2019年4月30日火曜日

平成最後の日に

平成の30年間で日経平均は約26%下落しましたが(38915円→22258円)、東証一部の時価総額は平成元年(バブル期)のピーク606兆円を超え、現在約617兆円になっています。
平成時代にソフトバンクや楽天といったIT企業が新たに登場して、全体の時価総額を押し上げた結果。

株式市場の実体は、平均株価より時価総額を見た方が正確に捉えることができると私は考えますが、その観点から注目したのが日経新聞(2019427日付)の「平成の30年間で時価総額を増やした企業10社と、逆に減らした企業10社」です。

(記事からの抜粋)

【時価総額を増やした10社】
    トヨタ自動車 +15.2兆円
    キーエンス  +8.3兆円
    日本電産   +4.6兆円
    ソニー    +4.6兆円
    任天堂    +4.3兆円
    武田薬品工業 +4.1兆円
    信越化学工業 +3.9兆円
    ダイキン工業 +3.9兆円
    ホンダ    +3.6兆円
    村田製作所  +3.6兆円

【時価総額を減らした10社】
    NTT     -20.3兆円
    東京電力HD  -8.6兆円
    野村HD    -5.9兆円
    日本製鉄   -4.2兆円
    新生銀行   -4.1兆円
    関西電力   -3.8兆円
    東京ガス   -2.5兆円
    パナソニック -2.5兆円
    中部電力   -2.5兆円
    大和証券G   -2.3兆円

こうして平成の30年間の時価総額の増減を見てみると、グローバルに事業を展開して独自のポジションを築いている日本企業が企業価値を高め、国内事業をメインとしてきた大企業が衰退したという傾向が顕著に表れています。

このことは、やはり事業にしろ、資産運用にしろ、一つの国地域に集中することのリスクの大きさを物語っているように感じます。

さて、こうしたグローバル化の傾向は今後も継続されていくでしょうが、個人的には、おそらくもう一つの異なる動きも出てくるのではないかと考えています。

それはグローバルな視点で事業を拡大するというのとは対極に、これは日本に限らず、世界の各地域で、規模の拡大を追わず「高付加価値と高資本効率を実現していく」企業群が増えてくるのでないかという、期待も込めた予測です。

全てをGAFAのようなプラットフォーマーに持っていかれるような状況は、決して社会的にも良いことだとは思えませんので、バリューマネジメントも真に「高付加価値+高資本効率を実現していく企業」になれるよう、改めて頑張っていきたいと思います。

そのためには、一人一人のお客様としっかり向き合い、AIやロボットとは異なる深い洞察力を持って資産運用管理サービスを提供していくことが、極めて重要であると改めて肝に銘じる所存です。

実際は新しい時代になったからといって、何かが大きく変わることはありません。しかしながら私たち日本人にとっては、新しい時代の風を感じつつ、それが何かしらの前向きなアクションを呼び覚ますきっかけになるのではないかと期待しています。

いよいよ明日から令和時代です。
皆様、引き続きよろしくお願い申し上げます!

2019年4月13日土曜日

マーケットレビュー(2019年1-3月)

【全体感および私見】
昨年からの米中貿易戦争やFRBの利上げの影響から、世界中で景気減速が表面化してきた2019年1-3月期。しかし予想に反し、株式市場を中心とした世界金融市場は堅調な動きを見せました。

世界景気の減速に加え、英国のEU離脱問題や米中貿易戦争等の政治リスクも全く収まる気配がない中で、欧米の中央銀行が一転して「金融引き締め姿勢を転換したこと(むしろ先行き緩和姿勢)」や「中国政府の大規模財政出動」等が、昨年末にマーケットの下落を見込んで、先物取引や信用取引で売りポジションをとっていた投資家の買戻しを誘引したことによる上昇相場だったと言えるでしょう。

このような景況感や企業業績の裏付けがない株式市場の上昇は「ベアマーケットラリー(弱気相場の途中で発⽣する⼀時的な上昇相場)」と呼ばれ、それは高い確率で期限付きの上昇に終わり、先高感に乏しく投資マインドも決して盛り上がらない局面とされています。

しかし一方で、このような相場格言もあります。

「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」
(ジョン・テンプルトン:アメリカの著名投資家)。

この相場格言に現状を照らし合わせるならば、現状投資家の間に楽観や幸福感はあまり感じられないので、「懐疑の中にいる」のかなとも思います。

まあいずれにせよ、マーケットの先行きのサイクルを見極めることは容易なことではありません。大切なことは、自分のリスク許容度に応じた長期投資資金の範囲内で、様々な思惑が渦巻く中で生まれてくる相場変動をしっかり受け入れつつ、長期的に資産の成長をじっくり待つことです。

何だかいつも同じことを言っている気がしますが…(笑)、本当に大切なことは、ほんとうにいつも同じことであり、それは私たちが、お客様に最初にお話をしたことなのだと思っております。

このことについての重要度を深く認識する時に、いつも思い出す言葉があります。
「我々のすべての探求は、最終的に初めにいた場所に戻り、その場所をはじめて認識することである。」
TS・エリオット:1920世紀イギリスの詩人・劇作家)

これから「令和の時代」になり、「テクノロジーがさらなる進化を遂げる時代」が到来したとしても、人間が生きていくことにおける本質を表現した、このエリオットの言葉が色褪せることはないと私は思います。


【注目ニュース(2019年1-3月期)】

1/3 円レートが急騰 1ドル104円台に。1分間で4円瞬間上昇。
1/4 アップルショック、日経平均2万円割れ、NYダウ660ドル安。
1/4 米FRBのパウエル議長が「利上げの一時停止」もあり得ると発言。
1/8 米中貿易急減速(米→中、大豆や車で4割減、中→米、産業ロボ5割減)
1/15 英国EU離脱案が下院で否決される。
1/17 欧州の景気減速が鮮明に(ドイツとイタリアが昨年7-9月期からマイナス成長に)
1/17 日本電産ショック。業績大幅下方修正、永守会長「尋常でない変化」。
1/21 中国、28年ぶり低成長。2018GDPは+6.6%、貿易戦争の影響。
1/30 米FRBが利上げ一時停止。量的緩和の縮小についても「修正の用意」
2/19 米国の主要500社の20191-3月期業績は11四半期ぶりにマイナス予想。
2/21 欧州中央銀行(ECB)が、金融緩和縮小を修正する方向に。
2/21 米FRBが量的緩和縮小を年内に終了する見通しを公表。
2/25 トランプ米大統領は3/2に予定していた対中国の関税引き上げを延期。
2/26 米著名投資家ウォーレンバフェット氏がM&Aに慎重な姿勢を示す。
2/27 日本の個人投資家の投資信託の購入が10年ぶりの低水準に
3/5  中国は全人代で2019年に2兆元(約33兆円)の減税をすると発表。
3/7  新興国の物価上昇鈍る。マレーシアでは約9年ぶりに物価が下落に転じる。
3/14 英議会下院はEU離脱延期を可決。
3/20 米FRB2019年中の利上げを見送り、9月末で資産縮小を停止。
3/21 2018年度の世界主要15000社の株主還元は前年比2割増(23786億ドル)。
3/24 米司法長官、ロシア疑惑でトランプ陣営の共謀を認めず。
3/26 主要国で長短金利逆転が起こり、銀行株が急落。世界でリスクオフに動き。
3/29 リスクオフの動きが新興国通貨に飛び火。トルコ、アルゼンチンの通貨急落。
3/29 欧州でマイナス金利が加速。

【金融市場動向(20191-3月)】

2018年末
3月末
年間変化率
日本10年国債
-0.01%
-0.10%
-0.09%
米国10年国債
2.69%
2.40%
-0.29%
ドイツ10年国債
0.24%
-0.07%
-0.31%
英国10年国債
1.26%
0.99%
-0.27%
国内株式
2018年末
3月末
年間変化率
日経平均株価
20014.77
21205.81
6.0%
TOPIX
1494.09
1591.64
6.5%
ジャスダック平均
3210.13
3444.19
7.3%
東証REIT指数
1774.06
1907.36
7.5%
海外先進国株式
2018年末
3月末
年間変化率
NYダウ工業30種
23327.46
25928.68
11.2%
S&P500
2506.85
2834.4
13.1%
ナスダック
6635.28
7729.32
16.5%
FTSE100
6728.13
7279.19
8.2%
DAX
10558.96
11526.04
9.2%
香港ハンセン
25845.7
29051.36
12.4%
海外新興国株式
2018年末
3月末
年間変化率
上海総合
2493.90
3090.76
23.9%
インドSENSEX
36068.33
38672.91
7.2%
ブラジルボベスパ
87887.26
95414.55
8.6%
ロシアRTS
1066.13
1198.11
12.4%
商品
2018年末
3月末
年間変化率
原油WTI先物(ドル)
45.41
60.14
32.4%
NY金先物(ドル)
1278.3
1293.0
1.1%
CRB指数(ドル)
169.8
183.75
8.2%
為替
2018年末
3月末
年間変化率
米ドル/
109.60
110.81
1.1%
ユーロ/
125.62
124.31
-1.0%
英ポンド/
139.76
144.31
3.3%
豪ドル/
77.22
78.70
1.9%
NZドル/
73.55
75.48
2.6%
カナダドル/
80.3
82.93
3.3%
スイスフラン/
111.54
111.31
-0.2%
南アランド/
7.61
7.68
0.9%