2019年12月31日火曜日

2019年大晦日に

弊社のお客様、お取引先等の関係者の皆様、
本年も誠にありがとうございました。

さて2019年は不況下の株高となり、
実体経済と金融市場のベクトルは逆に動きましたが、
この動きに多くの方が意外な感じを持ったのではないでしょうか?

特にビジネスの最前線で活躍されている皆様は、
ご自身の感じている実体経済と金融市場の温度差(ギャップ)から、
そのうち株式市場も下がるだろうと見ているうちに、
(巷の状況を見るに)投資タイミングを逸してしまった方も多いように感じます。

個人的には、このような展開においても、
「短期変動を受け入れ長期の成長を獲得する」という長期投資コンセプトが
実に有効に働いたことを、改めて実感した2019年となりました。

教訓:資産運用においては予測を当てるより原理原則に基づくことの方が重要である。

それと個人的に昨今大変気になっているのが、
「株式売買手数料や投資信託の販売手数料の無料化」の動きに拍車がかかってきていることです。

ネット証券を中心に、他社が手数料を下げたら自社も下げなければ競争優位を保てない
といったコスト競争の動きが急速に表面化してきました。

このことに関連して、2019年12月13日付日経新聞(夕刊)のコラムで、
なかなかいい事を言うなーという記事がありましたので、少しご紹介をさせて頂きます。

■コラム十字路「タダより高いものはない」。
(記事から一部抜粋および要約)

手数料の無料化で懸念されるのは、証券各社のコストの回収方法だ。
低コスト経営のネット証券でも当然システム開発にお金はかかる。
よって外から見えない形で元を取る動きがでてもおかしくはない。
あるネット証券が株の売買執行の仕組みを変更したのを利用し、
高速取引(HFT)業者が個人の注文先回りして利益を狙う動きが表面化したばかりだ。
(以上)

この記事の要約を簡単に例えるなら、カジノの入場料はタダにしてお客さんを集め、
勝負において、お客さんをカモにするという仕組みといった感じでしょうか?

上記のコラムでは、株式売買手数料について言及していましたが、
投資信託においてもネット投資家の販売手数料無料化の動きが加速しております。

ちなみに運用期間中に継続的にかかる信託報酬は変わりませんし、
私たちのようなファイナンシャルアドバイザーが担当につく場合は、
販売手数料は今までと変わらず有料です。
また販売手数料の無料化の代わりに助言手数料を付加するケースもあります。

さて、この無料化については、投資家ファーストのような感じで称賛する報道が多く、
投資家にとっても大変良い事のように言われていますが、
果たして本当かどうかは疑問です。

このことが投資家の運用成績を向上させるかどうかは
「実はかなり怪しい」と私は思っております。
と言うより、むしろ悪くさせる危険性があることを指摘しておきたいです。

販売手数料の無料化は、安易な投資信託の売買につながる可能性があるからです。

売買をしても手数料がかからないので、
「とりあえず一度売って、また下がったら買おう」
そんな投資家心理に拍車をかけることになることは容易に予測ができます。

それが上手くいけばいいのですが、おそらく難しいでしょう。
「安く買って高く売る」
それを長期にわたってタイミング良く繰り返すことなど奇跡に近いことなのですから。

加えてこのことは運用会社の運用にとってもネガティブに出る可能性を秘めています。
運用中に資金の出入りが激しくなる可能性があり
目には見えない運用のロスになりかねないからです。

適正なコストを支払い、日本ではまだまだ数は少ないですが、
真の専門家と言えるファイナンシャルアドバイザーの助言を得ながら、
投資の原理原則に基づいて資産運用を行う方が
実際の成功確率が高くなると、個人的には確信しております。

金融商品の無手数料化の動きに代表されるコスト競争は金融業界だけでなく、
現在様々な業界で起こっている事象だとも言えます。

各業界で事業者はAIやデータを駆使してコスト競争を仕掛けていますが、
実際のお客様サイドの世界では「お金は払うから、いいサービスを受けて満足したい!」
そんな考えを持つ方は思った以上に多いです。

AIやロボットは生産性や顧客満足度向上におけるツールであり、
それを使うこと自体(もしくはそれを使って単なるコスト競争をすること)が、
目的化しては、世の中あらぬ方向に行ってしまいます。

「タダより高いものはない!」
改めて多くの投資家にお伝えしたい言葉です。

さて今年最後のブログとなりましたが、2020年以降も弊社と致しましては、
しっかりとお客様から頂く手数料以上の付加価値を生み出していくよう、
頑張ってまいる所存です。

それでは皆様「良いお年をお迎えください!」
そして「来年もよろしくお願い致します!!」

2019年11月28日木曜日

フォーカスすべきこと

2019年も残すところ約一ヵ月となってまいりましたが、
今年の世界株式市場は予想外の堅調さを保っていると言えるでしょう。

12月には「英国総選挙」「米中貿易問題の第一弾合意がなるかどうか」等、
マーケットを大きく揺るがせかねない政治イベントが控えていますので、
場合によっては、昨年12月と同様の大きな調整がないとも限りません。

しかしながら年間を通してみると、世界的な金利低下による金余りと
米国を中心に「思ったよりは悪くない企業業績」との組み合わせが、
昨年、大きく下落した株式市場を反転・上昇させたということだったのでしょう。

このままいけば…、今年の株式市場のパフォーマンスは「かなり良かった」
という結果になりそうではあるのですが、自分自身の肌感覚では、
巷の投資家の運用成績はそんなに良くないのではと感じています。

世界の政情不安(特に米中貿易問題)、景気後退に対する不安、不規則な株式市場の変動、
その他トランプ大統領のツイッターとかもそうですが、
製造業の設備投資が、米中問題の先行き不透明を理由に身動きがとれず様子見になったのと同様に、
個人投資家も機関投資家も総じて投資マインドが盛り上がってこなかった1年だった気がします。
要するに「マーケットの上昇に乗れなかった投資家の数多し」ということです。
※ソフトバンクもウィーワークへの投資で大赤字を出していましたね。

私も資産運用の世界で30年近くマーケットと向き合ってきましたが、
本当に株式市場の動きを予測するのは難しいと感じますし、
資産運用において「マーケット・タイミング」にフォーカスしすぎる弊害というのも
年々強く感じるようになってきました。

ちなみに今年の動きは、2017年にとても良く似ている気がします。
実は2017年は世界株式インデックスMSCIAC(円ベース)は約20%も上昇しましたが、
日本経済新聞の投資家調査では、実際にプラスのリターンを出した投資家の比率は約60%。
逆を言えば、実に約40%の人はゼロもしくはマイナスに終わっていたのです。

実はこの例は珍しいことではなく「この世界でしょっちゅう起きている現象」なのです。

日々の変動に一喜一憂して無駄な売買をしたり、ちょっとでも安い価格で買いたいと様子を見ているうちに投資をし損なったりということが、主な原因と考えられます。(企業の本源的価値より割安で買うのはバリュー投資という立派な投資手法だが、単にタイミングで安く買いたいという場合、ここには他人を出し抜きたいという気持ちが潜んでいるからなのか、なぜか裏目に出やすい。)

短期変動(リスク)を受け入れ、長期の成長(リターン)を獲りにいく「長期投資のスタンス」をベースに置くことが、やはり個人投資家の投資戦略の王道であることを、2019年の相場も2017年同様に教えてくれたような気がします。

私たちがお客様(特に現役世代の皆さん)にご提案する資産運用で、フォーカスすべきは、目先の価格変動で得した損したなどということではなく、将来キャッシュフローを生み出す良質な投資ポートフォリオをつくること」にあります。

本当に怖いのは目先の価格変動リスクではなく、将来の経済基盤となるキャッシュフロー(収入)が細っていくリスクであるという問題意識を、毎年積みあがっていく有り難いマーケットからの教訓と共に肝に銘じつつ、あと1ヵ月を過ごしていきたいと思います。

急に寒くなってきましたので、皆さんもくれぐれも健康に気をつけて師走に向かってください!
それではまた。

2019年10月16日水曜日

マーケットレビュー(2019年7-9月)

【全体観および私見】

201979月期の「世界の社会・経済・金融市場」を振り返ります。

資産運用の観点から、この四半期で最も大きなニュースは7/31に米国で10年ぶりに利下げが行われたことだと思います。ちなみに9/18にもFRB2度目の利下げを断行しました(各0.25%×2回=0.5%)。

日欧の長期金利がすでにマイナスゾーンに突入するなか、経済状況が比較的良好である米国が利下げに動いたことで、高格付けの債券の金利は消滅しかかっていると言っても過言ではないでしょう。
安全資産の金利がゼロ以下の金融環境は、金融業、資産運用業に大きなインパクトを与え、今後のビジネスモデルの大転換が余儀なくされていることを示唆していると捉えられます。

実体経済面では6月の大阪サミットで行われた米中首脳会談を機に再開された貿易協議が不調に終わり、8月に入ってすぐにトランプ米大統領は「対中制裁第4弾」を発表しました。
これで米国への中国からの輸入品ほぼ全てに高関税が課せられ、平均20%を超える水準に達することになりました。

米中貿易戦争が始まって1年が過ぎますが、それまで米国における中国製品への平均関税率が約3%くらいだったことを考えると、多くのグローバル企業がサプライチェーンの見直しをし始めたのも当然です。

また米中貿易戦争は当初、中国の景気後退につながり、その他の国・地域に波及していきましたが、とうとう米国経済にも(特に製造業を中心に)影を落とし始めており、今後の世界経済の不安材料となっています。

結果として、7-9月の株式市場は金融緩和(株式市場にプラス)と景気減速(株式市場にマイナス)の綱引きで、ほぼ横ばいとなりました。

このように何となく不安になってしまう国際政治やマクロ経済の現状ではありますが、そこだけに目を取られていては投資機会を逃してしまうことになりかねないことに、私たち長期投資家は留意しておかなければなりません。

実際、世界経済の事実(FACT)に目を向けてみると、成長の芽はあちらこちらで静かに着実に育ってきているよと感じます。

昨今の不安定な世界情勢の中、長期投資家は今一度、そのことをしっかり理解しておかなければならないのだと思います。



20197月-9月の注目ニュース】

7/3  NYダウ平均が9ヵ月ぶりに史上最高値を更新。
7/5 景気減速下の利下げ期待(金融相場)で、英独仏の株価指数が年初来高値を更新。
7/17 米主要500社の46月期の純利益は3%減の見通し(2期連続減益)。
7/18 米中貿易摩擦から約1年、世界主要企業は生産拠点を中国外に移す動きを加速させる。
7/19 米マイクロソフトの46月期決算はクラウド好調で純利益49%増(過去最高)。
7/19  M&Aに絡む損失が2018年度は世界で約1550億ドルと前年比で66%増加。
7/19  G7財務相・中銀総裁会議はデジタル通貨リブラに対して最高水準の規制を要求。
7/21 世界全体でATMが減少、キャッシュレス決済が急速に普及。
7/21 仮想通貨の流出被害が止まらない。今年13月世界で約12億ドルの被害。
7/22 参議院選挙の議席確定。与党は改選過半数63を上回る71議席(改憲2/3には届かず)。
7/31 世界でマイナス金利の債券が残高ベースで13兆ドル(1年前比で倍増)。
7/31 FRB10年ぶりに利下げ(0.25%引き下げ年2%~2.25%)を実施。

8/2  就活情報「リクナビ」が学生の同意を得ず「内定辞退予測」を販売していたことが判明。
8/2  トランプ米大統領が「対中制裁第4弾」を発表(7月末の閣僚協議が不調に終わる)。
8/5  週明けのNYダウは767ドル安と今年最大の下げ、世界同時株安。
8/12 ESGROEから持続的に収益をあげる企業を算定すると欧米勢が8割を占める。
8/13 中国の人民武装警察部隊が香港との境界に集結(デモ激化)。
8/16  メルカリ疲れ(ネット疲れ)でブックオフ(リアル店舗)が復調の動き。
8/19 米欧の労働市場でも日本と同様の人手不足の様相。省力化ニーズは拡大。
8/20 米国の設備投資が減速、6月コア資本財の受注は24ヵ月ぶりにゼロ成長。
8/20  中国が測位衛星(位置情報サービスに活用)の数で米国を上回ってきた。
8/24  かんぽ不正問題で、郵政3社の時価総額が201512月のピーク比で半減。
8/26 アフリカで起業熱高まる(一気に技術革新が進むリープフロッグ現象を伴う)。
8/28 5年に一度の年金財政検証が行われ、年金額の所得代替率が確実に低下する将来像が示される。
8/31  米ネット通販業界でアマゾンに挑む個性的な新興企業群が台頭。

9/1  米トランプ政権は1日、中国製品への制裁関税第4弾を発動(関税率は平均20%を超える)。
9/2  環境規制・ESG投資への対応で、航空機・船舶の電動化の動きが世界で進みつつある。
9/10  米中貿易戦争を横目に、米大手運用会社の中国進出が止まらない。
9/10  米トランプ大統領が強硬派のボルトン大統領補佐官を解任。
9/13  欧州中央銀行が3年半ぶりに金融緩和に踏み切る(201812月に量的緩和終了)。
9/13  大手食品・化粧品メーカーが通販サイトを介さず、ネットでの直販を模索し始めている。
9/14  サウジアラビアの油田が無人機による攻撃を受け生産が日量570万バレル減少。
9/16  中国のスマホ決済額が年間3000兆円近くに拡大(日本は2018年度1.1兆円)。
9/16  米国シェアオフィス「ウィーカンパニー」のIPO延期、ユニコーン熱狂に転機。
9/17  企業価値の源泉は有形資産(人、モノ)から無形資産(知識)へ(約8割が無形資産)。
9/18  日立はIOT事業(ルマーダ)の世界展開のため新会社を米国に設立。
9/18  米FRB7月に続き、0.25%の利下げ(→年1.75%~2%)に踏み切る。
9/21  ロボアドバイザー大手のお金のデザインが独立系金融アドバイザー(IFA)を支援。
9/26  日米、貿易協定で合意(農産品や米国牛肉の関税はTPP水準、車の追加関税回避)。
9/27  米議会下院はトランプ大統領のウクライナ疑惑に関し国務長官を召喚(弾劾調査)。


【金融市場動向(2019年7-9月)】
世界の長期金利
6月末
9月末
3ヵ月変化
日本10年国債
-0.17%
-0.22%
-0.05%
米国10年国債
2.00%
1.66%
-0.34%
ドイツ10年国債
-0.33%
-0.57%
-0.24%
英国10年国債
0.82%
0.48%
-0.34%
国内株式
6月末
9月末
3ヵ月変化
日経平均株価
21275.92
21755.84
2.3%
TOPIX
1551.14
1587.80
2.4%
ジャスダック平均
3405.61
3379.39
-0.8%
東証REIT指数
1938.82
2177.18
12.3%
海外先進国株式
6月末
9月末
3ヵ月変化
NYダウ30種
26599.96
26916.83
1.2%
S&P500
2,941.76
2976.74
1.2%
ナスダック
8006.24
7999.34
-0.1%
FTSE100
7,425.63
7408.21
-0.2%
DAX
12,398.80
12428.08
0.2%
香港ハンセン
28542.62
26092.27
-8.6%
海外新興国株式
6月末
9月末
3ヵ月変化
上海総合
2978.88
2905.19
-2.5%
インドSENSEX
39,394.64
38667.33
-1.8%
ブラジルボベスパ
100,967.20
104745.32
3.7%
ロシアRTS
1,380.52
1333.91
-3.4%
商品
6月末
9月末
3ヵ月変化
原油WTI(ドル)
58.47
54.07
-7.5%
NY金(ドル)
1409.7
1465.7
4.0%
CRB指数(ドル)
181.04
173.94
-3.9%
為替
6月末
9月末
3ヵ月変化
米ドル/
107.81
108.10
0.3%
ユーロ/
122.59
117.81
-3.9%
英ポンド/
136.91
132.89
-2.9%
豪ドル/
75.70
72.95
-3.6%
NZドル/
72.40
67.73
-6.5%
カナダドル/
82.32
81.60
-0.9%
スイスフラン/
110.46
108.27
-2.0%
南アランド/
7.66
7.14
-6.7%

2019年9月30日月曜日

サービスの多様性(質とコスト)

日経新聞(2019年9月14日付)「ホテルオークラ新装、強気の一泊7万円」という記事に注目しました。

同記事の概略を下記に抜粋すると…、


ホテルオークラは約4年かけて建て替えた「The Okura Tokyo 」を開業した。
目玉は一泊あたり平均約7万円の最高級ブランド「ヘリテージ」。
旧本館の3倍前後で、国内ホテル勢としては強気な値付けで海外の富裕層を取り込む。
グローバルにみれば、東京のホテル価格が「国際水準」に近づく動きでもある。

米フォーブス誌の2019年版格付けによると、東京の五つ星ホテルは4軒で、ニューヨークの10軒、ロンドンの12軒と比較して少ない。「海外の富裕層の中には安いところに泊まりたくないという人も多い」

(以上)

この記事を読んで、外資系企業に勤務する方々が、よく海外本社から役員が来日する際、彼らが満足する宿泊先を探すのが大変だと言っていたことを思い出しました。

その一方で、エアビーアンドビーなどの民泊市場や格安ホテルの市場も拡大しています。
新興国の中間層の海外旅行の需要は今後も益々大きく成長していくのは確実です。

要するに料金が高いとか安いということばかりに着目するのではなく、サービスの質とコストに関して、国全体として多様なラインナップを持っておくことが大事なことなのだと思います。

本格的な人口減少と少子高齢化時代を迎えて、国内外の幅広い需要(ニーズ)に応えていくことが、日本の生産性向上や観光立国にも繋がっていくでしょうし、現在盛り上がっているラグビーワールドカップや来年の東京オリンピックを今後の経済成長のいい機会にするためにも重要な点ではないでしょうか。

そして私たちは、もっと社会情勢や歴史や文化の多様性について学んでいく必要性があるということも、ラグビーワールドカップ、ジョージア代表の試合において政治的緊張関係のあるロシアの歌をかけてしまった事件(あえて事件と言いたい)で痛感致しました。大会組織委員会の担当者がちょっと取り違えた単純ミスということですが、せっかくの大会を台無しにしてしまいかねない愚かな行為です。

話は飛びますが、先日の東京オリンピックのマラソン日本代表を決めるMGC男子のスタートが2分程遅れたということがありました。その原因は担当者がスタート合図のピストルの充電をし忘れていたとのこと。

大きなプロジェクトを遂行する際に、当然すべてが完璧なんてことはあり得ないのですが、そこだけはミスをしてはダメというところで、大きなミスや不祥事が起きてしまうのが最近の日本社会の傾向のような気がします。

最後に一言、昨今、金融業界でも全く同じようなことが起きていると感じています。

資産運用に関する洞察力やサービスの多様性と奥行きは失われつつあり、本質から遠ざかっていくようなメッセージがマスコミを通じて溢れていると、個人的には感じています。

ホテルオークラが海外富裕層のお客様のニーズに応えて行動を起こしたように、各企業が単純な価格競争に陥らず創意工夫してサービスの質を高めていくことが、これからの日本経済を強くしていく鍵になっていくのだと強く思う今日この頃です。

2019年8月19日月曜日

バランスの大切さ

個人的な感覚ですが、自分的には50歳を過ぎた頃から「バランス」というものを大切にし始めた気がします(ちなみに私、現在51歳)。

若かりし頃は、バランスよりもアンバランスなものに魅力を感じ、自分自身もそんな行動をとっていたような感じがしますが…(笑)。

たしか2年前くらいから、人生100年時代とか言われ始め、自分自身も思ったより人生が長くなる可能性について考えるようになりました。

もしそうであるのなら「働き方とか、お金とか、住居とか、家族とか…」改めて色々なことについて見つめ直したり、再設計したりしなくてはなーなどと色々考えている中で、これからの人生を精神的にも経済的にも豊かに生きるには、「バランス」こそが最も大切なのではないかと思い至った次第です。

人生は短距離走ではなく長距離走なので、瞬発力より持久力が大切だと思います。もちろん瞬発力を発揮しなければならない時もありますが、そこはやはり若者には勝てません。

中年の自分としては、バランスのとれた「食事、睡眠、運動、休養、インプット-アウトプット、人間関係等」が、長期的にこれからの人生を豊かな方向に導いてくれる「推進力」になってくれる気がしてきたのです。

さて、このバランスの大切。資産運用についても同様に最重要だと言えます。

自分自身の価値観や人生設計を中心に、収入と支出、資産と負債、貯蓄と投資、短期と長期、安定と成長、人的資産と金融資産、リスクとリターン、自分でやるか専門家のサポートを得るか…など様々なバランスを考え、どのようなファイナンシャルプランを描くか、そしてどのような考えを中心に据えて、行動すべきか?

このあたりの方針が明確で、自分にとっての最適バランスを保ってなければ、短期的なマーケット変動に簡単に惑わされて、投資を継続することは難しくなってしまうからです。

個人の側面から見て、人生をより豊かなものにするための一助として、資産運用というツールが存在していると捉えるならば、今までより人生が長くなった分、資産運用の時間軸もそれに比例して長くなると言えます。金融庁の2000万円不足問題の報告書に代表されるように、長期投資のニーズは今まさに顕在化してきております。

しかしながら、日本全体の個人金融資産の内訳をみると、明らかに貯蓄-投資バランスが偏っており、未来の日本の状況に対応しているとは言い難いのが正直なところ。

確定拠出年金の全体の資産構成を見ても同様なことが言えますし、またバランス型と言われている商品が、実は現状では全然アンバランスであったりもします。

現在の金融市場で特筆すべきは、低金利(マイナス金利の国債も多い状態)です。

この金融環境下で人生が長くなる世界において、個人にとって真にバランスがとれた資産運用管理とはどのようなものなのでしょうか。

それを常に模索し続け、時に修正をしながら、お客様の資産運用をサポートしていきたいと思いますし、まずは何より自分自身が率先して、自分のライフプランを実現するためのバランスの良い資産運用管理を実践していきたいと思う今日この頃です。

(追記)

例えば金利がゼロなので、できるだけ「リスクはとらないで安定的なリターンが欲しい」と心のどこかで願うなら、それは現実を踏まえると「リスク-リターン感覚のバランスが大変悪い状態」であり、そのアンバランスに付け込んでくる者がいることに気をつけなければなりません。
そう考えるのが、要するにバランスのとれた考え方と言えるでしょう。

2019年7月9日火曜日

マーケットレビュー(2019年4-6月)

【全体観および私見】
201946月期の「世界の社会・経済・金融市場」を振り返ります。

米中貿易戦争が始まって約1年が経過、また英国のEU離脱問題も先送りされており、グローバルに事業を展開するメーカーはサプライチェーン(供給網)を見直すべきか、もう少し様子をみるべきか、なかなか動きがとりづらい状況が続いています(そろそろ動き始めていますが…)。

そんな中、徐々に製造業の事業マインドは悪化、それが今、実体経済に影響を及ぼし始めていると言えるでしょう。非製造業に関しては、各国の内需の強さもあり、概ね堅調と言えますが、これらの一連の動きが市民生活にいつまでも悪影響を及ぼさないということはありえません。

一方で世界経済の悪化を見越し、各国の中央銀行は金融緩和に舵を切りました。その結果、201946月期の株価は堅調。しかし一方で、米国の金融緩和から為替市場では円高ドル安が進み、日本人の海外資産投資の3ヵ月リターンは、円ベースでは概ね横這いでした。

直近四半期の金融市場において注目すべき点は、世界的な景気減速と金利低下の綱引きの中での株価上昇、そして為替市場で起きている円高ですが、それはあくまで表層的な現象面の動きであり、マスコミが日々話題にしやすい情報(ネタ)とも言えます。

弊社は金融市場(マーケット)を、よく海に例えることがありますが、マスコミから発信される情報は、概ね表面的な波の動きを事後的に説明したものが多く、長期投資の役に立つものは殆どありません(むしろ弊害になると言ってもいい)。

本当のお宝は、海の中に存在します。魚貝類や海藻、さらには海底に潜む海洋資源のように。

長期投資で成果を上げるにも、マーケットの表層の波に着目するのではなく、マーケット(海)の中に存在する個別企業(魚)の成長に注目しなくてはなりません。

下記の「20194-6月の注目ニュース」にも表層部分(波の部分)と海底部分が混在していますので、是非そんな視点からご一読頂けたら幸いです。


20194月-6月の注目ニュース】
4/2 三菱UFJ銀行、2020年春の新卒採用数を45%減(約530名)に。
4/3 2050年の世界人口構成、約6人に1人が65歳以上に(現在11人に1人).
4/9 IMF2019年の世界GDP予測を0.2%引き下げ3.3%とする。
4/14 世界の株式時価総額が約7ヵ月ぶりに水準を回復(景気減速下の株高)。
4/17 米主要500社の1-3月期は5%マイナス見通し(11期ぶり減益)。
4/20 OECD、世界の先進17カ国で中間層が減少している実態を報告。
4/21 世界の自動車株の時価総額は、昨年ピーク時から21%減少している。
4/25 中国半導体メーカー、ファーウェイ以外に「ファブレス500社」が台頭。
4/27 平成の「大納会」。日経平均終値は22258円(ピークは平成元年末38915円)。
4/27 平成の30年間、時価総額の増加トップはトヨタ、2位はキーエンス。
5/8 米大統領、中国に追加関税(2000億ドルに25%)を通知。
5/8 米大統領、イランに追加制裁(鉄鋼、アルミ、銅等の取引)。
5/15 米商務省はファーウェイへのハイテク部品の禁輸措置を発動。
5/18 米小売ウォルマート、アマゾンへの対抗策の成果が上がり始めている。
5/21 世界の民間航空機のパイロット不足が深刻化しつつある。
5/23 2019年度 日本のゼネコン8社の受注見通しが前年比1割減。
5/27 米トランプ大統領が令和最初の国賓で来日。
5/30 米大統領がメキシコへの関税引き上げを発表(不法移民対策が不十分)。
5/31 貿易戦争の激化を懸念し、NY株式急落(-354㌦)。
6/3 海外からの訪日客で、東南アジアの比率高まる(GDP15000㌦超)。
6/3 金融庁が「老後2000万円不足する」という報告書を公表。
6/4 生産性競争が深く静かに進行。新技術(AIIOTVR)が一般化する途中。
6/4 世界製造業が減速。5月の世界製造業PMI49.86年半ぶりの低水準)。
6/4 NY株式512ドル高。FRBパウエル議長の発言で利下げ期待強まる。
6/7 人口動態統計、2018年の出生数は91.8万人と3年連続100万人割れ。
6/20 米欧の金利低下を受け、為替市場では1ドル107円台の円高水準。
6/20 ビジネス対話アプリの米スラック、資金調達をしないかたちで直接上場。
6/25 世界主要企業のCEO報酬、米国15億円、欧州6億円、日本1億円。
6/26 日本経済新聞社が算出した均衡為替レートは1ドル107円台。
6/28 米主要企業の株主還元が過去最高(設備投資、MAへの慎重姿勢)。
6/27 米フォードが1.2万人、独BASF0.6万人のリストラ実施。
6/28 G20大阪サミット。米中貿易協議再開(関税第4弾見送り)。


【金融市場動向(20194-6月)】
世界の長期金利
3月末
6月末
3ヵ月変化率
日本10年国債
-0.10%
-0.17%
-0.07%
米国10年国債
2.40%
2.00%
-0.40%
ドイツ10年国債
-0.07%
-0.33%
-0.26%
英国10年国債
0.99%
0.82%
-0.17%
国内株式
3月末
6月末
3ヵ月変化率
日経平均株価
21205.81
21275.92
0.3%
TOPIX
1591.64
1551.14
-2.5%
ジャスダック平均
3444.19
3405.61
-1.1%
東証REIT指数
1907.36
1938.82
1.6%
海外先進国株式
3月末
6月末
3ヵ月変化率
NYダウ工業30種
25928.68
26599.96
2.6%
S&P500
2834.4
2,941.76
3.8%
ナスダック
7729.32
8006.24
3.6%
FTSE100
7279.19
7,425.63
2.0%
DAX
11526.04
12,398.80
7.6%
香港ハンセン
29051.36
28542.62
-1.8%
海外新興国株式
3月末
6月末
3ヵ月変化率
上海総合
3090.76
2978.88
-3.6%
インドSENSEX
38672.91
39,394.64
1.9%
ブラジルボベスパ
95414.55
100,967.20
5.8%
ロシアRTS
1198.11
1,380.52
15.2%
商品
3月末
6月末
3ヵ月変化率
原油WTI先物(ドル)
60.14
58.47
-2.8%
NY金先物(ドル)
1293.0
1409.7
9.0%
CRB指数(ドル)
183.75
181.04
-1.5%
為替
3月末
6月末
3ヵ月変化率
米ドル/
110.81
107.81
-2.7%
ユーロ/
124.31
122.59
-1.4%
英ポンド/
144.31
136.91
-5.1%
豪ドル/
78.70
75.70
-3.8%
NZドル/
75.48
72.40
-4.1%
カナダドル/
82.93
82.32
-0.7%
スイスフラン/
111.31
110.46
-0.8%
南アランド/
7.68
7.66
-0.3%