2019年2月21日木曜日

凝縮と拡張

過去の自分の仕事人生を振り返ってみると、そこには凝縮期と拡張期があるように思えます。

凝縮期は、自分自身が持つ知識や考察を、じっくりと深く掘り下げていくこと(深化)に注力し、その知識や考察をベースに質が高いアウトプットを実現していく。そんな時期な気がします。自分的には、凝縮期は効率がいいライフスタイルを過ごしていて、仕事的にもうまくいっていた快適な時期だったと言えます。

一方で拡張期は、凝縮期に磨いてきたスキルや練り上げたヴィジョンとかビジネスモデルとかが、これからの社会経済の変化に対応できなくなるリスクや不安を感じ、自分自身の能力やモノの見方を拡張しなければ、未来は自分にとって暗いものになると予感し、そこでは私も変化という行動をとってきたように思います。

この時期は、新たな学習をしたり、新しい人に積極的に会ったりして情報をインプットすることを重視したライフスタイルを送ってきたように思います。仕事的には短期業績は上がりづらい時期なのですが、次なる成長(進化)のための大事な時期だった言えます。


【私自身の過去の流れ】

22歳~25歳 拡張期(インプット) 社会人になって、新たな学びを得る。

26歳~34歳 凝縮期(アウトプット)今まで学んだことを活かして業績拡大。

35歳~37歳 拡張期(インプット) 転職し異なる環境で、新たな学びを得る。

38歳~50歳 凝縮期(アウトプット)今まで学んだことを活かし独立、業績拡大。


現在51歳、そろそろ拡張期が近づいているかな?(笑)。

今、そんなことを考えつつ、すべての事象は凝縮と拡張の連続運動なのでないかと、このブログを書きながら思い始めてきました。

心臓の収縮活動がなければ人間は生きていくこともできませんし…。

経済活動や株価についても価格で見ると上がったり下がったりという上下運動に見えますが、時価総額という量的な側面から見るならば、やはり凝縮と拡張の連続運動こそが本質なのだと理解できます。

人間が生きていくこと、成長していくこと、GDPや株価が成長していくこと等々、この根底にあるのが「凝縮と拡張の連続運動」なのではないでしょうか。

そう考えることができるなら、変化を不安の種ではなく成長の機会として捉えることができるのでは…。

2019年2月6日水曜日

価値が高いファンドを育てる意識

2019111日付けの日経新聞で欧州の大手PEファンド(未公開株ファンド)ペルミラ・アドバイザーズのCEOのインタビューが掲載されており、短いながらも興味深い記事だと思いました。

同社は日本の個人投資家には馴染みのない運用会社ですが、世界の機関投資家を中心に高い評価を得ています。


さてペルミラCEOのインタビューの中で、私が気になった点を中心に列挙すると…、

    現在良好な市場環境は終わりに近づいている。

    そのきっかけになり得るのが米中貿易戦争と世界の中央銀行の金融緩和縮小。

    市場は景気後退後の公正価格を織り込み切れていない。

    しかし我々は長期投資家であり、短期的な市場環境は投資の決定に影響を与えない。

    今がバブルかどうかなんて誰にも分らないはず。

    日本市場については過去20年の欧州と同様に、国境を越えた企業再編が活発化する。

    欧州のPEファンドが米国より高いリターンを実現してきたのは、米国に比べて欧州企業の効率性が低く、改善すべき点が多く残っていたのが大きい。

    今後、日本の大企業は非中核資産を切り出す動きが続くので、日本のPE市場は成長する。


以上の点は、未公開株式を投資対象とするPEファンドからの視点ですが、上場株式の投資、特にアクティブ型ファンドを保有する投資家にとって、大変参考になる物の見方かと思います。

マーケット環境が悪くなるとか、企業経営が非効率であるとか、一般的に投資家にとってネガティブな情報が流れる時、一流の投資家にとっては絶好の投資機会を狙える状況にある可能性が高いということを、このインタビュー記事は示唆しているように私は感じました。

マーケット環境が悪く、資産価格が総じて下落する時には、一流の投資家もそうでない投資家も同じように影響を受けます(例えばアップル株が大きく下落した時、同社の第2位大株主のバークシャー・ハザウェイの大投資家ウォーレンバフェットだけが影響を受けないということは当然ないわけです)。

しかしながら、このように市場が下落した時、ポートフォリオの中身を再確認した上で、今までのかたちをしっかり堅持する、もしくはこれを新たな機会と捉えてポートフォリオの入れ替えを行う等、未来志向の投資行動をとれるかどうか…。
それが一流とそれ以外に投資家との大きな違いなのだと思います。

価格変動ではなく投資先の本質的価値をしっかり認識しておかなければ、そんなことはできません。個人投資家の長期投資の視点で言えば、下落相場に価格があまり下がらないファンドよりも、下落時に次なる投資機会をしっかり狙ってくれるファンドの方が価値が高いように私は思います。

しかしながら日本においては様々な要因から、このような価値が高いファンドはかなり少ないのが実情です(希少価値と言っても過言ではない)。

率直に言うと、この現状を招いた責任は運用会社だけでなく、投資家サイドにもあります。

日本においては市場環境が良いと資金が集まり、市場環境が悪いと資金が流出する状況が、長年且つ極端なかたちで続いてきました。

運用者は下落時に次なる投資機会を積極的に狙わなければならない一番大事な時に、実際はファンド解約による資金手当てのため保有銘柄を売却しなければならないジレンマにいつも陥っていたのです(この状況は今も続いている)。

価値が高いファンドを育てるのは、実は価値が高い(=高い見識を有する)投資家であることを、私たちはもっと理解しておく必要があるのではないでしょうか。

ちなみにPEファンドは、通常10年間は解約できないので運用者はじっくり腰を据えて運用ができるのです。