりました。その後アマゾンドットコムがこの1兆$クラブの仲間入りとなりましたが、おそらく次はグーグル(アルファベット)とマイクロソフトでしょう。とにかくこの4社の時価総額の増加額は凄まじく、過熱感も感じますが、ITバブル時と異なり、事業の実態を伴っているだけに、現在の株価水準については専門家の意見もわかれるところです。

次に米国長期金利についてです。前半に米国経済の強さを反映して1ヵ月半ぶりに10年国債の金利が3%台に乗せてきましたが、後半にはFRB議長が米国にインフレの兆候は見られないという発言をして、先行きの利上げの打ち止め感から、結局、米国10年国債利回りは3%を割れとなりました。このことが米国株式市場にとってポジティブに受け止められ、株式市場の上昇を後押ししました。

8月は世界各国の企業の4-6月期決算の数字も確定しました。米国企業は24%増益、その他地域(日欧アジア)についても概ね10%~20%の増益率となり、足元の企業業績がかなり堅調であることが確認されたのです。

そして先月の最大注目点はトルコショックでしょう。米国人牧師の拘束を巡る外交問題がきっかけとなり米国とトルコとの関係が悪化。米国はトルコに経済制裁を発動し、810日にトルコリラは1日で20%下落しました。その後、現在もトルコリラの下落に歯止めはかからず、その他の新興国通貨にも、その流れが波及し、新興国通貨全体が対米ドルで大幅に売られています。

また米中貿易戦争も収まる様子がなく、人民元の下落と共に株式市場(中国上海指数)も、20158月の人民元ショック時の水準まで下落しています。貿易戦争に影響が少ないと思われたIT大手テンセントも、当局からの規制(指導)によって、ゲーム事業が不調となり、4-6月期決算が最終減益となりました。人気オンラインゲーム「モンスターハンター」が発売5日で配信停止。このことはテンセントショックと呼ばれ、ゲーム業界全体に悪影響を及ぼしています。

日本経済もグローバルな貿易戦争やそれに伴う金融市場の変調の影響を受けています。人民元安によって中国人旅行客の増加ペースに減速感が見られ、今後も一時的かもしれませんが、日本への旅行客の数および消費額の減少が予想されます。この影響でいわゆるインバウンド銘柄は大きく下落、またこれらの様々なリスク要因の増大が、投資家心理に影を落とし、IPO(新規公開株)やマザーズなどの小型株市場は、一時期のバブル的様相が弾けた感じになっています。直近マザーズに上場したメルカリの株価が大きく下落している影響も波及しているのではないでしょうか。

最後になりますが全体的に見ると、やはり8月末現在、経済も金融も米国の独り勝ち状態と言えます。しかもその中でアップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトの4社は突き抜けており、米国株式市場の上昇分の大半を占めています。投資資金の一極集中とそれ以外に割安な銘柄が続出している状況は、表面的には2000年初頭のITバブル時を彷彿させます。あの時に割安株への投資はその後大きな財産となりましたが、今回はどうなるでしょうか?

「歴史は繰り返すが、決して同じかたちでは繰り返さない。」そのようにも言われますが、本源的価値を有しながらも割安になっている株式が、そろそろ出始めている。個人的には、そんな感じも受ける今日この頃です。

【金融市場の動き】

(8月末の長期金利) 
FRB議長のインフレ兆候見られない発言で米国金利は低下。トルコショックによる欧州経済の先行不安でドイツ金利も低下。一方日本は日銀が0.2%程度までの長期金利上昇容認。

世界の長期金利
8月末
前月比
昨年末比
日本10年国債
0.11%
0.05%
0.07%
米国10年国債
2.86%
-0.10%
0.46%
ドイツ10年国債
0.34%
-0.11%
-0.09%
英国10年国債
1.44%
0.11%
0.26%


(8月末の日本株式)
材料難で動きが乏しく横ばい。

国内株式
8月末
前月比
昨年末比
日経平均株価
22865.15
1.4%
0.4%
TOPIX
1735.35
-1.0%
-4.5%
ジャスダック平均
3823.35
0.1%
-3.2%
東証REIT指数
1752.65
-0.9%
5.4%


(8月末の先進国株式)
米国の一人勝ち状態。トルコショックの影響で欧州株式市場は下落。

海外先進国株式
8月末
前月比
昨年末比
NYダウ工業30種
25964.82
2.2%
5.0%
S&P500
2901.52
3.0%
8.5%
ナスダック
8109.54
5.7%
17.5%
FTSE100
7432.42
-4.1%
-3.3%
DAX
12364.06
-3.4%
-4.3%
香港ハンセン
27888.55
-2.4%
-6.8%


(8月末の新興国株式) 
トルコショックの影響で新興国は再度大幅に売られる。インドのみ堅調。

海外新興国株式
8月末
前月比
昨年末比
上海総合
2725.25
-5.3%
-17.6%
インドSENSEX
38645.07
2.8%
13.5%
ブラジルボベスパ
76677.53
-3.2%
0.4%
ロシアRTS
1092.29
-6.9%
-5.4%


(8月末の商品市況) 
金が1年ぶりの安値圏。安全資産としての魅力が薄れているかも。

商品
8月末
前月比
昨年末比
原油WTI先物(ドル)
69.8
1.5%
15.5%
NY金先物(ドル)
1200.3
-1.9%
-6.3%
CRB指数(ドル)
192.96
-0.8%
0.3%


(8月末の為替市場)  黒字は円安、-赤字は円高
新興国通貨、資源国通貨が暴落。
(トルコリラとアルゼンチンペソは対米ドルで年初から半値水準まで下落)

為替
8月末
前月比
昨年末比
米ドル/
111.09
-0.7%
-1.4%
ユーロ/
128.94
-1.5%
-4.6%
英ポンド/
143.99
-1.9%
-5.4%
豪ドル/
79.85
-3.9%
-9.2%
NZドル/
73.50
-3.6%
-8.0%
カナダドル/
85.12
-0.9%
-5.0%
スイスフラン/
114.63
1.5%
-0.9%
南アランド/
7.56
-10.3%
-17.3%

以上